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死んだことにされた伯爵令嬢は公爵令嬢として幸せになる  作者: ちる
リリーナ・サイフォールド伯爵令嬢は死んだ
8/26

婚約の打診ー過去編ー

王妃様の茶会当日、リリーナはそわそわしていた。


(名乗らなかったのはとりあえず大丈夫そうだってお母様に確認したけど、他に何かしてなかったかしら?お菓子を食べすぎた?だって美味しかったんだものー)


リリーナはこの時、婚約者に選ばれたかもという考えは少しもなかった。あの茶会の開かれた目的がすっかり忘れ去られていた。


そんな娘をニコニコしながら見守る母の目はとても優しかった。


リリーナが王宮に着き、招待状を見せると庭園まで案内された。前回の茶会とは別の場所らしく、色とりどりのチューリップが咲き乱れていてこじんまりとした庭だった。


「王妃様はもう間もなくいらっしゃいますのでおかけになってお待ち下さい」


案内してくれた侍女に言われ、マナーどうりに椅子を引いてくれるのを待って腰掛けた。


ぼんやりと咲いているチューリップ達を見ていると少し冷静になれた。


(そういえば、あのお茶会は殿下の婚約者選びの場でもあったわね。もしかして、私が選ばれたとか?んーそれはないわね。お父様には勉強もダンスもまだ合格を貰ってないもの)


王妃が来たのに気づき、立ち上がってカーテシーをしようとしたが止められた。


「お待たせしたわね。あ、どうぞそのまま掛けていて頂戴。この場は非公式よ。あまりかしこまらずにいて頂戴」


「はい」


その場に座り直したリリーナを温かい眼差しで王妃が見つめた。


「あなたを呼んだのは、ルーカスがあなたに求婚したいと申し出たからなの。王子から求婚されたというのは、とても光栄なことと言われるかもしれないけれど、貴族にとって自分より高位の貴族からの求婚はほぼ命令に近く拒否権がないわ。それが王族といえば尚更ね。だからあなたの気持ちを聞きたいと思って呼んだのよ」


「・・そ・・そうなのですか」


あまりに現実味がなくリリーナの頭は考えることを拒否した。


「一応、ある程度の情報を伝えるから、それを元にルーカスと共に歩んでくれると言うのなら、ルーカスに求婚させるわ。難しいのならお断りしても大丈夫よ」


「はい」


「これから話すことは王族に関する情報もあるから、他言は無用よ。例え親であろうとも。それを聞く覚悟はあるかしら?」


「・・・はい」


「よろしい。本当は魔法で他言しないよう縛ることも出来るのだけど、今回はあなたを信じることにするわ。裏切らないでね」


王妃はにこやかに微笑んでいたが、鋭い眼差しでリリーナを見ていた。


(こ、こ、怖い。でも何故殿下が私なんかに求婚したいのか知りたいわ。それにあんな素敵な人と結婚できるなんて夢みたいだし)


「はい。裏切りません」


リリーナは強い意志を持って王妃を見つめた。王妃は満足げに頷き話し始めた。


「では話すわね。現在、この国で王位継承権があるのは第一王子のルーカス、側妃の息子の第二王子、陛下の二番目の弟のサターン、陛下の従兄弟のイリタス・リスターク公爵の4人よ。ルーカスは1番王太子に近い存在だから、その婚約者になれば次期王妃になると言うこと。でも側妃は自分の息子を王太子にしたがっている為、私達とは対立しているわ。簡単に言うと側妃はルーカスを亡き者にしようとしているの。だからあなたが婚約者になったら、あなたも命を狙われるわね。もちろん護衛は付けるし、必要なら王家の影も付けるわ。


ちなみにイリタスは第一王子派、サターンは15年前に冒険者になると言って城を出て行方不明だから事実上王位継承権は放棄しているようなものよ。ただ、王太子に誰がなったとしても予備として王位継承権を持つものはいないといけないの」


王妃は紅茶に手を付け、リリーナに菓子を勧めた。その後の話は婚約者となった場合のスケジュールだったり、王妃になる心構えであった。リリーナは小さな頭に大量の情報を入れられ頭から湯気がでそうだった。


一通り話が終わると王妃が侍女になにか指示をだし、ルーカスが現れた。


「私からのお話は以上よ。後はルーカスとお茶とお菓子を楽しんで行って。フォンダンショコラもたくさん用意したわ。また帰る頃に来るわ」


「はい。ありがとうございます」


「あ、そのまま座っていてね。ではまたね」


立ち上がろうとしたリリーナを制し、優雅に去っていった。


「さ、ゆっくりお菓子を食べようか」


「はい」


「えーと、改めて、僕は第一王子のルーカス・だ」


「私はリリーナ・サイフォールドです」


(やったわ。やっと名乗れたわ)


リリーナは拳をぐっと握り、喜びを噛み締めた。


「リリーナと呼んでもいいかい?僕のことはルーカスと」


「はい。ではルーカス殿下と」


「いや、ルーカスでいいよ」


「・・・ではルーカス様」


「んーとりあえずはそれで我慢するかな」


ニコニコしながらフォンダンショコラを頬張るルーカスをリリーナは見つめた。綺麗な銀髪は一つに編み込まれ、大きな瞳には長くフサフサのまつ毛が縁取られていた。人間とは思えない美しい顔の男の子。


(王妃様もそれはそれは綺麗な方だったわね。緊張でよく見れなかったけど。こんな綺麗な方が私と結婚したいのか)


「リリーナ?聞いてるかい?」


「は、はい」

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