Lo7.この家の子になっていいですか?
まぁ色々誤解はありましたけど、なんとか私が【獣人王国の姫で他の王位継承者から刺客を送られて一人で森に逃げてきた】という誤解を言葉を尽くして解きました。
どうしてこんな設定になったんですかね? わかりません。
誤解……解けてますよね?
まだ若干期待されてるような視線をユーくんから感じるんですが。
「じゃあ結局チーちゃんってどこから来たの? 帰るところとかは……」
「ええと、どう説明しましょうか……」
どう説明するか、それが問題です。異世界転生小説はいくらか読んだことありますが、わざわざ異世界から来たとか言う主人公はあまりいない印象です。
大体、そういうのは隠していた方が上手く行くことが多いので。
しかし、私は即興で上手いストーリーを思いつけませんし、それで命の恩人を騙すのもよくない気がします。
ユーくんの言ってる【獣人王家の姫】説に乗っかるのも、本当の獣人の姫(幼女)がいたら面倒くさいことになりそうです。(本物の獣人ロリもふもふしたい)
それならもう、本当のこと言っちゃった方がいいのかもと思いますが……
例えばよく分からない謎の幼女が異世界から来たとか言っても、すんなり信じてくれるんでしょうか?
頭おかしいとか思われたりしないでしょうか?
うーん……私が突然そんなことを言われたら……そうですね……
信じますね!
めちゃくちゃ信じます!!
ロリがそう言ったら信じざるを得ないです!!!
じゃあ……言っちゃいますか!
うん、特に悩む必要無かったじゃないですか。
洗いざらい言ってしまいましょう。
命の恩人ですし、隠し事は出来ません!
「……実は私、こことは違う世界から来たんです」
「えっ……こことは違う世界?」
「まぁ、いきなり言われても信じてもらえないかもしれませんが……」
「信じるよ!!!」
即答でした。最初から全然心配無用でした。私の葛藤は何だったんでしょうか?
むしろワクワクが止まらねぇって顔で目をキラキラさせています。だんだんこの子のキャラが分かってきちゃいましたね。
すると、美人さん(たしかユナさんという名前でしたね)がぽつりと意味深に呟きます。
「……【異界よりきたる勇者、光の剣を持ちて、あまねく闇を打ち払わん】……か」
「ッお母ちゃん! それは!?」
「ええ……私の村に古より伝わる【伝承】よ……」
「いにしえの……サーガ……!?」
えええ!? そんな伝承があるんですか!? もしかして、私がその勇者だと!!?
いえ、確かにアワシマ様から勇者みたいに言われましたけど、光の剣なんて持ってないし、なんかぞんざいな扱いでしたし、そんな言い伝えみたいな立派なもんじゃないですよ!?!?
「……っていう設定を今考えたわ~」
「嘘なの!?」
てへぺろ☆と舌を出してウインクするユナさん。嘘なんか~い!!
この人、確かにしょうもない嘘をつく人ですね。ちょっと愉快な人かもしれません。
「でも違う世界から来たってすごいよね! まるで伝説の勇者ヤマトみたい!!」
「ほえ? 勇者ヤマト??」
ヤマト……ですか。なんかいきなり日本人っぽい名前が出てきました。私の他にもこの世界に来た人がいたみたいですね。
まぁ、私一人だけが異世界転生したと考えるのはおこがましいですからね。当然といえば当然です。
「勇者ヤマトは世界中を大冒険して、ついに魔王を倒したんだよ! なんかすごく強い剣士でさ!! ボクも勇者みたいになりたいって思ってるの!!!」
「おおー、なんだかすごいんですね」
説明がざっくりでした。よく分からないけど、ユーくんの憧れのヒーローみたいです。
しかしヤマトというと古事記に出てきそうな人の名前ですね。私はオタクなので古事記はもちろん読んでますが……さて、この世界の勇者ヤマトと何か関係あるのでしょうか?
まぁ、それはおいおい確かめるとして……
「……ん? 勇者ヤマトさんに魔王が倒されてるなら、この世界に魔王はいないってことですか?」
「え? 魔王はとっくに復活してるよ。勇者ヤマトのいたのってめちゃくちゃ昔だし」
「……ですよねー」
どうやら、魔王は復活するもののようです。某国民的RPGでも「人の心に闇があるかぎり復活する」とか死に間際に言ってましたし。
まぁどろどろ幼女様もここに送ってくる前に魔王はいるって言ってましたしね。
「早くボクも勇者ヤマトみたいに、魔王討伐の旅に出てみたいなぁ」
「なるほど。先ほど剣を振るってたのもその修行ですか」
「うん! 剣からビーム出せるようになりたくて練習してたんだ!!!」
この世界では剣からビームが出せるんですか!?
アバ○ストラッシュと思ったら、エク○カリバァー! な感じなんですか!?
「それでチーちゃんはこれからどうするのかしら? やっぱり異世界から来たってことは勇者みたいに魔王を倒しに行くのー?」
「う、うーむ……」
ユナさんが核心をついた質問をしてきましたが、私はどう答えようか悩む。異世界から来たっていっても、しょせん私はただの一般人です。(今は幼女ですが)
アワシマ様に転生させてもらったことには感謝していますが、私がやりたいことは現世でも異世界でも、幼女の叡智絵を描くことに代わりないです。
元々人に見られたら困る趣味を生業としている身なので、名誉欲なんてものはありません。魔王倒して俺TUEEEすることに興味が無いのです。
まぁ、ハーレム(幼女オンリー)には多少憧れますが……基本的に私にメリットが無いです。
放っておいたら誰かが魔王をなんとかしてくれないですかね?
となると、私の今後の身の振り方は……そうですね……
「命の恩人である貴方たちに更にご迷惑をかけてしまうのは申し訳ないですけど……この家に置いてくれませんか?」
異世界から来たばかりの私は、この世界では住所不定無職でお金も無く、異世界転生者にありがちなチートスキルも何もない脆弱な存在です。
何か拠りどころが無いとガチで死にます。というかついさっき死にかけたばかりです。ここは、この人達を頼るしかありません。
「貴方たちしか頼れる人はいないんです。お願いします! 出来ることなら何でもしますので!!!」
私は頭を下げました。何なら土下座してもいいです。貴方たちに見捨てられたら、私ガチで死んじゃいます。
たとえ「ん?今何でもするって言ったよね?」とか返ってきて……その、えっちなことをされても、まぁユナさんとユーくんならいいかなぁ……と。まだ経験は無いので最初は優しくお願いします。
「大丈夫だよ、チーちゃんのことは護るって言ったでしょ」
ユーくんはそう力強く言いました。曇りの一つもない、とても綺麗な目でした。
ごめんなさい。今真剣にお願いしてる場面なのに、ちょっとエロ同人に使えそうな展開考えてました。いけませんね、このエロ漫画脳は……!
「暗殺者が何人来ても、ボクの必殺剣でバッサリだからね!」
だから私は何に命を狙われてるんですか!?
「お母ちゃんもいいでしょ?」
「んー、いいわよー。家族が増えちゃったわねー」
え、家族って……ユナさん私のママになってくれるんですか?(言ってない)
現世の私より若く見えるのに、ちょっと背徳的ですね?(歓喜)
いや、なんか騙してるみたいで申し訳ないです。幼女詐欺でごめんなさい。
……実年齢も明かした方がいいのでしょうか? でもアラサーってあんまり言いたくない……チーちゃんは年齢不詳の存在でお願いします。
こうして私はユーくんとユナさんの家に居候としてお世話になることになりました。
え、魔王を倒す旅?
そうですね……10年くらい経ったら検討いたします。
検討に検討を重ねた上で検討致します。




