清らかに 澱みなく
薄絹が澄んだ川を流れるように
柔らかな風に吹かれて空を舞う
きっと風の子ども達は
衣の袖をひらめかせるように
くるりくるりと空を駆け
女官のように笑うのだろう
子供たちの遊んだ後は
黄色や薄紫の絨毯が
波打つようにその身を揺らして
蜜を求める空飛ぶ子達に
こちらへおいでと手招きをする
あちらこちらへお呼ばれをしては
蜜と一緒にお手紙も受けて
可憐な花たちが出会えるようにと
一生懸命お手伝いしてる
助け合える命たち
強かなのか、思いやりなのか
それでも明確に支え合えるのは
どこか眩しく羨ましい
降り注ぐ光に寄り添いながら
水を湛えるだけの私は
多くに望まれながらも
誰と対話するわけでもない
それは時に温もりを隠し
それは時に慈しむ命ごと流し
けれど失われたからこそ芽生える命もあって
どこまでも独りで
どこまでも一人だから
全てを見つめていられることは
分かっていることだけど
愛しく私の名を呼ぶ子らよ
あなた達を羨む私を知れば
それでもその愛を向けてくれるだろうか
あなた達が思うほど
暖かくもなく優しくもない
浅ましいだけの私を知っても
それでもまだ……
今日は清明。
全てのものが清く明らかになっていくように、
澄み切った空と爽やかな風が吹き抜ける季節です。
花が咲き、虫や鳥達はその蜜を求めて澄んだ空の下を舞う。
散る花びら、飛ぶ綿毛。
世界が心躍るように、ふわりと舞うものが多い季節でもあります。
多くの生き物が過ごしやすいこの季節。
それらの生物がこの季節を「好んで」いるかどうかは分かりません。
多くの愛が育まれる季節
それをただ見守る「春」は、何を思うのでしょうか。
【登場人物紹介】
○春姫/秋姫
春姫であり、秋姫。
彼女自身は温度を操る力をは持ちません。
彼女はただ、世界に水を与えることが出来るだけです。
雪解けの水が正しく流れるよう、
世界を熱する力が訪れる前に、世界が潤うよう、
雨を降らせる事が出来る。
彼女自身が温もりを持たないために、
陽ざしの君の事も冬姫の事も、そして夏姫の事も、
冷静な立場で眺めることが出来ます。
彼らが皆、一様にして生命を慈しみたいと思いながら、
思い通りにいかないことを悩んでいることを知り、
彼女はただ、その心が乾かないように、
潤いを与えたい、そう願っています。