表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/60

番外編 エステルの社交界デビュー3

 重厚なドアがバタンと閉じられた瞬間、思わずほう、と息をついた。

 本当は、足元から崩れ落ちたいくらいの安堵感だったけれど、ここではまだ他の人の目があるかもしれないので、気を抜かずに姿勢を立て直す。


「エステル様。とても素晴らしかったです」


 ドアの近くで、わたしの戻りを待っていてくれたクラウス様が、手放しで褒めてくれた。

 聞き慣れた声を耳にしたことで、また少しホッとする。

 そうして、クラウス様が差し出してくれた手を取り、よろよろと(傍目にはそう見えないように注意しながら)自室の方向へと足を向ける。


「……正直、緊張でよくわかりませんでした……」

「僭越ながら、私から見れば十分すぎるほどです。会場中の招待客がみな、エステル様に魅了されておりましたよ」


 アスラン様のあのような姿も、長年お仕えしていて初めて見ましたし、とクラウス様が楽しそうに笑う。


 とにかく、無事役目を果たせたのであれば、とりあえずはよかった……。

 後は、早く部屋に戻って全てを脱ぎ捨てて、いつもの着慣れた部屋着に戻りたい。

 そう、思った時だった。


「エステル!」


 もうすっかり聞き慣れてしまった――アスラン様の声が、背中から追いかけてきた。


「ア――」

 

 アスラン様――、と。

 振り向いて、わたしがその名を呼ぼうとした瞬間。

 あっ、と思うまもなく。

 わたしの唇に、アスラン様が深く――深く口づけてきた。


 心の準備などする暇もなく、突然に。


 そのまま、じりじりと、混乱するわたしを壁際まで追い込み、最終的に囲い込まれて逃げ場を塞がれる。


「〜〜〜〜〜〜〜!」


 そこでようやく、まだクラウス様がいるのに……!! と少し正気に戻り、視界の端を目で探すが、仕事のできる執事は、いつの間にか視界のどこからも消えて居なくなっていた。


 そのうち、そんなことを考える余裕も無くなるくらいに、わたしはアスラン様に追い詰められて。


「っはぁ……っ」


 酸素を求めて逃げようとするも、アスラン様は、それさえも許してくれない。

 荒い呼吸をつ()く中、絡めとろうとする舌が、執拗なくらいにわたしを追い求めてくる。


「はっ……、アスラン様、い、きが……」

「……うん」


 うん、とは言うものの、言った方は、一向に解放してくれる気配はなく。

 結局、わたしがくりとひざから崩れ落ち、荒く息を()きながら壁にもたれて体を支えようとしたところで、ようやくアスラン様が離してくれた――が。


「いっ……!」


 離してくれた唇が、ぬるりと首筋を伝ったかと思うと、そのままそこをじゅっ、と強く吸われる。


「はぁ……、エステル……」


 わたしの耳元で、アスラン様が切なげに吐息を漏らした。


 「あ、アスラン様……? どうしたんですか……?」


 ぐったりと、わたしに縋り付くように抱きついてくるアスラン様は、わたしがこれまでに見たことのない姿だった。


「勝手に……、僕の知らないところに行かないでよ、エステル……。お願いだから」


 少し掠れた、消え入りそうな声で、まるで懇願でもするかのように(ささや)く。


「い、行ってませんよ? どこにも……。わたしは、ここにいますから」


 そう言ってわたしも、アスラン様の背中に手を伸ばす。

 そうしてしばらくして、アスラン様は「はぁ……」と大きくため息をつくと、それからゆっくりと身体を起こした。


「……ごめん。取り乱した」

「……」


 なぜか、わたしの方を直視しようとしないアスラン様の表情は、いつものアスラン様のものより、少し(かげ)っている気がして。

 

「クラウス」

「は」


 一体どこに潜んでいたのか、アスラン様の呼びかけに、どこからともなくクラウス様がさっと現れる。


「僕は戻るから、……エステルを部屋まで送ってあげて」

「かしこまりました」


 クラウス様が胸に手を当てて答えると、アスラン様はさっと身を翻して、そのまま、一度もこちらを振り向かずに大広間へと戻っていった。


「………………」


 それからわたしは、どうやって自分の部屋まで戻ったのかは、正直よく覚えていない。


 



 

「レイヴン」

「なに」


 部屋戻って、レイヴンと二人きりになった瞬間、わたしは、帰りを待っていてくれたレイヴンに声を掛ける。


「あの、いつもの、子犬の方の姿になってもらえませんか……」

「え、なに? なにかあったの?」


 いつもと違うわたしの様子に気づいたレイヴンが、何かあったのかと尋ねてくるが、何があったかを言えるわけもなく。

 「とにかく、何も聞かないでもふもふさせてくれないかな……」ともじもじしながら切実にお願いしたら、レイヴンは仕方ないといった様子で、ぽふん! と黒ポメの姿に変わってくれた。


 それから、レイヴンを抱えたまま、ばたりとベッドに寝転がり。

 わたしの気持ちが落ち着くまで、ただもふもふとレイヴンを撫で続けたのは。

 レイヴンに対しては、ごめんとしか言えない出来事でした……。





 

 翌朝、わたしの身支度をするカリナから誇らしげに「世間は昨夜の皇太子の誕生パーティーに現れた謎の妖精令嬢の話で持ちきりになっていますよ」と言う話を聞いた。


 それから。


 そういえば、昨日はアスラン様の誕生日だったのに、結局混乱を引きずってしまったために本人にプレゼントを渡せなかった……というまさかの事実に気づき、その後盛大に落ち込むという事態に陥ったのだった。

お読みくださってありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』『評価』で応援いただけると嬉しいです。



広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、

今後のモチベーションに繋がります。


何卒応援よろしくお願いしますー!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ