表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化進行中】もう私『へとへと聖女』ではありません! 〜婚約者から偽聖女扱いされて追放された私は、隣国で皇太子に溺愛されました〜  作者: 遠 都衣
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/60

第22話 【SIDEフレドリック】フレドリック、乗っ取られる

 ――薄暗くて湿っぽい独房に放置される。


 このような扱いが、腐っても、一国の王子だった自分に対する仕打ちとは思えなかった。

 気休め程度の、粗末な食事が与えられ、排泄物の匂いに塗れた牢内で食欲もない中、ただ処罰されることを待つだけの日々。


 ここに入れられて、何日経ったかわからなくなったころ、がちゃりと牢屋の鍵が開けられる音がした。


「――立て。おかしな真似をしたら無事は保証しない。おとなしくついてくるんだ」


 帝国兵に蹴飛ばされながら起き上がり、手枷と足枷をつけられたまま、外に連れ出される。


 行き着いた先は、ただ牢屋にタイヤがついただけの、囚人輸送車。


 ――もはや、貴人としての扱いでさえなかった。


 クッションのない囚人輸送車に乗せられ、枷をつけられているせいで体を自由に動かすこともままならず、全身が痛みに苛まれる。


 もはや、自分を生かしているものは、エステルに対する恨みだけだった。


「なぜ……、私だけ……。なぜ、なぜ……」


 ぶつぶつと、恨みを忘れないという執念を(つの)らせ、ひたすらに呪いを口にする。

 

 エステルのせいで。

 あいつさえいなければ……!

 あいつさえ、私の前に現れなければ……!


 捕らえられる直前の、帝国の身綺麗な洋服に身を包んだ、なんの苦労もなさそうなエステルの表情が目に浮かぶ。

 なぜ、あいつだけあんな恵まれた場所で悠々と過ごし、自分がこんな惨めな思いをしなければならないのか!


 そう、怒りで、呼吸が荒ぶった時ーー。


(――いらないのなら、僕に頂戴?)


 頭の中で、見知らぬ少年の声が響いた。


 同時に、どくり、と黒い子犬に噛まれた噛み跡から、何かが(うず)く。


「ぐぅ……、うぁあ……!」


(ねぇ……。聖女がいらないなら、()()()()()


 意識が。

 自分のものだったはずのものが、みるみる何かに(おお)われていく。


 そうだ。

 聖女はいらないから、()()にあげよう。


 そうすれば、()()も聖女が手に入って喜ぶし、

 私自身も、ずっと煩わされてきた聖女が消えて、せいせいするじゃないか。


 ーー素晴らしい名案だと思った。


 そうして、黒い意識に身を委ねた瞬間。


「フレドリック様!」


 がちゃりと、鍵がかかっていたはずの囚人輸送車のドアが開かれる。

 外界から、むわり、と血生臭いにおいが漂ってきた。


「迎えに参りましたわ。――さあ、聖女を捕まえに参りましょう? フレドリック様――いえ、魔獣様」


 黒衣に身を包んだシルヴィアが、私の目の前でにたりと笑って手を差し出してくる。

 そうして私は、失われてしまったはずのシルヴィアの左手を手に取る。

 右手に血濡れた短剣を滴らせ、左手の手首から先が真っ黒に変色してしまったーーシルヴィアの左手を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ