Lo195.聖王御前試合(ホーリーオーダーデュエル)
【聖王御前試合】
それはイーグレス神聖国の伝統と格式ある武闘大会です。
全然知りませんでしたけど、そういうことらしいです。
かつては勇者を選ぶために聖王の前で行われた御前試合で、今では5年に一度行われる国民的行事となっております。
全然知りませんでしたけど(2回目)
参加には条件があります。それは年齢が18歳未満であること。ナウなヤングしか参加できません。
つまり18歳以上は参加資格なし。大人は……勇者になれないのです!
ぜ、全然知らなかった!(3回目)
「というわけで、28歳の私は参加資格が無いので辞退しますね!」
「もう登録しました。あなたも参加します」
「なんでぇ!?」
私がそう言ったらエールちゃんにそう返されました。
なんでですか!? 思いっきりルール違反なんですが!?
「貴方の公式年齢は8歳となっております。参加資格ありますね」
ふぁっ!? あのときですか!?
ハルテンで年齢をサバよんで冒険者登録したのが今になって首を絞めてます!
いや、ちゃんと28って書いたから嘘じゃないです! 2が小さくて読めなかっただけです!!
「今回はタッグマッチということなので、こちらからは2チーム出します。Aチームはキナコとルナコ。Bチームは貴方とサイレンジシズカのチームです」
「なんでその組み合わせなんですか!?」
「チームワークの良い組み合わせを選ぶと自然とこうなります」
「たしかに!」
魔法少女コンビは長年組んでただけあり、お互いに動きを分かってる感じがします。
一方、私と西蓮寺さんは急造コンビです。何のシナジーもありません。
「まぁ私達が惨敗したとしても、きなこちゃん達で勝ってくれればいいですかね?」
「私としては『変身』を使わない魔法少女コンビより、何の制限もない貴方達の方が面白いと思うんですが」
「へ?」
「番狂わせ。期待してますね」
エールちゃんは真顔でそう言いました。お、おう。期待しておくがよいです……無様な負けになりそうですが。
大会では全16チームが決勝トーナメントに参加します。
その内訳は一般参加者の12枠。そして今回は特別枠の4枠が用意されました。このうち2枠が聖王派、もう2枠がエールちゃん派で選出されます。
一般参加者は予選で勝ち抜いた猛者達ですが、特別枠の私達は予選抜きで参加することになります。
これは配慮のように見えますが、ぶっちゃけ逆です。聖王派はエールちゃん陣営にろくな人材がいないことを知った上でわざわざ『やられ役』を用意してるんです。
つまり、聖王派は公衆の面前でエールちゃん派をボコボコにして、自陣営の強さをアッピルしたいんでしょう。
「……あれ? そういえばエールちゃんにも参加資格があるのでは? 10歳ですよね」
「本来、勇者を選ぶための御前試合ですよ? 私は特級聖女なので勇者じゃありません」
「え、でも『聖女』の天恵を持つホリーちゃんとかは参加するんですよね?」
「それはそうですが……それでも私は無理です。有り体に言えば『空気を読め』というやつです。私が出た時点で優勝は決まってしまいますので」
「まぁそうですね」
というわけでやっぱりエールちゃんは出れないようです。
エールちゃん、国内最高のレベル9ですからね。こんなの未成年の大会に出ちゃいけません。将棋界現役最強の藤井聡太さんが部活の高校生大会に出るようなもんです。
まだ10歳の幼女なのに。
「しかし、5年に一度の大会がちょうどあるなんてすごい偶然ですねぇ」
「逆です。【勇者召喚】をこの時期に合わせたんですよ」
「あ、なるほどー。ところで、シャイナスさんやガイナスさんは出場したことあるんですかねぇ」
「10年前にガイナス様が出場し、優勝しています」
おお、すごいですねガイナスさん。流石です。
最初会ったときは結構腕が立つBランク冒険者くらいに思ってたんですけど、どんどん強キャラエピソードが盛られていきます。
一体どれだけ強かったんですか?
「じゃあ5年前の優勝者は誰なんですか?」
「前回の優勝者は私が倒したのでもうこの世にはいません」
「……えと、2年前の内乱ですかね? 前国王の政権を打倒したときの……」
「はい。そのとき戦った【六聖】の一人が優勝者ですね。私が倒しました」
「ひええ……」
なんかさらっと前回優勝者を亡き者にしてる幼女がいるんですけど!?
こわひ。てゆーかエールちゃん普通に人を殺ってるんですね……まさに戦乱の世よ……
「というわけで、そろそろお絵描きをやめて外に出ましょうか」
「にゃー! でたくないー!」
特級聖女の部屋で引きこもってお絵描きをしていた私は、エールちゃんに無理矢理引っ張られてお外に連れ出されることになりました。
きなこちゃんとルナ子ちゃんだけでいいじゃないですかー!
…………
【聖王御前試合】は王都にある円形闘技場で行われます。
かつてはお城の中庭で行われていたらしいのですが、興行化するにつれて規模の大きな会場に舞台は移っていきました。
収容人数は10万人だとか。広いですねぇ。アイドルのコンサートかな?
国民的行事なので、国中が熱狂の渦に巻き込まれます。そんな中に私達は参加するわけです。
うへぇ……恥かきそう。いさぎよくさっさと負けましょうか?
エールちゃんに抱えられた私は、選手控室に雑にぽいっと投げ出されました。
きゃいん。
「あ、やっときたチーちゃん」
「遅いぞオヌシ。ふぁっきゅー」
「……(ひたすら部屋の隅を見ている)」
私以外の3人は既に現地入りしていたようです。装備もバシッと決まってます。
きなこちゃんは『漆黒のバンテージ』『はやてのふく改』『真紅のマフラー』
ルナ子ちゃんは『セイグリットランス』『竜鱗の大盾』『竜革の軽鎧』
西蓮寺さんは『魔聖の黒杖』『蒼き魔女の大きな帽子』『蒼き魔女のローブ』
はい、みなさん装備がなんかランクアップしてます。
きなこちゃんは基本的に武闘家っぽい服装なんですが、たなびくマフラーでニンジャ感を出してます。
ルナ子ちゃんはガチ装備です。大人しそうな顔をして、リーチの長い突撃槍と大盾装備です。軽鎧で軽量化してある程度動けるところもガチです。
西蓮寺さんは全体的に青い魔女イメージになってます。水の神様と契約したから、そっちにイメージを合わせたのでしょうか?
そして私の装備は……
……『子供用の櫂』『幼女用メイド服』
えと、そうですね。なんでこれ誰も突っ込まなかったんですか?
ずっとこの装備でダンジョンアタックを突っ切っちゃったじゃないですか!
うわー、恥ずかしい。言うなればガチめのマラソン大会に、私だけ高校のときのジャージで参戦した気分です!
でもまぁ……可愛いし、別に良いですよね? こちとら幼女様ですぞ!
「結構人来るんだよね。緊張するね……静香ちゃんは大丈夫?」
「……(壁を見ている)」
ルナ子ちゃんが話しかけたにも関わらず、西蓮寺さんは壁を見たまま反応なしでした。
あ、これ駄目なパターンです。表情に全く出ないので、何も知らなければ外面はクールな美少女に見えるんですけど。でも実際は放心してる感じですね。プレッシャーに弱い子です。
エールちゃんが紙を持ってきて、広げました。
「これが大会の対戦相手表です」
第一試合
『勇者と聖女』(聖王推薦枠)
『剛腕ストレングス』
第ニ試合
『エールの子供たち』
『インテリジェントル眼鏡ズ』
第三試合
『マッスルインパクト』
『急造で作ったコンビなんだが』
第四試合
『リュミエールA』(特級聖女推薦枠)
『神聖騎士オルト&ラーク』
第五試合
『神聖騎士マルタ&ディオサ』
『ハンサム☆ローズ』
第六試合
『疾風迅雷ですわ♪』
『マジカルファイターズ2』
第七試合
『HUNTER×HUNTERが連載終了するまで死ねない部』(聖王推薦枠)
『朝食はヨーグルト』
第八試合
『神聖騎士エクセル&ワート』
『リュミエールB』(特級聖女推薦枠)
なるほど……これが。今回の大会の猛者たちですか……!!
「変なチーム名ばっかりじゃないですか!?」
「気のせいです」
うぅ、ずるい!
私達もリュミエールA、リュミエールBなんてつまんない名前じゃなくて面白いチーム名で出たかったです!
というか『HUNTER×HUNTERが連載終了するまで死ねない部』(聖王推薦枠)って何ですか!?
明らかに【勇者召喚】されたクラスメイトのチームなんでしょうけど……なんとなくですが、HUNTER×HUNTERはたぶんまだずっと休載してる気がします。暗黒大陸編まだですか?
そして対戦表を見ててとあることに気付きました。
「これ、私達両方とも1回戦が神聖騎士のチームですね?」
「ええ、露骨に潰しに来てます。神聖騎士できっちり私達を潰しておきたいんでしょう」
「ふぁっきゅー」
むむむ、この対戦表は操作されてるようですね。ずるい。
ですがエールちゃんは言います。
「相手は神聖騎士の中でも若手のホープと言われる存在ですが……しょせん若手は若手です。将来性はあってもレベルは低い。キナコとルナコなら十分勝てるでしょう」
「当然だろう」
「騎士と戦うのは初めてだけど……頑張るよ」
きなこちゃんは余裕たっぷりに。ルナ子ちゃんは少し謙遜してる感じで言いました。え、私達は?
「欲を言えば『勇者』のタカハシにも勝って欲しいですが……下馬評ではボロ負け濃厚ですね」
「そうだね……高橋くん。結構本気で特訓してて、すごく強くなってるらしいよ」
「高橋ごときに負けぬ。らくしょー」
「いやきなこちゃん、高橋くんのこと全然知らないでしょ、高校入学したばかりだし。まぁ私もあんまり知らないけど……」
ふむふむ。よく考えたらこっちに来たタイミングが新入生オリエンテーションのときですからね。まだ高校1年生。これからお互いを知っていくところだったんですね。
ふと、ルナ子ちゃんが西蓮寺さんを見ます。
「そういえば西蓮寺さんは小学校から一緒だよね? 高橋くんのことよく知ってるの?」
「…………?(首をゆっくりとかしげる)」
「あ、全然知らなそう」
へー、西蓮寺さんは小学校からずっと高橋くんと一緒の学校だったんですね。全く意識されてなくて草生えますが。
一方、高橋くんは西蓮寺さんを連れ戻そうとしてましたね。もしかして気があるんでしょうか? まぁ西蓮寺さんはクラスで一番美少女ですから分かる気もします。中身はぽんこつですけど。
そんな話をしていると、こちらにずんずんと迫ってくる人影がありました。
「西蓮寺!? 西蓮寺じゃないか! お前も出るのか!!」
噂をすればなんとやらです。
西蓮寺さんはその声にゆっくりと振り返ります。若干面倒そうな顔をしながら。
そこにはイケメンで何でも出来るけどあまり特徴の無い男、立派な黄金の鎧を着用した『勇者』の高橋くんがいました。
【聖王御前試合】
今回からルビがつきました。思いつかないままずっと書いてましたが、ルビがつくとやはり違いますね。なんかかっこよく見えます!
「ホーリーオーダー」は今期アニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』のディアナ聖教「聖女守護騎士団」の団長パラガスさんから取りました。シュワット!(ブロリーMADに脳を焼かれてるニコ厨の発想)
あと「オーダー」は注文試合的な意味とのダブルミーニングも兼ねてます。つまり聖王が好き勝手レギュレーションを決めていい大会です。




