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【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第二部

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第4話 アスラン様、あれはよろしくなかったです

「アスラン様、あれはよろしくなかったです」

「……」


 あれよあれよとカリナに自室まで追いやられて、只今絶賛、お説教を受けている最中だ。

 説教を受ける僕はと言うと、カリナの指摘に、反論する言葉を持ち合わせていなくて。

 落ち込み、沈み込もうとする頭を抑えるため、片手で顔を覆う。


「アスラン様のお気持ちもわかりますけど。エステル様は何と言いますか……、こちらがハラハラするくらい、無防備ですから」


 カリナのいう通りだ。

 エステルは、頭は良いのだが、いかんせん無防備なのだ。

 警戒心が薄いと言い換えてもいい。

 

 それが功を奏して、例えば、皇宮内で使用人から親しまれるなど、良い方向に作用することもあるが、正直こちらの立場からすると心配で仕方ない。


 本人に言っても、否定されるか、逆に気にしすぎて折角の長所を潰してしまうのではないかと思って、今までは深く追求せずにきたが、流石に今回のことは看過できなかった。

 

 ――もともと飼っていたペットとは、いえ中身は男だぞ?


 今までは少年の容姿だったし、本人もそういう点(恋心的な面)においてはエステルと一線を引いているように見えたから黙っていたけれど。


 これで、また添い寝なんかされて、目が覚めたら自分以外の男と同じベッドの上に寝ている、なんていうのを目の当たりにするかもしれない、僕の気持ちはどうなるのだ。


 本当にそんなことが起こったら、絶対に自分の心が耐えられないと思った。


 僕のために早く魔獣の浄化を終わらせようとして、エステルが考えたことなのだということも頭では理解できるが、そのために僕がエステルを好きだという気持ちを置いてけぼりにされているような気がして、少し……傷ついた。


 とはいえ――。


「……言いすぎた、とは、思ってる……」


 好きな女の子を、泣かせてしまった。

 思い返すと、エステルが泣いているのをみたのは、これが初めてかもしれない。


 これからの皇太子妃となっていく過程で、たとえエステルが泣くようなことがあっても、隣で慰めるのは自分の役目だと思っていたのに。

 自らが、泣かせてしまった。


「泣かせちゃったな……」


 激しい後悔と自責の念に駆られる。


「逆に、アスラン様がそれだけエステル様にとって、重い存在になっているということでは?」

「重っ……?」

「あっ、すみません語弊です。重要な、という意味です」


 カリナに『重い』と言われて追い討ちで傷ついたところを、フォローするように慌てて言い直される。

 クラウスもそれを受けるように、


「確かに、私もカリナの言う通りだと思います。エステル様は我慢強い(かた)ですから、他の方に何かを辛いことを言われても、笑ってやり過ごすことがほとんどでしょうし」


 アスラン様の存在が大きいからこそ、エステル様は受け流せずに涙を流したのだと思いますよ――、と。


 そうなのだろうか。

 二人の言葉を、自問自答する。


 確かに、最初の頃と比べるとずっと、エステルは僕に対して心を開いてくれるようになったと思う。

 僕のことを、受け入れてくれていることもわかるし、ちゃんと想ってくれているとも思う。


 それでもそれは、僕がエステルを好きだと言い続けているからの『情』みたいなもので、本当に僕のことを心から欲してくれているのだろうかと、不安に苛まれる時がある。

 僕とエステルの『好き』の熱量に、大きな差異があるのではないかと。


 二人の言う通り、本当に僕が、エステルの心を揺さぶるほどの、大きな存在になれているのだろうか。

 熱量に違いはあっても、彼女にとってのかけがえのない存在に。


「……エステルに、謝ってくる」


 もう一度、ちゃんと話をしよう。

 さっきはつい感情に駆られてしまったが、落ち着いて、今度はちゃんと言葉を交わそう。


「では、私が先にエステル様のお部屋に入って、様子を見てまいりますね」


 そう言って、カリナが先に立ってエステルの部屋へと向かう。



 

 ――結論から言うと、エステルはあの後、泣きながらそのまま、また眠ってしまったみたいで。

 

 起こさないよう、様子を見るだけなら大丈夫ですよ、とカリナが静かに案内してくれるのについて、室内に入った。

 様子を見に室内に入る途中、すれ違ったレイヴンにもの言いたげな目で無言で睨まれた。


 黙って、こちらも睨み返す。

 もの言いたいのはこっちだって同じだ。


 寝室で、すうすうと寝息を立てるエステルの、頬に残る泣き跡にそっと触れて。

 謝罪の思いを込めて、何度かその頭を優しく撫でてから、気持ちを切り替えて執務に向かったのだった。


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