番外編 侍女は幸せ(マリー視点終)
「う゛う゛う゛……マ゛リ゛ぃ……」
「泣きすぎですよ、お嬢様」
「だ、だい゛ずぎよ゛、じあ゛わ゛ぜに゛な゛っでね゛ぇっ……ひぐっひぐっ! ううぅっ!」
「はいはい。マリーは幸せになりますので。次はお嬢様の番ですからね」
「……ひぐっ……ひぐっ……」
私は苦笑しながら、泣きじゃくるお嬢様を見つめました。
こんなに短い間に、二回も嬉しさで号泣するお嬢様を見られるとは思いませんでした。
私も、まだまだ王子には負けていないことがわかって、嬉しい限りです。
本日は快晴。
そして、私の結婚式でもあります。
そうです!
ヴィヴィとの賭けに見事勝利した私は、彼と家族になる権利と高級ボトルを勝ち取ったのです。
まぁ、あんなことがあって決闘は無効になってしまいましたし、賭けの勝敗も微妙と言えば微妙でしたけれども。
リオルド殿下は帰ってしまわれましたし、お嬢様の心を射止めたのはジェラルド殿下の方のようでしたので……。
私の勝ちです! その件に関しては異論反論一切認めません。
「ほらお嬢様、旦那様たちの所へお戻りください!」
本当に王子サマサマでございますね。もちろん本人には言いませんけれども。
「マリー」
向こうから私を呼ぶ声がします。もうそろそろ彼の元へ行かなければ。
「マ゛リ゛ぃぃぃ……」
「全く。お側を離れるわけじゃないんですから。明日、その腫れた目やお顔の手入れをするのは、誰だかわかってるんですか、お嬢様?」
「…………マ゛リ゛ぃ……」
「わかってるなら早く! 戻って! ほら!」
お嬢様はこくこくと頷きながら、旦那様たちの席へと戻っていきました。
ありがたいことに、旦那様や奥様も笑顔で、涙ぐんでくれています。
彼らはこの結婚を報告した時も、「マリーは私たちの娘のようなものだから私たちも嬉しい」と言って、我が事のように喜んでくださいました。
私も、心の中ではお二人を、両親のようにお慕いしておりますとも。
お嬢様の隣では、金髪頭がハンカチを差し出しております。
あやつも随分と成長して……あ、ちょっとそれ、握りしめすぎてシワッシワではありませんか!
そのガサガサなハンカチで、お嬢様の繊細なお肌に傷でもつけたら許しませんからね、クソ王子!
「マリー、おいで」
そう言って優しく私の手を引くのは、大切な私の旦那様。
女として愛されなくても、男として愛することはできなくても、かけがえのない私の家族。
「綺麗だよ、マリー」
「ヴィヴィこそ素敵ですよ」
ヴィヴィは、はにかんだように笑って、その逞しい腕に私の手を絡めます。
視界の端には、彼の家族が見えます。
ヴィヴィはまだ、家族に対して蟠りがあるようで、彼らを式に呼ぶことを反対しましたが、私が来てもらうべきだと言って譲りませんでした。
そして彼らの様子を見るに、私たちを心の底から祝福をしているように思えます。
「喜んでいるどころか、厄介払いできてほっとしているのよ」
あら。彼にもどこかの誰かさんの憎まれ口が移ってしまったようですね。
でも、そう呟いた彼の口元は少し綻んでいます。
多分それは、一番近くに私だけにわかる表情。
でもね、ヴィヴィ。
きっと、誰も。
不幸になってほしい訳ではなく。
大切な家族に幸せになって欲しいからこそ。
人は、自分の幸せを人に当てはめてしまおうとするのでしょう。
でも、私は。
私たちは。
人とは違う幸せの形を探していくのです。
これから先もずっと二人で。
「……あなたがた二人は、いつ如何なる時も、互いを裏切ることなく、尊重し、助け合い、愛し合うことを誓いますか?」
「「誓います」」
だから、私たちは、
家族として愛し続けることを。
──誓います。
(番外編 完)
これにて本編、番外編ともに完結です。
文章や構成などの甘いこの作品を、最後までお読み下さりありがとうございました!




