Lo104.ココッテちゃんのガチギレポイント
冒険者ギルド内で暴行事件が起きてました。下手人はココッテちゃんです。
「なんかココッテちゃんが冒険者の人達をボコってる感じの光景が見えますね」
「うん、そうだね」
「何があったんでしょう?」
「何が起こったのか分かんないけど、ココッテちゃんめちゃくちゃ怒ってることは分かる」
「そうなんですか?」
ココッテちゃんは無表情でギリギリと腕を締め上げてます。技を掛けられた冒険者さんは血と涙を流しながら悲鳴を上げてます。
「あ、あぎゃああああ!? だ、だれかこのガキを止めてくれええええ!!!」
「僕達がなにやったってんだよおおおおお!?」
「お、折れるうううううう!!」
情け容赦なく次々と暴行を働くココッテちゃん。うわー。酷い光景です。大の大人が幼女にボコられて泣き叫んでます。
「止めた方が良いんですかね?」
「んー、ココッテちゃんがあんなに怒るってよっぽどだからなぁ」
「じゃあ止めない方が良いですね。ココッテちゃんを怒らせた方が悪いんです!」
「チーちゃんってそういうとこあるよね」
まぁ、ココッテちゃんが無意味に暴れるとは思えませんし。
……いや、普段から割と暴君ですね? これわかんないですね。
「おいおい、Bランク冒険者が幼女にボコられてんぞ」
「誰か止めねぇのかよ……」
「さっき止めようとしたやつが一瞬でぶっ倒れたの見てねぇのか。同じ目に遭うだけだって」
「むしろ幼女にボコられてる方が悪くね?」
「見ろよあの底冷えする氷のような目。おっかねぇロリだぜ……」
「でも可愛い……」
なんか皆怖がって近寄らないみたいです。状況が把握できずにいると、ギルドの奥から鋭い目つきをした狼獣人の女性が出てきました。
あ、ウェダインさんです。今日は知り合いによく遭う日だなー。
「ちっ、めんどくさい騒ぎ起こしやがって……」
「ギ、ギル専の冒険者か!? おいこいつを止めてくれ! 俺たち何もしてないのにひでぇことを……ぐぇっ!?」
ウェダインさんは止めるどころかイラついたようにその冒険者を蹴飛ばしました。
「うっせーよ。てめーらが児童誘拐に関わってんのは知ってんだよドブカス。
こんなときに仕事増やすんじゃねーよクソボケ」
ウェダインさんからは口汚く罵る声が出ました。なんかこっちもめっちゃ怒ってます!?
というか児童誘拐したんですか!? 許せませんねこいつら。
それに対して周りの冒険者さん達が声を上げます。
「児童誘拐? 何かの間違いでしょ!」
「【ユニコーンテイルズ】は被災地でボランティアもやってる優良冒険者よ!」
「いや、俺は胡散臭いと思ってたぜ。善人面してたけどやってんだろ」
「よく分かんないけど、私は幼女に味方する。なぜなら可愛いから」
うーん、冒険者の間では賛否両論。でもまぁ、私としてはウェダインさんとココッテちゃんの方に味方します。
ウェダインさんの後ろから屈強な男の人が複数人出てきました。ウェダインさんはマッチョさん達に言います。
「おい、こいつら連れていけ。奥でたっぷり尋問しろ」
「「「「イエッサー!」」」」
まるで軍隊のような動きでマッチョさん達がボコボコにされてる冒険者さん達を連れていきます。周りの人もポカーンと見てました。
ウェダインさんがこちらに気付いたのか、つかつかと歩いてきました。
「お前らもいたのか……来い。話は中でする」
そう言ってウェダインさんは両脇に私達をひょいと抱えて、そのまま奥に進んでいきました。
あーれー、さらわれるー!
ギルド内の応接室に連れてこられた私、ユーくん、ココッテちゃんの3人。さて、一体何が起こってたのでしょう。
「あのー、何が起こったんですかね……」
「知らねぇのかよ。まぁいいか。簡単に言うと児童誘拐が発生したんだぜ。被害者はココッテ」
「ええっ!? ココッテちゃん誘拐されたんですか!? 早く探しに行かないと!!」
「ん」
「あ、ココッテちゃんいました! 無事です!!」
「寸劇やってんじゃねーぜ」
ぽかりと叩かれちゃいました。しかし話が見えません。どうしてそうなったんですか?
ウェダインさんはゆっくり息を吐くと、経緯を語りだしました。
「難民問題って知ってるか?」
「……難しい話ですか?」
「難しくねーよ。魔王が復活してから、既に2つの大国が滅びた。小国はもっと滅びてる。国を失ったやつらがこの国にも難民として流れてきてるっつー問題だぜ」
「魔王が復活してそんなことが……」
魔王が復活した影響はそんなところまで出てたんですね……
「でもそれが今回の件とどう関係が?」
「難民っつーのは立場が弱いもんだ。ハルテンでもなるべく支援してるが、どうしてもその中で路頭に迷っちまうやつもいる。そんな混乱の中で、難民のガキの一人や二人消えても誰も気付かねぇだろ」
「えっと、それってどういうこと?」
「混乱に乗じて立場の弱い難民を狙う悪いやつらがいるんだよ。それもガキばかりが狙われてる」
「むぅ」
子供ばかりを狙って誘拐!? そんな悪いやつらがいたんですか!? 許せませんね……
「その犯人があのボコられてた4人の冒険者というわけですか?」
「あいつらは実行犯だが、ガキを拐うやつがいればそいつらを商品として捌くやつがいるだろ。つまり組織的な犯行だぜ。まぁ、バックについてる組織は見当がついてんだがな……」
「そうなの? じゃあ全部捕まえればいいじゃん」
「バックにいるのは【血塗れの狂演劇】と呼ばれている世界的な巨大犯罪組織だ」
「ブラッディサーカス……」
ブラッディサーカス……無駄にかっこいい名前ですね。許せません。
「略してブラサー、いや【ブラカス】ですね。子どもを誘拐するとかカスの集まりです!」
「カスの集まりか。良い呼び方するじゃねーか。まぁ実際カスだぜ。百害あって一利もねぇ」
「じゃあ滅ぼしましょう!」
「世界的な組織つったろ。ここで滅ぼしても別の国でしぶとく生きてる。実際、この国では根絶されたと思ってたんだが、世の中が荒れだしてまた活動しはじめた」
「ゴキブリ並のしぶとさですね」
「チーちゃん、いつになく過激発言だね」
だって許せませんよ! 子どもを食い物にする組織なんて!!
「それでココッテちゃんは何で関わったんですか?」
「ココッテは何にもしてなけりゃ普通のガキに見えるからな。裏路地をぶらぶら歩いてるところを【ユニコーンテイルズ】に声を掛けられて連れていかれたんだ。そこをギル専(=ギルド専属の冒険者のこと)の捜査員が目撃した」
「え、捜査員いたの? なんでその人はココッテちゃんが連れていかれるのをみすみす見てたの?」
「相手はB級冒険者だ。そこらのやつが勝てるわけねぇだろ。それでそいつはギルドに応援を頼んだあと尾行を続行してたんだが……」
「してたんだが……?」
「やつらのアジトでココッテが暴れて、アタシらが来たときには全部終わってたってこった」
「あー……」
なるほど、そういう経緯でしたかー……
「え、つまりココッテちゃん1人でBランク冒険者4人をボコったってことですか?」
「そこは別に驚くところじゃねえだろ」
「ココッテちゃんだし」
あ、2人にとっては当然の結果だったんですね。むぅ、私の認識が甘かったようです。思ってるより大分強いんですねココッテちゃん。
まぁこう見えてもユーくんより4歳年上の大人ですしね。頼もしい幼女です。
「むー……」
「ココッテちゃん、まだ怒ってるね」
「そんなに誘拐されたのがムカついたのか?」
「……ねぇ、ウェダインさん。その現場に他に誘拐された子どもはいた?」
「……いたぜ。クソ胸くそ悪い光景だったぜ」
「あー、合点がいった。そういうことかぁ……それならココッテちゃんが怒るのも仕方ないね」
えっと、どういうことでしょうか?
「あのねチーちゃん。ココッテちゃんはあれでも子どもには優しいんだよ。そして一番怒るのも子ども関連」
「そうなんですか?」
「村の子どもが迷子になったら本気で探すし、子どもが大人に殴られでもしたら大人だろうがボコボコにする。ココッテちゃんはそういう子なんだ」
そうだったんですか。心優しい面もあったんですね……ちょっとバイオレンスですけど。
「なるほど、だからココッテちゃんは子どもの私にも優しいんですね……」
「チーちゃん、それ本気で言ってる? むしろチーちゃんは例外で一番ぞんざいな扱い受けてるよ?」
あ、やっぱりそうでしたか? やっぱ中身の年齢28歳ってのがアウト判定食らってるんですかねー?
「しかしBランク冒険者が絡んでるとは……世間的には一流の冒険者ですよね? 強いし依頼とかもバンバン来るだろうし、悪事をする動機が分からないですが……」
「まともな感性ならそうだろうな。実際あいつらは被災地でボランティアもやってた善良な冒険者だぜ。世間的にはな」
「そうだったんですか。なら何で……」
「だがそれはゲスな性癖を隠す為のカムフラージュだったんだよ。犯罪組織に加担することで、あいつらも旨味があったんだぜ。世間様には出せないゲスな行為だがな……」
「もしかして……子どもに酷いことをしてた……とかですか?」
「……まぁな」
ウェダインさんは大分オブラートに包みましたが、どうやら胸糞悪くなる行為が行われてたようです。
想像はできますが……許せませんね。子どもに酷いことをするのは、絶対に許せません。
「……あー、決戦が近いってのに胸糞悪い事件に巻き込んですまねぇぜ。あとココッテ。ありがとな。お前が怒ってくれて、アタシもちょっとスッとした」
「むぅ……」
「まだ怒り足りないか。まぁ後始末はこっちに任せとけ。少なくともこの国からは根こそぎ根絶してやるよ」
ウェダインさんはそう言いました。この人、ぶっきらぼうですけど本当に良い人ですね。
「【血染めの狂演劇】はアタシにとっても因縁のある相手だ。いつか全世界からも根絶してやりたいが……ま、今は悪神との戦いに集中しなきゃな。
あ、そうだ。ココッテはこの功績でDランクあたりに昇格すると思うぜ。まぁギルマスに経緯を説明する必要があるが」
「え、ココッテちゃん昇格するんですかヤッター」
今まで1人だけGランクだったココッテちゃんも晴れてDランクになり、私達とお揃いになりました。
「むー」
「あ、あれ? 不満そう? お揃いなのに……」
「なんか『最強のGランク』の方がかっこよかったからランク上がってほしくなかったっぽいね」
「いや、ただのランク詐欺じゃねーか。こっちとしても扱いに困るから大人しく昇格しとけ」
そんなわけで、後日ココッテちゃんはDランク冒険者に昇格したのでした。
冒険者チーム【ユニコーンテイルズ】。
チーム名の『ユニコーン』部分に彼らの性癖が詰まってます。
ちなみに本人たちは悪事を働いている意識はあんまりない。難民の子どもってのが免罪符になってるようです。まぁここらへんのゲスの心理描写まで詳しく書く気ありませんが




