表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/60

第9話 あれ、過去に来ちゃったみたいです?

 誰かが。

 耳元で呼んでいる声がする。


「……い。おい。大丈夫か?」

「ん……」


 ゆさゆさと肩を揺らされる。


「どうしたの?」

「こいつ、ここで倒れてて」


 さっきまでわたしを呼んでいた男性の声に、さらに女性の声が加わる。

 なんだか怠くて動かない体を叱咤して、むん! と気合を入れて目を開ける。


「あ。起きた」


 そこには、見覚えのある少年によく似た、黒髪の青年の姿があった。


「……レイヴン?」


 ――違う。

 よく似ているけど、レイヴンよりももっと年上の人だ。


「ちょっとレイ。怖がってるんじゃないの?」

「怖がらせることなんてなにもしてねーよ」


 レイヴンに似た男の人に、女の人が突っかかる。

 ……この人も、何か既視感を感じるんだけど……。


「そんなに言うならエリシエルが介抱してやれよ」

「わかったわよ。じゃあ……」


 場所変わって、と、エリシエルと呼ばれた女性が、レイと呼ばれた男性を押し退ける。


 ……ん?

 ……エリシエル?

 エリシエル!?

 

 はっと気づいて、思わず目の前にいる女性を凝視する。

 え? 本物? それとも、偶然同じ名前の人?


 だけど、世間では一般的に大聖女と同じ名前をつけるのは不敬だと捉える人が多いから、せいぜいあやかったとしても『エリス』や『シエル』と言うように、名前の一部をいただいてつける人がほとんどなのであって……。


「おい、お前指さされてるぞ」

「えっ!? なんで!? 知り合いにでも似てた?」


 そこでようやく、自分が女性に向かって指差していたのだと気づいて、慌てて手を下ろす。


「あ、の……、すみません……。たまたま、知り合いに似ていたというか……」

「へー。こいつに似てるなんて、そいつも災難なやつだな」

「ちょっと、レイ」


 そう言って、隣で軽口を叩く男性をジロリと睨む。


「あの……、変なこと聞くんですけど。今って帝国暦何年ですか……?」

「え? いま? ……帝国暦352年だけど」


 彼女が口にした年は、わたしがいた時代のおよそ400年前。

 多分間違いない。

 わたしの目の前にいるのは、おそらく本物のエリシエル様だ。


 と、言うことは。

 順を追って、直前にあった出来事を頭の中で蘇らせる。


 エヴァンジェリン様が突然おかしくなって、アスラン様を眠らせてしまったかと思ったら、わたしの方に向かってきて――。


 そうだ。

 それで、レイヴンがエヴァンジェリン様からわたしを庇ってくれたかと思ったら、眩しい光に包まれて、気づいたらここにいたんだった。


 一体、ここは夢なのか現実なのか。

 もしかして、死んじゃって意識だけ飛んできちゃったとか。

 でもそれにしても、ちゃんと肉体は存在してるように見えるし……。


「おい」


 考え込んでいると、レイと呼ばれた男性がわたしに話しかけてきた。


「……おまえ、聖女だろ」

「えっ」


 言われたわたしよりも先に、エリシエル様の方が驚く。

 

「な、何言ってるのレイ」

「こいつから、聖女の力を感じる」


 迷いなく、キッパリと言い切られる。

 確かに、間違いなくわたしは聖女なので、それはそうなんだけれども。

 「はい」と答えることで、またかつてのように偽聖女だと言われたり、逆に目の前の人が偽聖女扱いされないかと言うトラウマで、正直に答えることを躊躇する。


「聖女は、世界に一人しかいないのよ。じゃあなに? レイは私が偽物だとでも言うわけ?」

「そうじゃない。お前が聖女なのは間違いない。ただ……、何事もイレギュラーがないとは言い切れないし。どちらかというとこいつは、この時代の人間じゃない可能性が高いと思う」


 不満げなエリシエル様に、その男の人は淡々と説明する。

 その時になって、わたしは初めて気がついた。


 ――この人、レイヴンだ。


 魔獣になる前の、聖獣の時のレイヴンだ。

 似ていて当たり前だ。だって本人なのだから。


「お前、さっき帝国暦を尋ねただろ。お前の知ってる帝国暦は、一体何年なんだ?」


 と問われて。

 正直に答えるべきか誤魔化すべきか躊躇する。

 しかしどうやら、その一瞬の間が彼にとっての答えになったらしい。


「……すぐに答えないってことは、この時代の人間じゃないってのは当たりなんだろ。あ〜、いい。言わなくて。別の時代の情報を開示されると、因果率が狂っちまう可能性があるからな」

「なに? 因果律って」


 わたしが聞きたいことを、エリシエル様が即座に訪ねてくれる。


「……出来事っていうのは、いろんな他の出来事が積み重なって起こるもので。例えば、俺たちはお前の生まれた村が魔物に襲われているところに出くわしてお前を助けたわけだけど、そのタイミングがもう少し早ければ、お前の家族は殺されずに済んで、お前は今こうして俺たちと一緒にいるのじゃなく、家族と暮らしている現実があったかもしれない。そういう、ちょっとした差異が大きく未来を変えることもありえるってことさ」

「つまり、彼女が過去の人か未来の人かわからないけど、違う時代の情報を知り得たことで、私たちに影響が出たり、逆に彼女に影響が出る可能性があるってこと?」

「そういうこと」


 つまり。

 いまここにこうしているのは、魔獣になる前の、聖獣のレイヴンとエリシエル様で。

 おそらく、きっと、これからレイヴンが魔獣になるきっかけの事件が起こるはずで。

 それを知っているわたしが、レイヴンが魔獣になるのを阻止してしまうと、未来が変わってしまう。


 聖王国が興らない未来もあり得るわけで、そうするとわたしとアスラン様が出会う未来もなくなる、ということなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ