不思議な服屋さん
ここは何もないギリギリ地図に載ってるド田舎だ。
そんなコンビニもないド田舎にある服屋ができていた。
「なんで服屋なんか出来てんの〜!?コンビニでいいんだけど!」
店もパッと見そこまで大きくはなく、尚更コンビニの方がいいのではないかと思った。
「まぁ、暇だし散歩がてら入ってみるか...。」
中に入ると、カランカランと音がなり、店内も見た目通り小さく、コンビニのような広さで、客も私一人だけだった。定員さんもレジの人と、奥にもう1人で2人しかいなかった。けど品ぞろえはそこそこ良い。
「オシャレぇ...。」
服屋なんか2〜3年近く行ってなかった私は、どの服もとてもオシャレに見えた。
「あ!この服可愛い!このスカートも!」
試着室で着替えてみた。自分で言うのもなんだが、とても似合ってると思った。
もっと欲しい服はあったが、気に入った服とスカートをレジに持っていき、会計をした。
「お会計3080円です。」
4000円で支払い、店を後にした。家に帰り改めて着てみた。やはり似合ってる。
私は思いついた。
「この服で都会に行ったらモテモテかも...!」
妄想の激しい私は次の日都会に行くことにした。
「似合っとるねぇ。」
いつも挨拶するおじいさんがそう言ってくれた。
その後慣れない電車に乗り、都会に近づくにつれ人も増えて気づけば毎員電車になった。
暑苦しい中を耐え2時間後、都会に着いた。
やはり、人も多く何度も方がぶつかる
予定も立てずに来た私は、ただ何も考えずに歩いた
気の所為かもしれないけど、男の人達の視線も私に向いていた気がする。
「あ、このお店テレビであったのだ!」
さすが都会、知ってるお店が沢山あり、もちろん服屋もある。
「少し寄ってみよ〜。」
地元の服屋とは雰囲気も規模も段違いだった。
けど、なんか違った。不思議と地元の服屋の方がもっといい気がした。
「なんか、違うな...。」
そう言いつつ、服を1着だけ買った。
その後も何件か服屋に寄ったが、やはり何か違った。
家に帰りその服を着てみるもやはり何か違う気がした
「やっぱりなんか違う...。」
次の日またあの小さな服屋に行った。
何度見てもオシャレな服が多く、都会の服屋に比べたらこっちの方がいいとまで思った。
また服とスカートを買い、家で改めて着た。
「やっぱり似合ってるなぁ。」
次の日、都会で買った服を来て昨日と同じ場所へ出かけた。
昨日に比べたら全く視線は集まらなく、来て損した気分だった。
「もしかして、オシャレな服の方が皆私を見てくれるのかな...?」
こんな田舎で育ち、友達もいない彼氏もいない私は、人に好かれたいためにあの場所で服を頻繁に買うようになった。
「この組み合わせはダサいかな〜、ならこっちは?お!意外と似合う!」
こんな生活が続いた
とある日、自分の気に入った服で出かけ同じ道を歩いた。
だが、誰も注目はしなかった。
「この服ダサかったかな〜。次は気をつけよ」
その日はすぐ家に帰り、自分の似合うと思うコーデを探した。
そして次の日も、あの服屋で服を買った。
また都会に行くも視線は集まらず何がダメなのか疑問に思い、次第に怒りに変わっていった。
(どうして、こんなにお金をかけてるのに誰も私を見てくれないの!?どこがだめなの!?誰か教えてよ!!)
そんなことを心の中で思いながら家に帰った。そしてまた、服屋で服を買う。
カランカランと、鈴がまた鳴った。
「これと、これとこれ!あとこれも!」
また都会に行っても同じ反応をされ、どうしたら自分を見てもらえるか、どんな服を着たら私を見てもらえるか、昨日ように怒りが込み上げてくる。
「見てあの人、なんかずっとキョロキョロしてない...?」
「ほんとだ怖い」
「あれ、あの人ってこれじゃね?w」
「ほんとだw最近話題になってる人じゃんw」
そんな言葉が耳に入り、私は深く絶望し我に戻った。
「何、やってんだろう私...。」
家に帰り鏡を見ると、私は絶句した。
こんな格好で外を歩いたと考えると、空いた口が塞がらなかった。
友達や彼氏が欲しかっただけなのに、自分から遠ざけるようなことをしていたと自覚した瞬間、後悔の気持ちで涙が止まらなかった。
目の前にはたくさんの服が飛び散っていて、人付き合いを増やそうとする気力も失せた私はあることを思いついた。
気付いたら線路の上に立っていて、私は奥へと身を投げた。
今日もカランと店の鈴が鳴る。