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【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第二部

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第13話 最後の歪みって、なんですか?

「歪みのある場所を見つけた」


 レイさんがそう言って、修行しているわたしたちのところに戻ってきたのは、昼前くらいのことだった。

 ちょうど、わたしとエリシエル様が昼食の準備をしている時のことだ。


「……それが、最後の歪み?」

「ああ」


 エリシエル様の問いかけに、レイさんが答える。


「……最後の歪み、ですか……?」

「そうよ。正確に言うと最後と言うのは、これで歪みがなくなると言う意味じゃなくて、彼らの、聖獣としての仕事が最後って意味」

「仕事が……、最後?」


 エリシエル様の言っていることが理解しきれなかったわたしは、鸚鵡返しのように問い返す。


「エステルちゃん。レイ達が、人間の世界で歪みを正し続けて、どれくらいだと思う?」

「え……」

「400年よ。レイ達はね、400年もの間、人間の世界を巡り歩いて、ずっと歪みを正し続けてきたの」

 

 聖獣たちがどれくらいこの人間の世界にいるのかとか、そんなこと、考えたこともなかった。

 聖獣は神の使いで、不滅の存在で、時という概念には嵌らないものだと、勝手に思い込んでいた。


「……それは、神界にいる時はそうだな。神界は人間界とは時に関する概念から違うからな。だけど、人間界にいる以上、誰しも時間という概念から離れることはできない。姿形こそ変わらないが、精神は間違いなく疲弊し、摩耗していく」


 だから、ある期間、人間界で聖獣としての勤めを果たしたら、世代交代をして神界に戻るのだそうだ――が。


「その、最後の歪みの調査に向かったところで、アースの行方がわからなくなったの」


 しかも、エリシエル様が言うには、どうやらその歪みは、移動をしているらしい。


「最初にアースとレイが知覚した場所から、離れているみたいなの。本当だったら、エステルちゃんと出会った場所が最初に歪みを探知したはずの場所だったのよ。でも、私たちがたどり着いた時には、もうそんな形跡はなかった」


 だから、こうして街から街を移動しながら、レイさんがその歪みがどこに行ってしまったのかを、探索して追っていたのだそうだ。


「じゃあ、レイさんが見つけたって言うのは、その何処かに行っていたと思われる歪みを見つけたってことですか?」

「ああ」


 わたしの質問に、レイさんが短く答える。


「じゃあそこに、アース様がいる可能性も高い……?」

「なんでアースは様付けで、俺はさん呼びなのか疑問は生じるけど、まあそうだな」


 つまりは、そこでアース様と合流して、みんなで歪みを正せば、それで万事解決、と言うことだ。

 と、そこまで考えて再び抱いた疑問を二人に向かって問いかける。


「あれ? じゃあそれで、最後の歪みを正したら、レイさんとアース様はどうなるんですか?」


 神界に戻ることになる?

 でもそうすると、恋仲になったエリシエル様は一体どうなるのだろう、と疑問を抱いた。


「アースは……、あいつは。役目を終えた見返りに、人間にしてもらえるよう神に許しを乞うつもりだったんだ」


 わたしの質問に、レイさんが重々しく答える。


「役目を終えた見返りに、人間に……? じゃあ、レイさんは? レイさんはどうするつもりだったんです」

「どうもしないさ。兄弟揃って人間になりたいなんて言い出したら、叶えてもらえるものも、もらえなくなるかもしれない。俺は神界に戻って、神のご機嫌取りでもするさ」

「そんな……」


 それじゃあ、レイさんひとりが犠牲になって、物事を進めると言うことと同じなのではないか――。

 わたしがそんなことを思った時、エリシエル様が漫然と抗議をし出した。


「あのねえ! 私はレイの、そういう自己犠牲に浸るっぽい感じがどうかと思うのよ。辛気臭いし、陰気臭い!」

「……」

「ダメ元でも頼んでみればいいじゃない! 人間になりたいのなら。そうじゃないなら、無理にとは言わないけど」


 本当に願うなら、私も一緒に頼んであげるわよ! とエリシエル様。


「……まあ、実のところを言うと、単に、レイがいなくなると私が寂しいってだけなんだけどさ……。私とアースだけだと、暴走してもストップをかけられる人がいないし……」


 エリシエル様が、どこかいじけたようにぶつくさと言う。


「人間になりたい、か……」


 その、レイさんの呟きは、あまりに小さすぎて、ぶつくさと何かを呟き続けていたエリシエル様には聞こえなかったのではないかと思う。

 けれどその呟きは、わたしの耳にはしっかり届いてしまったので。

 思わず、心配になってレイさんを見上げると、ぱっと目があったところで、レイさんが心配するなとでも言いたげに苦笑を漏らした。


「……まあ、話を戻すが。とりあえず俺たちは、これからその見つけた歪みに向かって移動をする。ひとつはアースを見つけるため。もうひとつは……、お前を元の時代に帰すためだ」


 てっきり、歪みに向かうのはアース様を見つけるためのものだと思い込んでいたわたしは、そこにわたしの事情も絡んでくると思っておらず、レイさんの発言に、どう言うことなのだろうと思ったのだった。

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