Lo211.なんかキレられまくる場違いな幼女チーちゃん
前回のあらすじ。
なんか悪神の仮面の下から衝撃の正体みたいなのが明かされましたけど、部外者の私は全然話についていけません!
誰なんですか貴方!?
私はイーグレス神聖国の真の王とか名乗ったヒゲのおじさんを見上げます。
……なんでいきなり仮面剥いだんですかねあの人? 正体隠したくて仮面つけてたんじゃなかったんですか?
とゆーか最初に【悪神フシイカヅチ】って自己紹介してましたよね? ウーディルって何ですか?
結局どっちなんですか? ぜんぜんよくわかりません!
私が事情を知ってそうなシャイナスさんに助けを求めるように見やると、彼女は神妙な顔をしてうなづき……
エールちゃんにこそこそ聞きました。
「うーでぃるって誰でよ……?」
ずこー!
どうやら名前を憶えてなかったっぽいです!
だからシリアス台無しにしないでください!
「先王です。今の聖王の兄で、2年前にガイナス様によって討たれて死んだはずなんですが」
「あー、そんな名前だったんでよ……で、『先王』って何でよ?」
「『先代の王』という意味です。なんで説明しないと分からないんですか?」
へー、せんおーって『先代の王』ってことなんですか。勉強になりました。
というか前の王って今の聖王の兄なんですか。若干雰囲気似てると思いました。
いやシャイナスさん、前の王の名前くらい覚えていましょうよ! 私だって前の総理大臣の名前くらい覚えてますよ!?
……えっと、何でしたっけ? あれ? 意外とすぐ出て来ませんね?
ちょっと待って下さい今思い出しますから……
「ウーディル……これはどういうことですか? 何故死んだはずのお前がここにいて、【悪神フシイカヅチ】などと名乗っているのです?」
あ、エールちゃんが真面目モードで質問してました。
とりあえず無駄な思考は中断。部外者の私は口をはさめないので、大人しく話を聞く姿勢を取ります。
しかし、こういうときの敵って質問に対して正直に答えてくれるもんなんですかね?
「くくく……愚かな質問だが……答えてやろう」
……答えてくれるんですね。意外と親切です。
いや、おしゃべりなだけかもしれません。そういえばずっとおしゃべりでしたね、この悪役。
ちなみにさっきから喋ってる間、義経ゾンビさんはずっと待機中です。全く攻撃する気配はありません。
会話中は放置でいいんですかね、あれ?
「そもそも疑問に思わなかったのか?……余がどこから侵入してここに現れたのか、そして城の地下深くに封印されている勇者クロウの聖骸が何故ここにあるのか」
「疑問には思いましたが、倒してから考えようと思っていました」
エールちゃん、やっぱりそういうところ雑ですよね。
まぁ倒したら正体なんてどうでもいいのは私も賛成ですけど。
「答えは……余はずっとこの国の内部にいたのだよ。だからわざわざ侵入することもなく、こうやって堂々と出てこれた」
「内部にいた……?」
「そう、そして時を待っていた。【聖王御前試合】が行われるこの時をな」
「どうしてですか?」
「この催しの為に国中から多くの重要人物が集まっており、効率的に虐殺できるからだ。そして何より……この楽しげな祭りのような雰囲気が一転して地獄へと変わる。実に悲劇的だろう?」
ウーディルが悪そうな顔で笑います。
ふむふむ、なるほどー。悪役としてはより悲劇的だと良いんですね。趣味でしょうか?
私はふと思いついたことを言います。
「うーん、悲劇的ですかぁ。私が悪役なら一回戦が終わったこのタイミングじゃなくて、決勝戦が終わって優勝者が決まった瞬間に割り込みますかねぇ……そっちの脚本の方が良くないですか?」
なんとなく言っただけです。
ほら、なんか優勝が決まった瞬間が一番盛り上がるじゃないですか。そこをぶち壊してこその悪役ですよ。
今回のはなんとも中途半端というか……
「……余を愚弄するな」
「ふぇ?」
「余を愚弄するなと言ったのだこの薄汚い糞餓鬼がああああ!!!」
う、薄汚い糞餓鬼!? この私が!?
毎日ちゃんとお風呂に入ってるのに!?
なんかあの人、めっちゃキレてます!
かわいい幼女がなんとなく言っただけなのに……?
噴火するかのような激しい怒りを幼女の私に向けるウーディルさん。その怒りを顕すかのように、身体から禍々しい魔障が噴き出しています!
「さっきから何なのだ! 場違いだろうがこの糞餓鬼は!! いちいち割り込んでくるな畜生が!!!」
「え、ええ~……?」
「今は国家存亡の危機で!! 人々の生死がかかった重要な局面だと分かっているのかこの餓鬼はアアアアア!!!」
ご、ごもっともです!
今シリアスな場面なんですよね!?
すみません!
「で、でも言い訳させてもらいますが、シャイナスさんも大分シリアスをクラッシュしましたよね!? 私だけのせいじゃないです!!」
「えー、うちのせいでよ?」
「そうですね」
シャイナスさんも登場してからボケっぱなしです。決して私のせいだけではないはず!
「そうだ……だから昔から貴様が気に食わなかったのだ! シャイナス!! いつもいつも、肝心なときにヘラヘラ笑いおって!!!」
「ほら、怒ってますよ?」
「えー、心外でよー」
「クソ餓鬼どもがアアアアア!! 余の許しを得ずに勝手に喋るんじゃあないっ!!!!!」
あ、まとめて怒られてます。こわひ。
ウーディルは再び髑髏の仮面をつけて、憤怒の顔を隠しました。
「……もう良い。誰かが犠牲になればお前達のような頭の悪い馬鹿どもも、少しは目が覚めるデあろう」
ウーディルはまた、男か女か良く分からない声になってしまいました。なんでボイスチェンジャー機能付いてるんだろあの仮面……
「勇者クロウよ……あのガキを殺セ。一切の希望など持たせルナ」
そう言って、ウーディルは私を指差しました。
……え? 私ですか!?
思いっきり部外者なのに!?
なんでこんなケモ耳可愛い幼女の私を真っ先に狙うんですか!?
ウーディルの命令を受けた源義経ゾンビは私に向かって目にも止まらぬ速さで距離を詰めてきました!
うにゃー! ガチじゃないですかー!! やだーーー!!!
そして、義経が目の前に迫った瞬間──
「……誰がうち一人で助けに来たって言ったでよ?」
シャイナスさんが不敵に呟きました。
そのとき、突然降ってきた二つの小さな人影が義経の前に割り込みました。
ガキィン!
義経の抜いた大太刀と、目の前の小さな人影の振り下ろした剣がぶつかり合い、激しい金属音を奏でます!
「久しぶり! チーちゃん!!」
少年のような快活な少女の声が響きます。
この姿は、この声は。
たった1ヶ月ぶりなのになんて懐かしいんでしょうか!
私は2人の名前を呼びます。
「ユーくん! ココッテちゃん!」
「助けにきたよ!」
「ん」
私のパーティーメンバー。
ユーくんとココッテちゃん!
頼りになる2人の幼女が助けに来てくれました!!!




