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【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第二部

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第18話 わからないことばかりです

「怨嗟……?」

「そう。甘言がかけた呪いの延長だね。本来なら、僕の力で解く事ができないわけでもないけど、そうしないのは、君たち二人に対する罰だ」

「ど、どういうことですか……?」


 アース様が神様に問いただす。


「君たちを直接罰するのは簡単だけど、それだとすぐに忘れちゃうでしょ。だから、人間の君たちが一生かけても償いきれない罰を残す」

「そんな……!」

「ちなみに、この件は(レイ)もすでに了承済みだから」


 君たちとは別に、彼とは個別に話して決まっているから。と神様があっさり言う。

 え、いつの間にですか……⁉︎


「400年間、君たちの子孫が(レイ)を浄化し続けたら、彼を怨嗟から解放して聖獣に戻してあげるよ。400年後に、君たちに転生を許すのは、それの顛末を見届けさせるため」


 そう言って神様は、チラリとわたしの方を見た。


 うっ。

 まさに、わたしが、いま神様が仰った転生した後の人なのですけど……。

 わかっていてわたしに目線を送ったのだろうか。

 前世の自分がめちゃくちゃ怒られている横で目線を送られたものだから、なんとなく後ろめたさを感じてびくりと怯えてしまう……。


「その、転生と仰いましたが、そうすると転生した後、今我々が有している記憶というのは……」

「そんなもの、引き継がれるわけないでしょ。転生なんだから。しかも罰なんだから」

「じゃあ、どうやって見届けろと……」

「そんなのは今の君の考えることじゃないよ。今君たちが考えなければいけないのは、どうすればこの先400年も(レイ)を浄化し続けられるか、でしょ」

「それは、生まれてくる子供に浄化をさせれば……」

「浄化は聖女しかできないんだよ? 君たちの子供が絶対に聖女で生まれてくる保証はどこにあるの?」

「……」


 アース様が、神様からの追求に応えられず、沈黙する。

 確かに、神様の言うことはもっともで。

 未来を知っているわたしはその答えを知ってしまっているわけだけれど、いまここで問い詰められている二人からすると、この先400年という長い時間を、絶やすことなく浄化し続けるというのは、途方もない話に感じるだろうなと思った。


「あの……、レイの呪いを、私に移していただくことは出来ないのでしょうか」

「シエル……!」


 それまで、黙って神様とアース様の話を聞いていたエリシエル様が、神様に向かって静かに申し出てきた。

 

「レイは、悪くないんです。悪いのは、私なのに……。レイに……、こんな……」


 毅然とした態度を保ちながらも、その瞳からはすうっと一筋の涙が流れ落ちる。


「……。気持ちはわからなくもないけどね。はぁ〜、もう! どいつもこいつもさあ……! あのね! 君に呪いを移したら、そのお腹の中の子はどうするのさ?」

「ですが……」

「これは、君たち二人に対する罰じゃなく、三人に対する罰なんだ。残念だけど、受け入れてもらうしかないね」


 そう言うと、神様は「さて」と言って、悲しみに暮れる二人に背を向け、くるりとこちらに向き直る。

 地面にへたりと座り込み、両手で顔を覆って嗚咽を漏らすエリシエル様を背に、わたしに向かってケロリと喋り出す。


「じゃあ僕は、帰りがてら君を元の時代にでも送り届けようかね」

「えっ……!」


 できるんですか!?

 と、口には出さずに心の中で驚いたつもりだったのに、


「なにその反応。神様なんだからそれくらい出来て当たり前でしょ」


 と不満げに返されてしまった。

 ど、読心術でもできるんですか……!?


「できないよそんなの」

「えっ!? わたしなにも言ってませんよ!?」

「いや、言ってなくても表情見てればなんとなくわかるよ……」


 驚いて、あわあわと慌てるわたしに、神様が苦笑する。


「さ。じゃ、行くよ」


 そう言って神様が差し出してきた手を、吸い込まれるように手を取る。

 あ、でもまだ、エリシエル様とアース様が――、と思った瞬間に、ぐにゃりと空間が歪んだ。


「あ、ここの歪みは僕が正しておくね。それじゃあまた――、400年後に」


 それは、誰に対する言葉だったのだろうか。

 少なくとも、わたしにではなく、あの場に取り残された誰かに対するものだったのだとは思うけれど。


 そんなことを考えているうちに、ぐらりと意識が傾いだ。

 これは――あの時と、この時代に飛ばされてきた時と同じ感覚だ。


 これが、時を渡る時に感じる特有のものなのだろうか、と思っているうちに、意識が暗転した。






「起きた?」

「――ここは……」


 気づくと、立派なガーデンセットのテーブルに突っ伏して眠っていた。

 体を起こすと、目の前には見覚えのある神様の姿。

 あたりは、瑞々しい木々や花々に彩られた、まるで絵本にでも出てきそうな庭園。


「ここは、中継地点だね。直行させてもよかったんだけど、いったん経由した方がいろいろ負担も少ないし」


 直行先は大変な状況になってると思うしね――、と意味深なことを言われる。


「それに、色々と聞きたいこともあるんじゃないの?」

「聞きたい……」


 目覚めたばかりで追いつかない脳みそで反芻しながら、にこにこと微笑む神様をぼうっと見つめる。


「まあ、全部が全部に答えられるとは限らないけどね」

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