Lo59.ツチノコとは一体
さて混沌魔物も倒しましたし、宝箱も手に入れましたし、成果は上々。とても良いダンジョン探索でしたね。
「ではそろそろ帰りましょうか」
「うん!」
「ちょっと待たんか。なんか忘れとらんか?」
帰ろうとしたらサクちゃんに止められました。
「何かありましたっけ……」
「忘れたんか? 儂らの当初の目的は『ツチノコの捜索』じゃったはずじゃ」
「あー」
「そんなことありましたね……」
「な、なんじゃ、その反応!? 寂しいじゃろうが!」
そういえば、サクちゃんはツチノコ捜索の為に仲間に入ってたんでした。ナメクジやミミズやウカちゃんのこととか色々ありすぎて忘れてました。
「しかしまぁ、混沌魔物との戦いでここら一帯めっちゃ荒れてますけど、ツチノコなんて出てきますかね……」
「いたとしても死んでるかも」
「むむむ、わからんじゃろうが! 探してみんと!」
どうやらサクちゃんはツチノコを探したいようです。彼女の謎のツチノコ熱はなにゆえ……
とはいえ、サクちゃんがいて私達も助かりましたし。幼女の頼みなら断れませんね。
「そうですね。サクちゃんも頑張ってくれましたし、私達も頑張って探しましょう!」
「まぁ、借りを作りっぱなしってのもね」
「お主ら……うぅ、お主らみたいな立派な後継者を得られて儂は幸せじゃよ……」
「えっと、何の後継者?」
そんなわけで、ツチノコ探しを始めました。
とはいえ、周りは荒れまくってるわけで……
「ここらへんにいますかねぇ?」
「まぁ、もっと奥の方に行けばおるじゃろ」
「ホントにいるのかなぁ?」
「見たって噂があったんじゃもん」
「でも捕まえてはいないんですよね……」
「きっとめちゃくちゃ素早いんじゃろう」
情報があやふやですね……とりあえず、荒れまくったところは通り過ぎて奥の方に進みますか。大地割れてますからね、サクちゃんの一撃で。
早速、天使の輪っかを使ってユーくんが私を抱えて大地の割れ目を飛び越えます。輪っかは1つしかないですからね。とりあえず使用者は飛行スピードが速くて荷物を持てるパワーのあるユーくんで、私は運ばれるという運用の形になりそうです。
まぁ、幼女に抱えられるのもご褒美ですからね。スピードがちょっと速くて怖いのがアレですが、意識はちゃんと遠のいているので大丈夫です。(大丈夫か?)
サクちゃんも普通に自力で飛んでますね。便利ですね舞空術。いつか輪っか無しで飛べるようになるんでしょうか?
ちなみにさっき飛ぶコツを聞いたら、「どう飛ぶかより、飛べるという意識が大事じゃ!」みたいなことを言ってきてテクニック面のアドバイスは無かったです。全く分かりません。
そのまま飛んで行ったら、山を1つ越えた先に大きな窪地がありました。
「空から見たら初めて分かったんですけど、もしかしてここカルデラですか?」
「カルデラ?」
「カルデラというのは火山活動で山の中に窪地が出来た地形のことです。山のなかであそこだけ広い範囲で円形に凹んでるでしょう?」
「へー、そうなんだ」
「なんかそういう知識は豊富じゃのう、ちぃ子」
「えへへ」
これはカルデラであって、決してカルデア(某ソシャゲの舞台)ではありませんので間違えてはいけません。
それはともかく、やはり窪んでるところは気になるわけで。
「せっかくですしあそこの中探してみます?」
「うむ、いかにもなんかありそうじゃな」
「うん。さんせー!」
というわけでカルデラの内部を捜索することにしました。
火山活動によって出来る地形とはいえ随分昔の地形変動でしょう。火山岩がゴロゴロ転がっているわけでもなく、地表は完全に森になっています。いや、ダンジョンだから火山活動関係なしにそういう形に作られただけかもしれませんが。
「ここからは手分けして探しましょうか。サクちゃんは北を、私とユーくんは南を探しましょう」
「もしツチノコが見つかったらどうするの?」
「めちゃくちゃ光って知らせます」
「めちゃくちゃ光るんだ……」
「手分けして探すと言っても、お主らは二人一組なんじゃな」
「当然です。何故なら私1人だと死ぬからです!」
「それにボクは光らないし。光るのはチーちゃんだけだよ」
「なるほど、合理的じゃな」
えへへ、生きてる照明弾のチーちゃんです。光ることには自信あります!
「サクちゃんも何かあったら光ってくださいね!」
「何かあったら光るってことをナチュラルに要求されとる儂。まぁ出来るんじゃが」
そういうわけで、ツチノコ捜索がスタートしました。
ここらへんはどうやら混沌魔物に荒らされてないみたいで、普通に魔物が出てきますがユーくんが倒してくれます。頼りになるなぁ。
そんなユーくんも、ちょっと不思議なことを言いました。
「なんかこう、若干魔物が強い気がする」
「えっ、そうなんですか? ユーくん、普通に倒してるから分かりませんでした」
「まぁ、よく分かんないんだけどね。もしかしたら、ここらへんちょっと特別なエリアなのかもって思っただけ」
「ほほう、そういうフィールドですか」
ゲームでもありますよね。なんかちょっと強い敵が設定されてるエリア。
もしかしたら、何か特別なものを期待してもいいのかもしれませんね。
「とはいえ、もう1時間は収穫無しですが」
「うーん、なんかこう……変化が欲しいよね」
「ふむ、変化ですか……」
確かに無策で探し回るのも大変ですね。何か策を講じなければ。
「そうですね。ユーくんは森で獲物を探すときどうしてます?」
「んー、なんとなくここらへんかなーって探したらいるよ?」
「なるほど、獲物がいそうな場所を知っているということですか」
「あとはまぁ、地道に痕跡探したりする。草がかき分けられたところとか、匂いとか、結構残ってるから分かるよ」
「ほほう……ではツチノコの探し方は分かりますか?」
「わかんない」
「ふむ、ふむふむ……むぅ」
なるほど、ユーくんも分かんないんですか……
ふむ、ではこれならどうでしょう?
「どうしたのチーちゃん。いきなり桃なんか取り出して」
「ふふふ、ユーくん。これは"餌"ですよ」
「えさ?」
「このまま探してもらちがあきません。ならばこの美味しそうな桃で、むこうから出てきてもらうのはどうでしょう?」
「……ツチノコって桃食べるの?」
「わかりません。私たちはツチノコのことを何もわかりません」
「だよねぇ」
とはいえ何もわからないので、とりあえず桃を頭の上に乗せて歩いてみました。
何故か魔物の出現数が劇的に減りました。
「あるぇ? 桃って美味しそうだから魔物とかもよってくると思ったんですけどねぇ」
「むしろ避けてくよね」
「もしかして……桃って魔物が苦手なオーラ出してるんですか?」
「あー、神様の食べ物だもんね。桃って」
いや、この桃は神様の食べ物でもなんでもなくて岡山県産ですが? この世界ではそういう扱いなんですね?
「むぅ、一旦戻ってサクちゃんと合流しますか」
「チーちゃん頭に桃乗せるの無駄に上手いよね」
「このケモ耳でやんわりはさむのがコツです。強い力じゃいけませんよ? 桃を傷つけてしまいますからね」
「謎の才能が開花してる」
気分はピーチ姫ですね。はて、ピーチ姫って頭に桃乗せたことありましたっけ?
さて、何の成果もないままあらかじめ決めておいた合流地点に戻ります。なんか意味ありげにでーんと巨石があるカルデラの中心エリアです。
ちょうどサクちゃんも戻ったところでした。
「サクちゃーん!」
「おー、ちぃ子とゆーじろーはどうじゃったー?」
「駄目だったー!」
「こっちもじゃー。雑魚敵は出てくるんじゃがなぁ」
むむぅ、サクちゃんも駄目でしたか。ひとまず、疲れたので少し休憩しますかね……
「ところでちぃ子。その頭の上に乗せとるのなんなんじゃ?」
「えへへ、これは見ての通りです!」
「いや、見て分からんから言っとるんじゃが。まぁええか。きっと何かの遊びじゃな」
むぅ、遊びだと思われてしまいました。この桃でツチノコを誘き寄せる完璧な作戦なのに。
まぁ、いつまでも頭の上に乗せとくのもアレなんで、そろそろ下ろしましょうかね?
むにゅ。
私が頭の上に乗せてる桃を掴むと、なんかこう、変な感触がしました。ちょっと柔らかいような、ひんやりしてるような、ぬたっとしたような、そんな感触。
……はて、桃ってこんな感じでしたっけ?
「チーちゃん、頭の上のそれ……何?」
「何って……桃ですよ?」
「それ、桃……なんかのぅ?」
「桃……ですよ?」
はて、桃かどうか不安になってきました。とりあえず、下ろして確かめなければ。
ぐいっと引っ張ると、何故かケモ耳も一緒に引っ張られました。
「え、ちょっと待って。痛い、痛いです! あれ? 今私、桃を掴んでるんですよね?? いま、私の桃が、引っ張られてててててて」
「チーちゃん! それ桃じゃないよ!?」
「なんかおる、なんかおるぞそれ!?」
「噛んでる! 噛んでるよ!?」
「えっ、何ですか? こわいこわいこわい」
なんか私の頭の上に得体の知れない何かがいるようです!
いたい、ケモ耳いたい!
私がパッと手を放すと、引っ張られてたケモ耳も何かがパッと離れて楽になりました。同時に、ドサッと何かが頭の上から落ちてきました。
落ちてきたのは、ピンク色の……ピンク色の……なにこれ? ナメクジ??
「それツチノコじゃ!!」
「え、ツチノコってピンクなんですか!?」
「知らん! けどツチノコっぽい形しとる!!」
「そうかも! ……そうですかね??」
いや、確かになんか見た目ツチノコのように見えないこともないですけど。
うん、なにかアンニュイな表情を浮かべています。ナメクジではないですけど……なんだこの生物。
頭の上に乗せてた私の桃も無くなってるんですけど、もしかしてこの謎生物に食べられたんですかね?
「あっ、ツチノコ(?)が逃げる!」
「み、見た目によらずめちゃくちゃ速いです!?」
「うむ! ツチノコ(確信)を捕まえるぞ!」
「アッハイ、ツチノコですね。知らないですけど」
そうして、逃げたツチノコ(?)はなんとか捕まえました。
「なんとか捕まえたね……」
「なんかこのツチノコ(?)、世の全てに絶望したような表情してますけど」
「捕まえた途端、抵抗を全くしなくなったのぅ」
アンニュイな表情のツチノコらしい生物。なんですかねこれ。ツチノコって言っていいんでしょうか?
いや、形自体はツチノコっぽいんですけど、なんか柔らかくてぷにっとしてるし、なによりピンク色なんですよねぇ……
「これ、スライムの仲間じゃない?」
「ツチノコじゃろう」
「いや全然わかりませんね……」
こうなれば、本人に聞いてみましょう。私はツチノコ(?)さんに聞いてみます。
「あの、あなたはツチノコですか?」
「聞くんだ……」
すると、ツチノコは小さくこくりと頷いたような気が……しないこともなかったです。
「これは……間違いなくツチノコですね?」
「うむ、本人もそう言っとるならツチノコなんじゃろう」
「あ、それでいいんだ」
なんかよく分からないんですけど、ピンクのツチノコなんでしょう。
「ツチノコよ……儂と一緒に来るか?」
「それも聞いちゃうんだ……」
するとツチノコ(?)はこくりとうなづ……いたようなうなづいてないような。
サクちゃんはそれを見て満足げに言いました。
「うむ、ならば儂らは仲間じゃな!」
「うん……うん?」
「ま、まぁいいでしょう! なんかよく分かんないですけど!」
というわけで、ピンクのツチノコを無事ゲットして、私達はダンジョンから帰ることにしました。
「……こんなんでいいのかなぁ?」
「しっ! そういうことにしておかないとまたあてのないツチノコ探しが始まりますよ!」
「たしかに……こんなんでいいね!」
「良かったです!」
「おぬしらー、聞こえとるぞー」
何故かツチノコちゃんもジト目でこっちを見てた気がしました。めでたしめでたし
当初の予定では金色のツチノコが登場するつもりでしたが、チーちゃんがアホな行動を取ったせいで「この流れなら桃と同じ色にした方がいいか?」と思いピンクのツチノコにしました。
あれ? このツチノコ、下北沢で見たことありますね(すっとぼけ)




