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【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第二部

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第19話 帰り着く場所

すみません、今回の更新分はちょっと短いです。。

「あの、どうやったらアスラン様とレイヴンを助けられますか?」


 聞きたいことを聞けと言われたので、とりあえず今一番知りたいことを真っ先に聞いてみた。


「あ、そこから聞くのか」


 なるほどなるほど、と神様がふんふんとうなづく。


「あの二人を助けるって言うことはー、うーんと、ああ、あの子か。甘言。あの子をなんとかしないといけないわけだ」

「はい……。あの、あの方は、【甘言】と言うのが本当の名前なんですか?」


 かねてから気になっていたことを尋ねる。

 ずっとエヴァンジェリン様と思ってきたけど、神様はさも当たり前のように甘言と呼ぶので、本当の名前はそっちなのかと思ったのだ。


「ああ、いや。違うよ。甘言て言うのは――二つ名だよ。本当の名前を隠すためのね」

「本当の名前を、隠す?」

「そう。名前っていうのは、存在や力を左右する大きな要因の一つでもあるんだ。そして、目印でもある。人間のサイクルで輪廻を繰り返しているだけならそんなに影響がないんだけど、神仙クラスになると、アーカーシャに名を刻まれる時間も長い。真の名前を明かすということは、名札をぶら下げて歩いているようなもので――」


 だんだん、わからない単語が増えて話がわかりにくくなってきた。

 わたしが、よくわからないという顔をしているのを見咎めたのだろう。

 神様が笑って「ごめんごめん、話が難しくなってしまったね」と、仕切り直ししてくれた。


「まあ、簡単に説明すると、甘言っていうのは、別にあの子の本名じゃないってこと」

「……名前を知られないというのは、わたしたち人間とは違って、淋しいことではないんですね」


 わたしがそういうと、神様が驚いたような顔をした。


「わたしたちは、誰にも自分の名前を知られない、誰にも自分の名前を呼ばれる事がないと、淋しいと思うものなので。そもそもの考え方が、神界の方々とは違うんだなって……」

「君は面白いことを言うんだねえ」


 取り繕うようにわたしが言葉を連ねると、神様はおもしろそうにニヤリと笑った。


「なるほど。名前を知られない、呼ばれないのが淋しい、ね。なるほどなるほど。確かにそうだね」

「……」


 そう言って神様がひとりうんうんとうなづく。


「それはもしかしたら、甘言に対するある種の切り札になりうるかもしれないね」

「え、それはどういう……?」

「まあ、あんまり詳しく説明し出すとフェアじゃないからね。ヒントはここまで。じゃ、そろそろ時間も時間だし行こうか」

「もうですか?」


 なんでも聞いていいと言うようなことを言った割には、時間がシビアすぎて結局聞きたいことはなに一つ聞けていないような気がする……!


「あの、最後にもう一つだけ。わたしを、あの過去の世界に飛ばしたのも、神様なんですか?」


 今にも出発しそうな体勢を取り出した神様に向かって、慌てて問いを投げかける。

 

「そんなこと聞いてどうするの?」

「あ、いえ、どうするとかもないんですけど……」


 単純に気になったのだ。

 今回わたしが、過去にとんだからこそわかった、見えていなかった事実や人の思いがたくさんあって。

 この度は、それを知るべく飛ばされたものだったのだろうかと、わたしが勝手にそう思ったからで。

 それが本当に合っているのかどうか、目の前の神様から答えが欲しくなったのだ。


「まあいいけど……。答えは、ノーだよ」

「ノー……?」


 つまりそれは、神様の所業ではないということで。


「本人は、単に逃すために必死でやったんだろうけどね。その先はもう、ある種の業なんじゃない? (ぼく)がどうこうとかじゃなく、知るべきだったんだよ。君は」

「え、それって、どういう……?」

「さあ。もう時間だエステル。僕は君を家に送り届ける。話の続きは、きっとまた会えたら、ね」


 そうして、みるみるあたりが光に包まれ、すぐ近くにいたはずの神様の姿も見えなくなってしまう。


「神様……、神様……?」


 呼びかけても、もう答えるものは存在しない。

 そうしてわたしは。

 あるべき場所へと帰ることになるのである。

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