Lo109.なるほど、ガチ恋の元気玉をスパチャ還元してるんですね
大名行列でわっせわっせと港まで送られた後、私達は船に乗り込みました。
なんでしょう私達の扱い?
はた目から見ると得体の知れない幼女が神帝様ご一行の中に混じってたって感じなんですけど、なんか民衆からツッコミは無かったんですかね?
意図せずめっちゃ目立ってしまいましたけど、そもそも民衆は私達の名前知ってるんですかね? サッカー場のエスコートキッズみたいな扱いとか? ……まぁ深く考えるのはやめましょう!
さて、これから乗り込む船。みんなえっと、なんでしたっけこの船の名前……
「たしか……サクラバクシンオー」
「『桜花爆進号』だよ」
「そう、それです」
決して平成の短距離王者ではありません。首都オウカにちなんだ由緒正しい名前らしいです。
あれですね。アメリカの戦艦アイオワとか戦艦ニューヨークとかそういう系統の名前ですね。地名を船の名前にしています。首都オウカの名を冠する船なので、かなり威信を背負ってるはずです。
一方港では、サクちゃんとひーちゃんが対面していました。
「サクちゃん。気をつけて帰ってきてくださいね」
「うむ、心配いらんからのぅ。どーんと待っとれ」
「……なんかこのやりとり、まるで夫婦みたいですねぇ」
「公衆の面前でやめんかそういうこと言うの。聞かれとるじゃろうが」
あら~。もしかしてお二人、結構深い仲なんですかね? キマシ塔建てちゃいます?
……いや、普通に何の気なしに言いそうなんですけどねひーちゃん。だいぶ天然っぽいので。
ですが、この発言を聞いていた民衆がにわかに色めきたった様子を見て、「あ、これ日本だったらツイッターでカップリングの絵がトレンドを席巻するやつや」と思ってしまいました。
なんかね、ひーちゃんってかなりファンが多いっぽいんですよ。この間、市場で神帝ヒオウギアヤメ様の姿絵とか大量に売ってるところをみました。初代神帝ミカド様の絵より売れてました。仕方ないね。
この世界に肖像権とか無くてそういうの勝手に描いていいなら、私も便乗するのもアリかもしれませんね? もちろん描くからには幼女化させます。
「皆様の無事をお祈りします。これから戦地へ向かう貴方たちへ、私からありったけの祝福を贈りますね」
ひーちゃんが両手を合わせて祈りました。ひーちゃんの身体から神秘的な光があふれて、頭から花のついた木の枝のような角が生えてきます。ひーちゃん第二形態です。
ひーちゃんが神術を使う際にああなりますけど、なんか良いですよねぇ。ただのエルフじゃなくて、やっぱりサクちゃんの系譜なんだなぁと角が生えた姿を見て思います。
ひーちゃんからあふれた神気の光が、私達に降り注ぎます。というか船全体が【祝福】されています。
神秘的ですねぇ。なんかぽかぽかします。
「なんでしょう?……なんか私のと違う感じがしますね?」
「それは神帝様だけの【神気】じゃないからでよー」
私が呟くと、なまりのある聞きなれた女性のぽやぽやした声が聞こえました。盲目の聖女にして正義の冒険者、ガイナスさんとシャイナスさんのナス兄妹です。
「シャイナスさんじゃないですか。おはでよ~!」
「おはでよ~♪」
「いや、おはでよ~って何なんだ?」
隣にいたガイナスさんがツッコミに回ります。
おはでよ~♪とは一体……? そんなこと私には分かりません。なんとなく出てきましたから。私は幼女なので、ノリと思いつきで話してます。
「【神気】というのは扱う個人からだけでなく、周囲の【信仰】により高められるらしい。あれは神帝ヒオウギアヤメ様が民衆から信仰され、高まった神気を解放したことで起きる現象だ」
「そうだったんですか。つまり……元気玉ですね!」
「いや、それは知らんが」
みんなから信仰心を集めてパワーに変える。なにやら神気ってそういうものらしいです。はえー、普通に使ってたけど全然知らなかった。
「大陸の方でも似たようなことをしていてな。あちらではああいった奇跡を起こす存在を【聖女】と呼び崇めることで神気を高めている。この国に聖女制度は無いが、結果的には似たような形になっているな」
「なるほどー……そんなしすてむだったんですねぇ。奥が深いですねぇ」
「チーちゃんが言うとすっごく軽く聞こえるよね」
そんな仕組みがあったとは知らなかったんですけど、もしかしてこれ、魔王と戦う際には必須条件になってきたりします?
「じゃあこれは国民からの愛のパワーですね!」
「愛……なのか?」
「え、だってひーちゃんガチ恋勢からのパワーを間接的に受け取ってるわけでしょう私達? スパチャ還元みたいな形で」
「すまん、全然わからん」
「チーちゃんはよく分かんないこと言うからねぇ」
まぁそういうものだと思っておきます。
つまりアレですね。ぶいつーばーみたいにガチ恋されれば神気のパワーが多分上がる気がします(てきとう)
「あっ、もしかして大名行列みたいな目立つ行進をして音楽鳴らしてここまで来たのも、意味があったんですか!?」
「そうでよー」
なんかただのお祭り騒ぎだと思っててすみません! 信仰心がパワーに繋がるなら、ファンサは大事ですよね!
「じゃあアレですね。もしかしたら私達もそのうちアイドル活動しなきゃいけないのかもしれませんね……」
「またチーちゃんが変なこと考えてる」
うむ、ユーくんもココッテちゃんも可愛いですしアイドル性はバッチリですね。いけますね!
船に乗り込むともう既に他の冒険者さん達も乗り込んでいました。先日も乗り合わせましたけど、今回はみんなガチ装備っぽくてものものしいです。
その中に双刃剣(両端に刃がついてるクセつよソードのこと)をかついだ見慣れたイケメン狼獣人お姉さんがいました。
「おう、お前らか」
「ウェダインさん! 無事だったんですね!」
「なんで生き別れてからようやく再会したみたいな感じになってんだぜ? 開幕ボケやめろ」
「チーちゃんよくやるよね。開幕ボケ」
「なんですかもー! 人を芸人みたいにー!」
「いや、どうあがいても芸人だぜ」
「芸人だよね」
どうやら私勇者じゃなくて芸人だったみたいです。えっと、芸人のジョブになったらハッスルダンス使えるんでしたっけ? 踊って良いですか?
「お前ら海戦は初めてだよな。配置は分かってるのかよ?」
「いえ、ぜんぜん」
「だと思ったぜ。とりあえず基本の配置としては、オモテとトモに10人ずつ、左舷と右舷に20人ずつの配置って感じだ。オモテの方は特に激しい戦闘が予想されるから、都度交代しながらローテーションで回す」
「ええっと……オモテとトモ? 私達で敵をおもてなししろってことですか?」
「……悪い。これ船の専門用語だったな。普通の言葉で話すぜ」
どうやらオモテが船の前、トモが後ろのことみたいです。へー、勉強になったなぁ。
「目的地に着くまでは20ノットで半日ほどかかるぜ。まぁしばらくはのんびりとした船旅だな」
「えーと、20ノットってなんですか?」
「あー、船の速さの単位だぜ。この船はいわゆる高速船。巡航速度でそのくらい出るが、最高速度だとその3倍は速くなるぜ」
すみません、全然わかりません……なんか速そうってのは分かりますけど。サクちゃんがしかめっつらをして言います。
「めんどい話しとるのぅお主ら。どうでもええじゃろ。どうせ乱戦になるわい」
「臨機応変に動くにも、前提条件の把握は必要なんですよ」
サクちゃん、感覚派っぽいですからねぇ。作戦会議とか苦手そう。
「まぁよい。そこらへんの話は道中出来るじゃろ。これで全員乗り込んだかのぅ?」
「ハッ、全員乗り込みました!」
「それじゃ出航するぞ! 帆をあげよ!!」
「この船、帆無いです」
「オモカジいっぱーい!!」
「まだ係船索外してないです」
そうして、私達は出航したのでした。
いざ、決戦のバトルフィールドへ!!!
ハルテンの国民は信仰心が薄くノリが軽くミーハーなので、神帝ご一行に混じる異物を見ても「新キャラかな?」「かわいい」くらいにしか思ってません。
ただ、神帝ヒオウギアヤメ陛下へのガチ恋勢はめっちゃ多いです。変な宗教生まれてます。
【追記】
短編小説を書きました。この作品に登場するとあるキャラクターのエピソードとなりますが、本編とは直接関係ないので独立エピソードとして公開することにします。良ければ読んでくださいね!
「悪い神様と優しい聖女」 https://ncode.syosetu.com/n1305kf/




