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【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第一部

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第24話 【SIDEアスラン】アスラン、怒る

「聖女は、我々が貰い受けていく」


 突然現れた、聖王国へ輸送中だったはずの元王子――フレドリックが、どうやってここへ現れることができたのか。

 なぜ、エステルの背中に刃が突き立てられているのか――。


「エステル! エステルっ!」


 いつのまにか、どこかから現れた黒髪の少年が、エステルの名を呼びながら、彼女に向かって駆けていく。

 しかし、寸前でエステルの姿はふっと掻き消え、次の瞬間にはフレドリックと見知らぬ女と三人、転移門の前に移動していた。

 

 ――転移だ。

 明らかに今、フレドリックが、短距離転移を行ったのだ。


 フレドリックが魔術を使えるという話は聞いたことがない。

 自分が驚愕に一瞬気を取られていると、その間にフレドリックは女からエステルを受け取り、意識を失った彼女を両腕で抱き抱え――。


「……! 待て!」


 足止めをしようと、フレドリックに向かって魔術を放つが、寸前であっさりと消されてしまう。

 そのまま、こちらを見てニヤリと嗤ったかと思うと、転移門を使って三人とも消えてしまった。


「え、エステル! エステルっっ!!」


 少年が、追うように転移門に向かって走り出すが、もうすぐ手の届こうかという寸前で、どん、という大きな音と共に、転移門が輝きを失ってしまった。


「……」

「……て、転移門……、起動停止。おそらく、向こう側の装置が破壊された影響かと思います……」


 気まずい空気の中、動作管理担当の魔術技工士が言いにくそうに報告する。


「くっ……」

「待て」


 魔術技工士の報告を聞いて、何処かに駆け出そうとした少年を見咎め、すかさず引き止める。


「……」

「お前は誰だ。エステルのなんなんだ。どこへ行こうとしている」

「エステルを守れなかった無能に、名乗る義理なんてないね」

「……それを言うなら、お前だって同罪のはずだ」


 子供相手にムキになっても、とは思うが、言われたことはそのとおりで。

 それが逆に、怒りを煽り立てられる。


「お前……、あの黒犬か」


 その言葉に、少年にかすかに驚愕の色が浮かんだ。


「……ふぅん。聖王の直系は伊達じゃない、ってことか……」

「お前、なんで人の姿を取れる? エステルは……、いや、お前は何者だ?」

「説明してやる時間はない。エステルを追いかけないと……」

「待て!」


 こちらを無視して行こうとする少年の手を、思わず捕まえる。

 少年は、鬱陶しげに捕まれた腕を一瞥し、


「ひとつだけ教えてやるよ。エステルは聖王国にいる。助けたければ、急いで追いかけてくるんだね」


 仕方なさげにそう言い残すと、止める間も無く、少年はふっと何処かに掻き消えてしまった。


「……転移……」


 掴んでいたはずの掌を見つめ、消えてしまった虚空を見遣る。


「エステル……」


 明らかに、油断していた。

 元凶を捕まえたからもう大丈夫だろうと安心しきっていた。

 そもそも、フレドリックが魔術が使えると言う話は聞いたことがなかった。

 魔術の相殺も、転移も、限られた一部の上位魔術師しか使えないはずのものなのに――。


 それに、あの女――。

 実際に見たのは初めてだが、おそらくあれが、フレドリックの婚約者だった女――シルヴィアだ。

 調査に放った密偵の報告によると、神の神罰で左腕が腐って切断したために、気が触れてしまったと聞いていたはずなのに。


 ――自分の知らない、何者かの力が絡んでいるのを感じた。

 

 ……十全に準備を整えたつもりだったのに。

 見落としがあったと言うことだろうか。

 自らの失態に、胸の内に沸き起こる憤りが収まらない。


「アスラン様……」

「魔技師。急いで転移門を修復しろ。今日中にだ。遅くても、明日には稼働できるように」

「そ……」


 そんな無茶な、と言いかけて、こちらの空気を察して飲み込んだ。

 無茶なのは百も承知である。


 早馬を飛ばしたとしても、聖王国まで3、4日はかかる。

 であれば、多少無茶を言っても転移門を直させた方が到着が早い。


「……くそっ!」


 エステルが、胸から突き出た刃に驚愕する表情が、いつまでの脳裏にちらつく。

 時間を巻き戻せるなら――。

 願っても詮無いことを願う。

 こんなに、自分が無能だと思ったことは、人生でこれまでなかった。


 ずきりと頭が痛み出す。

 エステルが離れてしまったために、魔獣の呪いを抑える術がなくなってしまったからだ。

 痛む頭を押さえながら、エステルを取り戻すべく、ゆるりと一歩を踏み出した。

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