Lo2.最初から詰んだので泣きながら神様に懇願します!
チーちゃんのイメージカラーは『緑』です。
ええ、私がネットで活動するにあたって、自分のアバターとなるキャラクターを作り出したのは確か中学生の頃でしたかね……(唐突な自分語り)
現実世界では既に胸も無駄に膨らんでおり、大人の身体に変わるのが嫌だった私が創り出した架空のアバター、チーちゃん。
せめて空想の中ではめちゃくちゃ可愛い幼女になりきりたいと思っていた私ですが、実際自分の分身として使用するにあたって、赤色とか青色とかの主人公が使うような派手なカラーを塗るのはちょっとなぁ……
そう思ったので消去法で大人しめな緑色に髪を塗ったところ、それが妙に落ち着きがありしっくりときました。
私の地衣という苗字は地衣類、つまりコケの仲間を意味します。そう、私は名前通りコケのような存在になりたかった。
そう……
千代に八千代に……
苔のむすまで……
苔の娘です。
そんなダジャレのような存在のチーちゃんは獣耳と尻尾を生やした幼女でもあります。
はい、中学生の時から私はロリコンでした。ブレませんね、私!
チーちゃんが獣人かどうかは設定がフワッとしてて自分でもよく分かりません。妖精みたいな可愛い存在だと思ってます。
苔の娘です。
そんなこんなで私のお気に入りのアバターとなったチーちゃんというオリジナルキャラクター。
SNSのアイコンもずっとこれですし、もう10年以上使っているんだなぁと思うと感慨深くもあります。
現世での私の人生の半分はチーちゃんと言っても過言ではあります。あるんかい。
さて、自分語りが長くなりましたね。オタクという人種は常に自分語りする隙を狙っているものです。なんならもっと長文で自分語りに没頭したいですが……
まぁそれどころじゃない状況なんですけどね。
とりあえず思考を現実に戻して周りを見渡します。
森です。
あたり一面見通しの悪い森林です。
はい、初期リスポーン位置がこんな感じですね。もっと人里近いところが良かったです。
異世界に来て最初からこれです。
死にましたねこれ。
砂漠や海中じゃないだけマシなのかもしれませんが、サバイバル経験の皆無な私は普通に死にます。
まず、道が無いです。
人の通った後には道が出来るものですが、どこにも見当たりません。
東西南北どこにも道が無いです。
雑草があまり生えて無いから木々の間を通れそうなのは救いですね。森林っていうのは不思議と雑草が生えてないものです。地上に届く光を樹木が覆っているから雑草が生えにくいんですかね?
その代わり地衣類はたくさん繁栄しています。こういうじめじめしたところが大好きなのです。さすが私の仲間ですね。
雑草が無いと言っても、落ち葉が地表を覆っていて、石もごろごろ転がっていて地面がデコボコで歩きづらいことには代わりないです。
さて、東西南北全て同じ状況。これからどこへ進むべきか。
まぁそもそも方角すら分からないんですけどね。方位磁石ください。
気温は心地いいくらいの涼しさです。森林の良い空気が胸に沁み込みます。多くの生き物にとって過ごしやすい環境なんじゃないでしょうか。
自然って素晴らしいです。排気ガスで汚れた都会の空気とは全然違います。
はい、私の住んでいるところは都会って言っても地方の田舎都市でしたけど。コミケへの遠征費用が往復4万円取られます。悲しいですね。
はい、現実に戻りましょう。君たちはどう生きるか? 結局それが問題なんです。
ここでうだうだ悩んで動けないまま1時間。ぼけーっと過ごしていましたが、心なしかお腹が空いてきたような感じがします。
この身体もお腹が空くんですね。そこは人間と同じようです。
ここまでで既に「ステータスオープン!」とか「アイテムボックス!」とか異世界あるある行動を色々試してみました。はい、何も起きません。
詰んだ。詰みました。
万策尽きた私はおごそかに手を合わせて頭を下げ、神様に祈ります。
2礼2拍手1礼。
古来より伝わる由緒正しき礼の姿勢です。
「神様、どうかチートをお恵みください……
どうか……この声が聞こえるのなら……神様ぁ……」
泣きそうな声で頼みましたが、何も起きません。
つらいです。神様、ひどいです。
ああ、そういえばあのどろどろ幼女天使の神様の名前なんでしたっけ?
確か、そう……
「……アワシマ様、どうかお助けください……どうか……アワシマ様ぁ……」
目をつむって必死に懇願した。私の願い、どうかアワシマ様に届いて……!
土下座もします。何でもしますから……!!
カラン……突然乾いた木の音がしました。何かが起こった音ですか? もしかして、アワシマ様のお恵みですか?
おそるおそる目を開けてみると、目の前にどこか見慣れた木の棒がありました。
「こ、これは『お父さん棒』!?」
説明しましょう。これは『お父さん棒』と私は言いましたが、ひらたく言うと木の棒です。ただし、ただの木の棒ではありません。
これはお父さんが若かりし頃に四国お遍路を巡るのに使ったという由緒正しき木の棒、『おへんろ巡礼用金剛杖』なのです。幼少期の私が倉庫で仕舞われているのを発見して、勝手に私物にしました。
長さ130cm、ヒノキ造りのこの棒にはかつて先端に杖袋というカバーがついていたらしいのですが、とっくにどこかに無くして今ではむき出しの木の棒となっております。
四角形で出来た棒の先端には「空・風・火・水・地」を意味する梵字が刻まれており、当時の私にはとてもかっこいい神器だと思ってました。
でもよく暴君の姉に奪われました。これは私が見つけたものなのに。
ああ、懐かしい。私の愛用『お父さん棒』が今、はるか遠く異世界の地まで届けられました。
これがアワシマ様のご加護でしょうか?
やはり神様は見守っていらっしゃったのですね。
すると頭の中に、あのレイプ目のどろどろ幼女の覇気のない声が響きました。
―――やはり勇者の旅立ちには『ひのきのぼう』が必要―――
お父さん棒!?
これってまさかRPGで最初に王様から渡される、最弱の武器ひのきのぼう扱いなのですか!?!?
いや、これたしかにヒノキで作られてますけどね!!?!?
―――じゃあ頑張れ―――
あ、アワシマ様! アワシマ様!?
ああっ、どんどんアワシマ様の声が遠くなっていきます!!!
おーい!!! アワシマ様!!!
サポートが足りませんよ!!!?!?
もっとチート的な加護をください!!!!!
というかせめてこの森から出してください!!!!!
アワシマさまあああああああああああああああああああ!!!!




