LO55.ウカちゃんはマジで話をしたかっただけのようです。たぶんヒマなんでしょう
私はうかのみたまのかみ様(漢字で書けない)に案内されて来たところは、昔ながらの古民家って感じの家でした。良いですねぇ、古き良き日本っぽくて。
「麦茶しか無かったけどええかな?」
「わぁ、麦茶をアイスティーって言うの私のお父さんも使ってた鉄板ギャグです!」
「もうこのギャグ使うのやめるわ」
「なんでですか!?」
私は麦茶をいただきます。くぅー、キンキンに冷えてやがる。喉乾いてたのでちょうど良かったです。
それにしても、なんかこころなしか気分が良くなってきました。ダンジョンとは空気が違うというか、【神域】とかいうだけあってなんかこう、良い感じの空気です。
上手く言語化できませんが、この感覚は神社の神聖な空気感がなんかありますね。やはり神域というのはパワースポットなのでしょうか?
「それでうかのみたまのかみ様(噛みそう)、お話とはなんでしょうか?」
「名前長いやろ? ウカちゃんでええで」
「あ、はい。ウカ様ですね?」
「ウカ『ちゃん』な。様づけはせんでや」
「えっ、神様なのに畏れ多いです」
「いや、『ウカ様』でキーワード検索するとなんか別の人が出てくんねん。察してや」
「あ、はい。じゃあウカちゃんで」
「うん、わかってくれて良かったわ」
どうやら、ウカ様呼びだと色々な事情でアレみたいです。仕方ないね。
このお方、なかなかフレンドリーに接してくれてますし、ウカちゃん呼びで良いって言ってるので失礼に当たらないでしょう。
「それにしてもウカちゃんはネットに詳しいですね。ぶいつーばー知ってたり」
「暇しとるからなぁ。現代は品種改良と窒素肥料がチートすぎるおかげで昔と比べてそんなに豊穣神の仕事ないやん」
「それは……なんと言って良いのやら」
「ええことやと思うわ。暇するの最高やん。この分やとアワシマちゃんも結構暇しとるかもなぁ」
「そうなんですか?」
「あの子、子作りの神様やし。少子化やと仕事減っとんやない?」
「えっ、あの見た目で子作りを!?」
「想像力豊かで草生える。通報しとくわ」
「ごめんなさい通報やめてください!」
だって、あのどろどろ幼女天使が子作りの神様ですよ? どうかしてますね?(どうかしてるのは私の頭だ)
「あのぅ。ウカちゃんはアワシマ様とどういう繋がりですか?」
「うち、スサノオの娘やから血縁上は叔母と姪やな。うちが姪で叔母がアワシマちゃんな。諸説あるけど」
「えっ、なんかサラッと言いましたけどそういう繋がりなんですか? ウカちゃんがスサノオの娘って? あのロリっぽいアワシマ様が叔母って? 神様って色々とヤバいですね?」
「ヤバいのはあんたの頭やん」
「え、そうですかね? ……あ、はい。そうですね(自覚)」
「あっさり認めるやん。まぁそもそも別にアワシマちゃんロリちゃうしな。あの姿になったのも最近やし」
ど……どういうことですか? アワシマ様がロリじゃないなんて……私はいま、冷静さを失おうとしています。
「神様ってそもそも決まった形ないやん」
「あ、そういうものなんですか?」
「そうやね。うちも別にキツネ耳生やしてないこともよくあるし、普通に人間形態あるで」
「えっ、キツネ耳の方が可愛いですけど……」
「まぁ、それはうちもそう思うけど色々あんねや。アワシマちゃんなんか前は赤ちゃんみたいな姿やったしな」
えっっっっ!?
ロリどころか赤ちゃんってもっとアウトじゃないですかアワシマ様!!
不肖の信徒ですけど……これからも信仰していいですか?
「話変わるけど、あの世界が今滅びかけとるって知っとる?」
「あ、はい。なんかそう聞いてますね。あんまり実感わかないですけど」
「まぁハルテンは平和な方やしなぁ」
「鹿とかナメクジとか出ましたけど」
「大陸の方はもっとヤバいやん。5大国のうち2つが滅びて、他の国も現在進行形で滅びに向かっとるし。世界人口でいえば半分くらい減っとるんやないかな?」
え、今さらっととんでもないこと言いました? 半分もう滅亡済みってなんですか?
「あの、大陸って……大陸のことですかね?」
「質問の意図がよう分からんけど、そもそもあんたが今おる国……ハルテン国が島国ってことは知っとるん?」
「そのへん世界地図とか持ってませんのでよく分からなくて……」
「……この世界来て1か月くらい経っとるよな?」
「まだ1つ目の街ですし」
「そやったね。じゃあそこらへんはネタバレ無しにしとこ」
「ええー!? なんでですかー!」
「だって、簡単に分かったらつまらんやん」
いや、説明なしに放りこまれてこっちは結構大変なんですけどね!?
「そもそもうちらはそっちの世界にあんまり干渉できんし、今後もうちらの助けは無いと覚悟してもらわんといけんやん」
「え、そうなんですか?」
「せやから普通は異世界送る前にチート能力みたいなん渡すんやけど」
「チート能力……はて、渡されましたっけ?」
「わからん」
どうやら、普通なら転生前にチート能力を渡されるらしいんですけど……
いや、こんな可愛い容姿に転生しましたし、なんか【神気】とかいうゴッドなオーラ使えますし、お父さん棒も渡してくれましたし! 優遇されてますね! きっと!
「うちに出来るのは、せいぜいレベルアップのたびに音声読み上げするくらいやね」
「あー、それでウカちゃんのレベルアップ音声が聞こえてくるんですね。いつもお世話になっています」
「ええ声やからな、うち」
「そこはかとなく叡智を感じる声質ですね」
ちょっと艶めかしい声していますよね、この人。叡智ですわ。
さて、神様は異世界にあんまり干渉できないと聞いて疑問に浮かんだことが一つ。この際聞いてみましょうか
「そういえば一度だけ夢でアワシマ様に会いましたけど、それ以降何にもアクションがありませんね」
「あー、それね。あっちの世界は通信するのも結構難しいんよ。うちがこうやってあんたに会えとるのも、うちが作ったダンジョンの中っていう限定やし」
「そうなんですか?」
なるほど、通信が出来ないんですか。だから普段私がアワシマ様に呼び掛けまくってても返事がないんですね。無視されてるのかと思いました。
……無視されてないですよね?(疑惑)
「色々と制約があってなぁ。夢でお告げとかするのを【神託】っていうんやけど、神託1つするにも無人島でwifi繋げるくらい難しいんよ。今回はうちの作ったダンジョンの中やからギリいけるかなーと思ったから試しに神域に拉致ったんやけど……駄目元でやったら意外といけたわ」
「なるほど。駄目元だったんですねぇ」
「だから特に何も用意しとらんよ。パワーアップイベントやなくて残念やったなー?」
「確かにちょっと残念とは思いましたけど、それよりもウカちゃんと話せて私は嬉しいですよ?」
「あんなー……そういうことさらっと言うのなんなん? ロリコンなのに」
「えっ、今のセリフ駄目でしたか!?」
「駄目やないけど駄目やね」
な、なんか駄目出しされました! 良い感じに喋ったと思ったのに!
ま、まぁ気を取り直して……もう一つ聞きたいことあるんでした。ちょっと聞いてみましょうか。
「そういえば、アワシマ様は前に夢に出てきたとき、最後になにか言ってたんですよね。えーと、なんか、どっかに行けば会える的な……」
「忘れとるやんけ。たぶん【失われた神都】やね」
「……そう、そんな感じのアレです! えっと、その【失われた神都】という……【神の都】とかいうからには、神様的にも特別なスポットなのでしょうか?」
「ん? 違う違う。そんな云われや歴史のあるところやなくて、アワシマちゃんの作ったダンジョンの名前やね」
「えっ、ダンジョンなんですか!? なんか神秘的な名前だと思ってたんですけど」
「でもただのダンジョンやないで? 何人もの冒険者が攻略を夢見て諦めた……ド級のダンジョン、ドダンジョンや」
「ドダンジョンって何ですか!?」
「心のつえぇやつだけがクリアできるダンジョンやね。数あるダンジョンの中でも屈指のクソダンジョン言われとるから、覚悟しといた方がええわ」
「そんなところ行かなきゃならないんですか私!?」
「アワシマちゃんが来てって言うとるならそうなるやん。たぶんそこやないとアワシマちゃんに会えんで。アワシマちゃんが唯一作ったダンジョンやし」
「そうなんですか? じゃあ行かなきゃいけませんね……!」
「そういうとこ、めちゃくちゃ信仰心篤くて感心するわ。ちょっと邪なオーラ感じるけど」
アワシマ様が言っていた場所はダンジョンのことでした。クソダンジョンとか言われてますけど大丈夫ですかねこれ?
「そのダンジョンってどうやって行くんですかね?」
「海渡った大陸の方にあるクソ高い山を数日かけて登ったところが入り口やから、まず海を渡らんとなぁ」
「まず行くのが大変そうなんですけど」
「そこも含めてクソダンジョンやん。詳しい場所は向こうの大陸で情報収集するとええわ」
「あっはい。分かりました」
そんなことを言ってると、なんか私の身体がぽわぽわ光り始めました。
「なんか唐突に光り始めたんですけど!?」
「あー、そろそろ時間切れになっとるな?」
「時間制限あったんですかこれ!?」
「いや、無かったら帰れんやん。あんたここの住民になるつもりなん?」
「そういうシステムだったんですか!?」
たしかにいつ帰れるか考えてなかったですね? ちょっとのんびりしすぎてました! 茶飲んでる場合じゃなかったですね!?
「そういえば私、いきなりここに拉致られたんですよね? ユーくんとか心配して今頃あちこち探してないでしょうか?」
「今更やな。でもまぁ大丈夫やろ」
「なるほど、なら大丈夫ですね!」
「ちょっとは疑えや」
ぽわぽわと光に包まれて消えていく私の頭を、ウカちゃんはポンポンと優しく撫でました。その顔はまるで慈愛神のごとく優しいご尊顔でした。うぅ、見た目が良い女すぎます。私の対象範囲とは外れていますが、もうちょっとロリだったらヤバかったですね?
「まだいっぱい話したかったけど、もう二度と会うことも無さそうやねぇ」
「えっ、二度と会えないんですか!? せっかく会えたのに……」
「まぁ今回もたまたまみたいなもんやし。釣り糸垂らしてたらたまたまクラゲが釣れたみたいな?」
「私クラゲですか!?」
「あー、最後にもう一回言っとくけど、あのナメクジ倒してくれてほんまにありがとなぁ。うちのダンジョンに発生して困っとったんよ」
「どういたしまして! ユーくんにも伝えておきますね! 神様が感謝してたって!」
「じゃあなぁ。うちは応援することしかできんけど、頑張ってや小さな勇者ちゃん」
ウカちゃんは手を振って見送りました。そして私の身体が神域から消えていく直前に、ボソッと爆弾発言を落としました。
「あ、せや。せっかくやからもう1体【混沌魔物】召喚してもええか? ちょおっと処理に困っとるブツがあってやなぁ……」
「え?????」
「さっきのナメクジより数倍強いと思うけど、たぶん倒せると信じとるやで……」
「ええ??????」
そういって私はウカちゃんの神域から消えていくのでした。
ちょっと最後におまけみたいな軽いノリでクソ重いトラブル投げ込むのやめてくれませんかねぇ!?




