Lo106.サクちゃんと二人きりで紅葉の山をお散歩。つまりデートですね!
決戦まであと1日になりました。
つまり明日には悪神討伐に行かなければなりません。
とはいっても、差し当たり何もすること無いんですよねー……
必要な食べ物とかは用意してくれるそうですし、武器防具もそのままで行きますし。
ついでに完全休養日なので修行とかも全部お休みです。
つまりアレです。暇ですね。そんなわけでまた引きこもって絵を描いてます。
そんな通常運転をしていると、隣にぽてんとツノの生えた幼女が座ってきました。
「決戦前日で緊張しとるかと思ったが、ちぃ子は余裕じゃのぅ」
「まぁ、することないですからねぇ」
「いや、あるじゃろ普通は……まぁええか。暇ならちょっと儂と散歩でもせんか?」
「……え、それってデートですか?」
「うむ? ただの散歩じゃけど……まぁええかどっちでも」
なんと、幼女からデートのお誘いです! ついに私にも春が来ましたか!?
いやまぁ、ただの散歩なんですけどね!
そんなわけで私達は首都の中にある低山を散歩しています。標高300mほど。地元のお年寄りもウォーキング気分で登れそうな低山です。
「うわぁ、綺麗ですねぇ」
「うむ、晩秋じゃからな。山が色づいてて綺麗じゃろう」
今私達が歩いているのはモミジが綺麗に紅葉している山道です。こちらの世界でも紅葉を愛でる慣習があるのか、ちらほら地元の人やら観光客っぽい人たちがいます。
来てるのが日本人じゃなくて、カラフルな髪の異世界人だったり獣人だったりするのが異世界って感じですけど。
「ここらは春には桜も咲くからのぅ。それも綺麗なんじゃ。一度見せてやりたいのぅ」
「おお、桜も咲くんですね! すごいです!」
この世界でも桜はソメイヨシノさんなんでしょうか? それとも山桜? 春になったら見てみたいですねぇ。そうしてのんびり歩いてますが、サクちゃんの歩くテンポは割と早めです。
少し遅れ気味に付いていってると、気を遣ったのかサクちゃんが手を繋いできました。うわぁ、ようじょのおててやわらかかかかか
おててを繋いで散歩とか本格的にデートじゃないですか?
「むぅ、ちぃと周りからじろじろ見られとって落ち着かんのぅ。もうちょっと奥の方へ行くか」
「え、見られてたんですか?」
「ちぃ子はそういうの全然気にしとらんところが豪胆じゃのう」
えーと、それって褒められてるんですかね?
どうやら気付かなかったんですが、私達注目されてたみたいです。私はサクちゃんのおててに夢中でした。
「まぁ確かに可愛い幼女2人が連れ添って歩いてると見ちゃいますよね? 仕方ないです」
「うむ、そういうことじゃないんじゃけど……いや、そういうことかもしれんのぅ? 儂ら可愛いからのぅ!」
「はい、かわいいです!」
やはり可愛いは罪なのでしょうか。可愛い罪でしょっぴかれちゃいますね。大変なものを盗んでいった窃盗罪で無期懲役です。
そんなわけで、サクちゃんに付いていってよく分からない山道を歩きました。
途中道が無くなってて崖みたいなところがあったんですけど気のせいですかね? そこらへんはおんぶしてもらって乗り越えましたけど。
これ、たぶん一人じゃ帰れないですね……サクちゃんとはぐれないようにしましょう。
「うむ、着いたぞ」
「ふわー! 良い景色!」
よく分からない道を抜けて出たのは、首都が一望できる開けた場所でした。流石にここまで来ると人気は全く無く、私達だけです。まぁ、崖もありましたし小さい身体で藪の中を無理矢理突っ切ってきましたしね。
私は首都オウカを見下ろします。こうしてみると、和風と洋風が入り交じったオリエンタルな雰囲気の港町ですねぇ。
大正時代と中世ヨーロッパが混じったかのような街並みで、道路は石畳。広い道路に馬車も行き交ってます。一周歩くだけで1日が終わりそうな広さですね。
「ええ街じゃろ、ここ」
「はい! 賑やかで良い感じです!」
「ここまでなるのに時間がかかったからのぅ……」
遠いところを見るような目でしみじみと呟くサクちゃん。幼女にしか見えない彼女ですけど、色々と思うところがあるのでしょう。長く生きてるっぽいですからね。
ふと、後ろを振り向くと苔むした古い石碑がたたずんでいました。うーむ、何か書いてた形跡があるんですけど、長年風雨にさらされてたのか文字が全然読めません。
ふぅむ、わざわざこんな場所に……意味深です。
「こんな人が通らないところに石碑が……何の石碑ですかね」
「ん? わからん」
「え、知らないんですかサクちゃん。わざわざここに連れてきたからには知ってるかと思ってましたが……」
「マジでしらん。ここ景色がええから連れてきただけじゃし。というかそういうのそこらじゅうにあるじゃろ? 気にしたことなかったのぅ」
あ、そこらじゅうにあるんですか。よく考えたら日本でもよく分からないところに地蔵やら祠やらありますね。そういうものかもしれません。
とりあえず拝んでおきましょう。よく分からないんですけど。
「ちぃ子ってなんかそういうとこめっちゃ典型的な日本人じゃのう。よくわからんところをとりあえず拝むところとか」
「そりゃまぁ日本人ですからねぇ」
「……のぅちぃ子や。ちっとは隠す気ないんかのぅ?」
「ん?」
「いや、今日本人って言ったじゃろ」
……あ、今自然に『日本人です』って言っちゃいましたね?
いや、サクちゃんが普通に日本人とかいうワード出してくるからノッちゃったんですよ?
……あれ? そういえば私ってサクちゃんに日本人だってことを明かしてたんでしたっけ? してたよーなしてなかったよーな……
「……もしかして、サクちゃんには言ってなかったですかね?」
「言っとらん言っとらん」
「あ、じゃあこの際言っておきますけど……実は私、日本人なんです!」
「いや。それはさっき言ったじゃろ。じゃが……獣人幼女の日本人は初めて見たのぅ?」
「まぁ……そこは色々ありましたので!」
「説明が色々と雑じゃのぅ」
だって、この姿が私の創作したオリキャラって言うの地味に恥ずかしいんですもん。本物は黒髪モブ眼鏡ですからね、私。
「というか、サクちゃんって当たり前のように日本のことを知ってるんですね。もしかして私と同じ日本からの転生者だったり……?」
「残念じゃが違うのぅ。儂はこの世界で生まれた。日本のことなんか話の中でしか聞いたことがないわい」
「あ、そうでしたかぁ。転生者じゃなかったんですね」
うむぅ、サクちゃんは日本のことを知ってるし元日本人かと思いましたがどうやら違ったようです。日本のことを知ってるのは、他の転生者さんに聞いたからでしょうか?
「……のぅちぃ子。儂のことをどう思っとる?」
「どう思ってるって……? 可愛いですね?」
「うむ、可愛いじゃろ! ……じゃなくてのぅ。儂の正体のこととか気にならんか?ってことじゃ」
うーん、唐突にそんなこと聞かれても……
「よく分かんないんですけど、正体も何もサクちゃんはサクちゃんじゃないですか?」
「……うむ、そうじゃな。お主は儂が神帝だと知った後も態度が1ミリも変わらんかったしのぅ」
「え、態度変えなくてマズかったですかね? 不敬罪になりますか私?」
「それを堂々と儂の前で言っとる時点で良い度胸しとるというかなんというか」
むぅ、良い度胸ですか。言っておきますが、今の私は幼女になってメンタル無敵になってるだけで、日本にいた私だったら多分こんな態度を取らないですけどね?
たぶん偉い人にはめっちゃへりくだります。社会性のある大人だったら当然そうしますよ。まぁ幼女の私にその理屈は通用しませんけど。
身体が幼女になったことで精神まで幼女化してますか? いいえ、残念ながらこれが私の本性です。大人というガワを脱ぎ捨てた、中身が幼女の私は大体こんな感じです! 顔の見えないSNSとかでもこういうキャラでした!
「まぁ、そういうお主だから友達になったところはあるのぅ」
「はい! サクちゃんは私の友達です!」
「……思えばこの長い人生で、『友』と呼べる存在はそんなに多くなかったのぅ」
「え、そうなんですか?」
「うむ。こう見えてめっちゃ友達少ないんじゃ儂」
「サクちゃんって気さくだしコミュ力あるし、もっと友達多いと思ってました」
「こう見えて儂、結構人間不信なんじゃ。命狙われたりしょっちゅうしとったし。ぶっちゃけこうやって堂々と街中を歩けるのもつい最近じゃし……ひぃ子の時代になってからじゃのぅ」
「うわぁ、なんでまた……」
「あー、儂の血を飲めば不老不死になるだの、神になれるだの色々と言われとってのぅ。他にも潰した国や組織の復讐とかそんな感じの手合いが多くてのぅ。儂、敵を作りすぎたんじゃ」
「大変だったんですねぇ……」
サクちゃん、色々と大変な人生を送っていた模様。
「それに歴代神帝も好戦的なやつが多くてのぅ。二代目は儂が邪魔だから消そうとしたし、四代目は永遠の命欲しさに儂の心臓を食おうとしたし、八代目とか儂に首輪つけて都合のいい戦力にしようとしとったぞ」
「え、神帝ってサクちゃんの実の血縁ですよね!?」
「うむ、そうなんじゃ……」
サクちゃん、身内にも狙われていた模様。
「……儂の血が悪いんかのぅ? ぶっちゃけひぃ子が突然変異なくらい良い子なんじゃ。モチもちょっと片鱗見えるし……」
「ひーちゃんって神帝の中でもめっちゃ良い人だったんですね……」
たしかにひーちゃんは偉い人なのにめちゃくちゃ物腰柔らかくて良い人に見えます。
うーむ、歴代神帝ってみんなあんな感じの良い人ばかりだと思ってましたけど、ひーちゃんが例外だったのか……
「ひぃ子が九代目神帝についてから国も安定したし、儂もあの屋敷に堂々とおれるようになったしのぅ。まじでひぃ子は良い子じゃから、ちぃ子にはこれからも友達でいてくれると嬉しいのぅ」
「あ、はい。それはもちろん!」
「モチは……ちょっとアレなところもあるが、あれでも歴代の中じゃ圧倒的にマシな部類じゃし努力家じゃから、そっちもよろしく頼むのぅ」
「……モチさんも良い子ですよ?」
「そうかのぅ……??」
「そうですよ! たぶん!」
根拠なく言い切ります。まぁ実際モチさん、修行パートで結構細かい指導してくれましたし。
……あ、修行パート無かったですか? すみません、色々と時間がすっ飛びましたから描写されてません。ほら、修行パートが長引くと人気が下がるって言いますし(メタ発言)
少なくとも私に対してはめちゃくちゃ慕ってくるし良い子なんですよ、モチさん。母親に対してアレなだけで……あれもマザコンの一種なんですかね? 実の母をヌードモデルにするって。まぁ、えっちな要求もホイホイ聞いちゃうひーちゃんも悪いんじゃないかな……?
「なんか孫らとも仲良くしてくれて嬉しいのぅ。ちぃ子は本当に良い子じゃのぅ」
「だって友達ですからね」
「ちぃ子が当代の勇者とはとても思えんのぅ……」
「そうですねぇ。私自身はそんなに勇者という自覚ないんですけどねぇ」
「……ちぃ子、まーた儂のカマかけに引っかかっとる」
「……はて?」
……あれ? 私が神様から勇者とか言われてること、サクちゃんに言ってましたっけ?
100話くらい続いてて私も記憶がおぼろげになっていますが、まだちーちゃんはサクちゃんには勇者であることや日本人であることをカミングアウトしてなかったはずです!(うろ覚え
……もしかしたらしてたかもしれませんね。私の記憶力はちーちゃんと連動しています。ちーちゃんが忘れてることは私も忘れかけてるのです……




