Lo37.暗殺者っぽい家名ですね!?
ユーくんがガロンドさんに勝利してから会場(というか訓練場)は騒然としていました。
「おい、今の動き見えたか?」
「まさかあんな子どもがガロンドに勝つなんて……」
「じゃあレベル5はマジだったってこと?」
「何者なんだあのガキァ……」
ユーくんの強さに困惑してる冒険者の皆さん。私が勝ったとき(ヤラセ)と違って反応がガチです。
正直私もビビってますよ。元々、ユナさんから『冒険者にはレベル20や30がゴロゴロいる』って聞いていたので、もっと見習いからスタートするものだと思ってましたからね。
実際はそんなことは全く無く、ユーくんは既にここにいる多くの冒険者より強くなってしまったようです。意図せず序盤チートでサクサクプレイになってしまいそうですね? RPGは序盤を楽しむタイプの私としては、若干残念でもありますが……
「ガチやったんかあの坊ちゃん……まじもんのレベル5やないか」
「はい! うちのユーくんはすごいんですよ! ……で、どのくらいすごいんですかね、これ?」
「分からんで言っとんのかい! まぁ、どのくらいすごいっちゅーとアレやな。他国ではめちゃくちゃ英才教育された騎士団長の息子とかが11歳でレベル4とかいうのが偉業みたいに言われとったんやが、あの坊ちゃんはそれ以上やな」
「そうなんですか! すごいです!」
まぁ、ユーくんも英才教育はされてたっぽいですけどねぇ。ユナさん、のほほんとしてるように見えて割とスパルタなんですよ。あのユナさんに教育されたなら、この結果もさもありなんといった具合です。
「最初からこんなに強い子どもとか、それこそ【勇者サマ】くらいしかありえへんやろ……」
おお、ユーくんが勇者様みたいに言われてます! さすが将来有望ですね! 本当はアワシマ様から魔王討伐を託されたのは私ですけど、このままユーくんにくっついていけば本当に魔王討伐できるかもしれません!
さて、急遽組まれたユーくんとガイナスさんとの対決に、これまた周囲の冒険者たちはザワついてました。
「まさかガイナスが出てくるとはな……」
「今までこういうところで戦ったこと無かったっしょ?」
「対戦は全て断られてて、てっきりこういう場に出ないと思っていたが……」
「噂に聞くキルロード兄妹の兄の方の実力、どのくらいなんだろうな」
ほうほう。なかなかにガイナスさんは評判のようですね。シャイナスさんにもちょっとインタビューしてみますか。
「ガイナスさんってあんまり人前では戦わない人なんですか?」
「んー、兄ちゃは意味のない戦いをしないだけでよ。戦うの自体あんま好きじゃないしねぇ」
「じゃあ、なんでこの挑戦は受けたんですか?」
「そりゃ意味のある戦いだからでよ。たぶんユーちゃんのこと結構気に入っとるでね? あ、うちもチーちゃんのこと好きでよー」
「本当ですか! 嬉しいです!!」
シャイナスさんがにっこり微笑んで頭をナデナデしてくれました。わーい、私もシャイナスさんのことすこー!(ちょろい
「ところでさっきから気になってたんですけど、『キルロード兄妹』って何ですか?」
「うちらの家名でよ。『ガイナス・J・キルロード』、『シャイナス・K・キルロード』が正式名称でよー」
「そんな名前だったんですか!?」
なんかこう、暗殺者っぽい家名ですねこの兄妹! 明らかに刺客として差し向けられそうな名前です!
「うちもキルロードじゃなくて『ナス兄妹』とか『なかよしブラザーズ』って呼び名を流行らそうとしてるけど、みんな全然呼んでくれないでよー」
「そうなんですか!? じゃあ私がそう呼びます! なかよしブラザーズバンザイ!」
「でへへ、チーちゃんのそういうノリが良いところ好きでよー」
まぁ心の中ではずっとナス兄妹って呼んでましたしね。しかしキルロード兄妹って名前もなかなかにインパクトがあるので、最初にそれを聞いてたら私もそう呼んでたかもしれません。家名にインパクトありすぎるのもなかなか困りものですね。
ところで急遽決まったこの対決にも賭けが始まっているみたいです。
さてさてオッズの方はと……
ガイナス1.1倍!!?
ユージア10.2倍!?!?
「これまた極端なオッズがつきましたね……」
「まぁ当然やろ」
「あなたは……冒険者ギルド長のヨッちゃんさん!?」
「いや、なんで『新キャラ登場』みたいな驚き方しとんねん。さっきからここにおったやろが」
あ、はい。ノリです。すみません。
「それにしても、ユーくんがあれだけ圧勝した後にこのオッズはすごいですね。ガイナスさんってやっぱり強いんですか?」
「当たり前やろ。Bランク冒険者やで?」
「Bランク冒険者!? ……ってBランクってすごいんですか?」
「そらすごいに決まっとるやろ。BランクやでBランク。ちなみにさっきのガロンドはんはDランクやで?」
え、でもランク制ってことはその上にAランクとかあるんですよね? てっきりガイナスさん達は最高ランクの冒険者だと思ってましたから意外です。もっとめちゃくちゃすごそうに見えてました。
「あんなぁ、ピーンと来とらんから言ったるけど、そもそもこの街の冒険者でBランクなのは3チームしかおらへんのよ。そのうちの1チームがあの『キルロード兄妹』や」
「そうだったんですか!?」
「この街じゃAランクの冒険者はおらんから、事実上街のトップ3に入るチームっちゅーわけや。しかもたった二人のチームやで? 他のチームが5人とか6人とかおるのに」
「なんと……それってすごくすごいんですね!」
「ごっつぅごっついで」
なるほど……冒険者のランクってのは初めて聞いたのでまだよくシステムが分かってませんが、とりあえずBランクがすごいってことは分かりました。こういうランク制だとAの上にSランク、Sの上にSSランクとかあると思ってたので、Bがすごく高いって評価もなかなか新鮮ですね。
ヨッツさんがモノクルをクイッと上げて言いました。なんかデータキャラっぽい仕草ですね?
「正直ワイも気になっとんねん。キルロード兄妹は依頼達成率はめっちゃスゴイのになかなか表舞台に出てこおへんからな。他のチームと違ってあんま目立つこともせず、淡々と依頼をこなしてランクを上げてきたんや。たった二人で混沌魔物を無傷で狩ってくるほどの実力者……ぶっちゃけどんだけ強いんか、ワイも全然分からんで?」
「なるほど……それは分かりませんね。じゃあシャイナスさんに聞いてみましょう! ガイナスさんってどのくらい強いんですか!?」
「めっちゃつよいでよー」
「……!? めっちゃ強いらしいです!!」
「いや全然分からへんわ!!」
結局全然分からないみたいなので、それはお楽しみにしておきましょう。
決戦のバトルフィールド(訓練場)ではユーくんとガイナスさんが対峙していました。
ユーくんは1mほどの大剣。一方でガイナスさんはタワーシールドと呼ばれる大きな盾とロングソードという長剣を構えるスタイルです。
装備はお互いに訓練用の刃引きされたものを使っており、ガイナスさんは盾も訓練用のものです。そのほかの防具は全て自前ですね。
「この勝負どうなるんだろうな……」
「流石にガイナスだろ」
「俺ガイナスが戦ってるところ見たことねぇんだよな」
「ていうかガイナスってレベルいくつだ?」
「そういや聞いたことねーな。つってもレベル5以上は確定じゃね? Bランクだし」
「あの全身鎧に大盾だぞ? 流石に速さではあの坊主の方が上なんじゃねーか?」
「じゃあお前あのガキに賭ければ?」
「ねーわ」
周りの冒険者さんたちはガイナスさんの実力を分からずとも、圧倒的にガイナスさん優勢と見ているようです。むむむ、ユーくんを応援してくれる人が相変わらず少ない模様。こうしちゃいられませんね!
「ヨッツさん! ユーくんに私の全財産ベッドします! さっき増えたので310センカです!!」
「また賭けるん!? しかも全額!?」
「いいんです! 推しにはお金かけるものです!!」
「そういう思考で!? ってかキミ、ギャンブル絶対向いてないやろ!!」
まぁ、別に良いんです。全財産失っても。私達にはまだ換金してない魔石がたんまりあるじゃないですか(ダメ人間の思考)
それよりこういうところで言ってみたい決めゼリフがあったんです。
「お前に俺の全てを賭けるぜ……!!!(310センカ)」
「急に何言うとんこの子!?」
「あ、一度でいいからこういう台詞言ってみたかっただけです」
「今ちゃうやろ!? もっと人生で大事な場面で言うべきやろ!?」
はい、私もなんか言ってて違う気がしました。もっといいシチュエーションで言える日が来るのでしょうか?




