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プロローグ

配信モノです。流行りに乗っていくスタイル(遅)

【柚子缶】火炎トカゲの炎を正面から防ぎつつ討伐する

 


 ゴウッ! という音と共に炎が迫る。


「『障壁』!」

「『広域化』!」


 ユズキとカンナの声が重なると、2人の前に目に見えない盾が現れ炎を遮る。


― きた!

― 火炎トカゲの炎を防ぐとかヤベェ

― [¥ 1,000:蛸足] 今日もコンビネーションが見れて嬉しい

― 油断するな!


 配信ではコメントが一斉に流れはじめるが、流石に2人にそれを確認する余裕は無い。炎が止まると、ユズキは剣を構えた。


「自己強化して突っ込むわ!」


「うん! 『広域化』!


 カンナの『広域化』によって、ユズキの右手の光が全身に広がる。光はさらに彼女の持つ剣の刀身まで伸びた。


 ユズキはダッと駆け出すと、火炎トカゲに迫る。高さ1mほど、体長は10mにも及ぶ巨大な火炎トカゲの懐に飛び込むと目にも止まらない速さで剣を振るう。


 ビチャ! 火炎トカゲから離れて居たはずのカンナの足元に長い舌が飛んできた。火炎トカゲは高速で迫るユズキでは無く、後方で留まっていたカンナにその長い舌を伸ばし絡め取ろうとしていたのだ。その伸び切った舌をユズキが冷静に斬り落とした結果であった。


「ひっ!」


 思わず情けない声を上げるカンナ。


― 危なっ

― 火炎トカゲの舌は後ろに居ても安心できない

― カンナちゃん、大丈夫?

― さすがユズキ、冷静に舌を斬った

― 火炎トカゲの舌って素材になるよ


 舌を斬られた火炎トカゲは自身の身に起きた事態を飲み込めず、一瞬動きが硬直する。その隙にユズキは地面を強く蹴り、高く飛び上がった。カンナは慌ててカメラをユズキに向ける。最近買い替えたカメラは高いだけあってしっかりと手ブレを補正してくれた。


 空中で舞うように一回転したユズキはそのまま剣を火炎トカゲの首に振り下ろす。ストン、と綺麗な音を立てて地面に着地すると、一瞬遅れて火炎トカゲの首が胴体と泣き別れた。


― やった

― きまった

― すごい

― [¥ 1,000:ネズミ小僧] 討伐祝い

― やった


 ふぅ、と息を吐いたユズキが周りに警戒をしつつカンナの方に戻ってくる。戦いの前に他の個体やモンスターが居ないのは確認済みだが、念には念を入れる。無事にカンナのところに戻ってくると少しだけ表情を緩めてカメラに話しかける。


「火炎トカゲ、無事討伐できました! これから魔石の取り出しをしたいと思いますが、その前に少しだけコメント読みますね。

 あ! 蛸足さん、投げ銭ありがとうございます!「今日もコンビネーションが見れて嬉しい」、はい、バッチリ決まりました!絶好調です!

 他にはえっと……え、火炎トカゲの舌って素材なるの? カンナ知ってた?」


「し、知らなかった。じゃあ持ち帰った方がいいかな?」


― 持ち帰るべき

― その長さなら5万円ぐらい

― 三万円

― 引きずって傷付けると値段落ちるから気をつけて


 コメントがアドバイスをくれる。


「みんなありがとう。じゃあ頑張って持ち帰ろうかな。グルグルに丸めても平気かな? ……それは大丈夫なんだ。ありがとう、了解です!

 ……あ、もう一個投げ銭きてる。ネズミ小僧さん、今日も討伐記念ありがとうございます! 帰りにカンナとカフェラテ飲んで行くね」


 コメント読みを切り上げるとユズキは火炎トカゲの胴体の方へ向かう。心臓付近にある魔石を取り出すためだ。カンナは周囲に気を配りつつ、ユズキをカメラに収める。


 魔石を取り出した2人は改めてカメラに向き合う。


「今日は「火炎トカゲを討伐してみる」の配信でした!」


「み、見てくれたみなさん、ありがとう。またよろしくね」


― 今日も楽しかった

― てぇてぇ

― てぇてぇでした!

― おつてぇてぇ!


 配信を切ると、ユズキはグッと伸びをする。


「じゃあ帰りましょう。私達は地上に着くまでがお仕事だから」


「うん。舌は私が持つよ」


「本当?じゃあ魔石は私が持つね」


 ユズキの自己強化を『広域化』すると、その淡い光はカンナにまで広がった。2人は強化された体で軽快に地上を目指す。自己強化によってまるで身体が羽根になったかのように軽く、さらにジェットエンジンを搭載されたかのように力が湧き出してくる。あまりの出力に最初はまともに歩くことすら出来なかったカンナだが、最近は自然に身体を動かせるようになっている。


 カンナは猛スピードで走るユズキに着いていきながらも慣れってすごいよなあと思いつつ、こんな風に大物の討伐を配信するようになるなんて、数ヶ月前には思っても居なかったなと、改めてユズキとの出会いを振り返る余裕すらあった。

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