Lo107.遂に明かされるサクちゃんの本当の正体?
【悲報】チーちゃん、サクちゃんに勇者バレしてしまった模様
いや、あまりにも自然に会話に織り混ぜてくるのでついつい言っちゃいましたね。
今まで明かしてなかったのに、それはまずいことになりましたね……あれ? サクちゃんにバレて何かデメリットありましたっけ?
いや、特に無いですね? はい。全然ないです(確信)
「というわけでサクちゃん。今更正体明かしますけど……実は私、神様から魔王を倒せとか言われて転生した勇者っぽいなにかなんです。たぶん」
「たぶんってなんじゃたぶんって」
「まぁ、そこらへん私にもよく分かってないです」
そもそもアワシマ様の説明不足です。私のことを勇者だとか言ってましたけど、それを証明できるものが何一つ無いですし、今の私ただの可愛い幼女ですし。
「なんとゆーか、ちぃ子は今までにおらんタイプの勇者じゃのぅ」
「よく分からないんですけど、勇者ってどんな感じなんですかね?」
「もっとこう、英雄的というか正義感が強いとかそんな感じじゃろ?」
「そうなんですかぁ」
私、勇者って聞いたらもう○ラゴンクエストしか思い浮かびません。きっと日本人の勇者像は大体アレです。国民的RPGが人々に与えた影響は大きいです。
勇者だからタンス開けたりツボ壊しても良いんですかね?
「実は儂、勇者とは何度も敵対しとるのよ。じゃからあんまり良い印象は無いのぅ」
「え、そうなんですか? なんでそんなことに……」
「そりゃ儂の正体が【悪神】じゃからなー」
「なるほど悪神……ん、今さらりととんでもないこと言いました?」
「うむ。言ったのぅ」
「……え、えー!?」
「驚くのがワンテンポ遅いのぅちぃ子は」
どういうことですか!? サクちゃんが……悪神!?
「って、これから【悪神討伐】に行くんですよね!? なのにサクちゃんが悪神ってどういうことですか!?」
「まぁ驚くのも無理は無いがのぅ。そもそも儂にツノが生えてる時点で【悪】側の存在だとか疑ったことは無かったのかのぅ? これ、鬼のツノじゃぞ」
「え、可愛いからアリかなって思ってました」
「こやつ人のツノをアクセサリーかなんかと勘違いしとる?」
だって可愛いじゃないですか、ツノの幼女。そもそも私は鬼が悪だとか思ってないですし。鬼幼女可愛いじゃないですか。
それにツノっていうなら獣人さんも生えてる人いますし。まぁ獣人のツノと鬼のツノ、かなり見た目違うんですけどね。サクちゃんのツノ赤いですし。自然界に赤いツノ持ってる動物っていましたっけ? まぁいいや。
「……【八雷神】って知っとるかのぅ?」
「ヤクザイカスミの神……?」
「『やくさいかづちのかみ』じゃ。ヤクザでもイカスミでもないわい」
はて、どうも聞いたことが無いワードが出てきましたね? なんなんでしょう。
「【八雷神】というのは神の死体から生まれた八つの悪神のことじゃ。オオイカヅチも、儂もそうやって生まれた。つまり彼奴とは同胞、兄弟みたいなもんと言えるのぅ」
「え、じゃあサクちゃんの正体って……」
「儂の本当の名は『裂雷』。民衆の前で名乗っていた『ミカド』という名は、本当の名を隠す為の仮初めの名じゃ」
なんと!? サクちゃんの正体は……『サクイカヅチ』だったんですか!? だからサクちゃんって名乗ってたってことですか!?
いやまぁ、サクイカヅチってどんな悪神なのかいまいちピンと来ないんですけど。
「サクちゃんがまさか『サクイカヅチ』だったとは……! 思えば名前からヒントは出てたんですね……!」
「うむ。じゃから親しい者にしかサクと名乗っとらん。儂の正体に気付かれても困るしのぅ」
「いや、全然分かんないですよ! ヒント足りないです!」
「古事記や日本書紀に詳しかったら気付く者もおるんじゃけど」
「百歩譲って、『木花咲耶姫』でサクちゃんだと思いますよ! サクイカヅチってこう……あんまり聞き慣れないですし!」
「まぁそっちの方がネームバリューがでかいからのぅ」
「もしくは『天穂のサクナヒメ』でサクちゃんです!」
「そっちは知らんのぅ。有名なやつなんか?」
「あ、ゲームのキャラです」
「なんでゲームのキャラがこの世界におると思ったんじゃ?」
ほらアレです。乙女ゲー世界に転生とか? そういうのもよくあるじゃないですか。
面白いですよ、『天穂のサクナヒメ』は。義務教育で一度はやった方が良いです。神ゲーです。
「というか、サクちゃんって神の死体から生まれた悪神なんですよね? 私はこの世界に来てから『悪神は魔王が生み出した配下』みたいな感じで聞いてたんですけど」
「うむ、違いないのぅ。儂は配下のつもりは無いが、似たようなもんじゃろ」
えーとつまり、悪神は『神の死体から生まれた』と『魔王が生み出した』がどちらも真なら、サクちゃんの言ってる『神の死体』と『魔王』は同じ存在ってことですか?
そういう有名な神話をどこかで聞いた覚えがあるんですけど……
「あの、もしかしてこの世界の魔王の正体って……」
「おっと、ストップじゃ。思い当たってもその名は迂闊に言っちゃいかんぞ。神の名を言うとやつに聞かれる可能性があるからのぅ」
私が魔王の正体を言おうとすると、サクちゃんから制止を食らいました。え、なんですかそれ。『名前を言ってはいけないあの人』か何かですか?
「……お主も多少は神話を知っとるようじゃのう。儂の名前を知らんかったくせに」
「あ、それなりにオタクなので」
まぁ、創作に頻出してくるメジャーな神様の名前くらいは一通り知ってます。アマテラスとかスサノオとか。それだけじゃなくて、父は神社仏閣巡りが趣味なのでちょっとマイナーどころの神様の名前も知ってます。
サクイカヅチの名前を知らなかったのはあれです。ゲームとか漫画で見たことないですから……というか神社とかも知らないですし……
「お主が思いついた魔王の正体……まぁ、その予想はおそらく当たっとるが、口に出さず大人しく胸にしまっとくがいいぞ。この世界でその名を口にするとどんな目に遭うかわからん」
「そ、そうだったんですか……いや、あまりに有名な日本の神様なので既に口にしてしまったかもしれませんが」
「おしまいじゃのう。お主、もう目をつけられとるぞ」
「ひええええ……」
か、過去の私うかつに口に出してませんよね!? 大丈夫ですよね!?
「というわけで、じゃ。儂が魔王配下の【悪神】だと判明した今、【勇者】であるちぃ子はどうするんかのぅ?」
「えっと、どうするって……とりあえず撫でてもいいですか?」
「いや、なんでじゃ」
「そのツノ触ってみたかったので……」
「ちぃ子はそういうやつじゃったのぅ」
というわけで、勇者として悪神のサクちゃんを撫で撫での刑に処します!
なでなで~。幼女のツノがつやつや~♪
「というか儂、何の許可も出しとらんのじゃけど……」
「あ、なんとなく流れで許可されたと思ってました。撫でていいですか?」
「マイペースすぎるのぅ。儂、悪神なんじゃけど。お主らの敵かもしれんのじゃけど」
「サクちゃんは友達なので敵じゃないですよ?」
「お主をこの世界に呼んだ神からは何か言われんかったのか?」
「『魔王を倒せ』とは言われた気がしますが、悪神が含まれるとは聞いてないので多分おっけーです」
まぁ、アワシマ様は説明不足ですからね。仕方ないので勝手に解釈します。
「そもそもなんで悪神であるサクちゃんがこんなに可愛い幼女なんですか?」
「まぁ色々あってのぅ。実は昔の儂は他の悪神と大差ない悪いことばかりする荒ぶる神じゃったんじゃ」
そうだったんですか。サクちゃんが悪い子なんて想像も出来ませんねぇ。
「それで悪神時代の儂は当時の勇者に殺されかけてのぅ。消滅する間際のところで、そこらで死にかけてる人間の幼子に取り憑いた。そんでなんかそのまま定着してしもうた……それが今の儂じゃ」
「え、それじゃサクちゃんは悪神でありながら人間でもあるんですか?」
「そこらはよう分からん。儂の意識は悪神なのか人間の幼子なのか。まぁとにかく取り憑く前とは全然違う性格じゃし、今の儂がおるのは……まぁ言うてみれば偶然じゃな」
「不思議なこともあるもんですねぇ」
「儂の生誕秘話をめっちゃ雑な感想で締め括られとる」
「あ、勘違いしないでくださいね。そういうエピソード、大好物ですので!」
「そうなんか?」
「良いですよね……幼女に取り憑いてる悪い神様。そして温和になっていく悪役。なかなか好きなシチュエーションです」
「まじでちぃ子、勇者失格じゃろ」
あ、私もそう思います。今更ですけど何で私が選ばれたんですかね?
サクちゃんはすっくと立ち上がります。どことなく晴れ晴れとした顔で。
「なんか知らんけど、ちぃ子を見とると儂の抱えとる事情が大したことなく思えてきたわい。実はこの告白でちょっと裏切りを覚悟しとったんじゃけど!」
「え、私サクちゃんを裏切る気全然ないですよ?」
「うむ。99%知っとったわい。ただ、ちょっとだけ不安じゃっただけじゃ。まぁその気分も吹っ飛んだがのぅ!」
「それは良かったです!」
サクちゃんが私に手を伸ばします。私はその手を握りしめました。
「儂らは【勇者】と【悪神】じゃが……ずっと友達でいてくれるかのぅ?」
「もちろん、私達はズッ友です!!」
紅葉がはらりと舞い散る中、私達は手を取り合い笑いあいました。
サクちゃんがどんな存在だとしても、私達は友達ですよ!
【名もなき少女の石碑】
ハルテンの首都オウカを一望できる低山の一角に小さな石碑が佇んでいる。そこに辿り着く為には道なき道を歩く必要があるだろう。
誰が何の為にこんな場所に建てたのかは歴史で語られることはない。
はるか昔に悪神の犠牲となった、ただ一人の少女の為の石碑である。




