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死んだことにされた伯爵令嬢は公爵令嬢として幸せになる  作者: ちる
リリーナ・サイフォールド伯爵令嬢は死んだ
7/26

出会いー過去編ー

リリーナがルーカスと初めて会ったのは5歳の時だった。当時ルーカスの婚約者や側近を見つける為のお茶会が開かれた。

現王妃、当時の王太子妃は妊娠を発表していなかった為、ルーカスと同じ年の者が高位貴族に少なく、男爵家の令息、令嬢まで招待されていた。


リリーナは可愛らしく飾り付けられたお菓子をキラキラとした瞳で見つめ、絵本から飛び出して来たような銀髪でエメラルドグリーンの瞳を持つキラキラした美幼児には興味がなかった。リリーナの指定されたテーブルには同じ伯爵令嬢達が座り、少し離れたテーブルにルーカスと王妃様の席が設けられていた。


時間になり、王妃が立ち上がり、開催の挨拶をする。


「お集まりの皆様、此度の茶会は我が息子、ルーカスの側近候補、婚約者候補を探す催しでもありますが、次代を担う者たちの交流の機会を与えたいという、我が夫、王太子の願いも含まれています。


現在、近隣諸国とは友好な関係を築けています。国内でも飢饉や魔物被害も少なく、過去に類を見ない平和な世になっています。ですか、現状に甘んじる事なく切磋琢磨し、よりよい国になるようこの国を支えてくれることを願います。


近くに花園もありますので、お菓子やお茶と共に楽しんで行って下さいね」


その後、王宮侍女達が紅茶を入れて周り、各々好きな菓子を皿に運んで行く。本来の茶会では侍女に菓子を取ってもらうのだが、今回は各々で取り分けるようだ。侍女が近くにいると子供たちが話しづらいだろうという配慮がされていた。


リリーナが小さな苺の乗ったミルフィーユを口に入れ味わっていると、右隣に座った女の子が話しかけてきた。


「ふふ。そのミルフィーユおいしい?わたしも食べようかなー」


「苺がちょっと酸っぱいけれど美味しいですよ」


「うん。ほんほおいひいわね」


女の子はマナー違反ではあるが口をもぐもぐさせながら返事をした。


「あら、食べてるときはお話ししちゃだめですよ。苺が口から逃げちゃいます」


女の子はコクコクと頷き味わって食べた。


「おかあさまにもよく言われるんだけどすぐわすれちゃって。わたし、ルシータ・アンドルクスよ。けいごはなしよ。同じはくしゃくれいじょうでしょ」


「わかったわ。わたくしはリリーナ・サイフォールドよ。よろしくね」


ルシータは幼い話し方だったが、リリーナと同じ年で一つ下の妹と参加していた。薄茶色の髪にスカイブルーの瞳の姉妹は双子のようにそっくりだった。リリーナ同様、王子にはあまり興味がないらしく、並べられた菓子の話で盛り上がった。


(この子たちとは仲良くなれそうだわ)


保護者達がお茶を飲み終わり、花園の方へ向かう頃、ルーカスがテーブルにやって来た。二人の令嬢が隣を陣取り、リリーナ達をいないものと扱い、居心地が悪かった。そっとルーカスの様子を伺うとパチっと目があった。ちょっと困ったように眉を下げて微笑みを向けられ、リリーナの心臓がバクバクと鼓動を早めた。


「君の食べてるそれは何かな?とても美味しそうに食べるね」


両隣の令嬢達を無視してリリーナに話しかけた。


「あ、これはフォンダンショコラです。中にとろとろのチョコレートが入っているんですよ」


リリーナの話を聞くと、ルーカスが立ち上がり、リリーナの左隣に腰掛けた。両隣にいた令嬢達はリリーナを睨んでいていたたまれない。


「本当だ。美味しそうだね」


キラキラとした笑顔を向けられ、顔に熱が集まるのを感じた。リリーナは新しい皿に新しいフォンダンショコラケーキをよそいルーカスに手渡した。


「よろしかったら、どうぞ。美味しいですよ」


ルーカスは真ん中にナイフを入れ、中のチョコレートに一口大に切ったスポンジ部分をたっぷり浸してから口に入れた。


「うん。本当だ。とても美味しいよ。他にオススメはある?」


「うーん、そうですねー。あ、これはいかがでしょう?」


「へーこんなのもあるのか」


「殿下はあまり甘いものは召し上がりませんか?」


「そうだね。あまり興味がなかったんだけど、君があまりにも美味しそうに食べるから気になってね」


(やだ。食い意地が凄いと思われたかしら)


リリーナは恥ずかしさのあまり顔を赤くしてうつむいてしまった。


「あ、いや、悪い意味じゃないんだ。口いっぱいにほうばってリスみたいで可愛いなぁと思って。あ、いや、あの、悪い意味ではないから」


わたわたと慌てるルーカスを見て、くすっと笑ってしまった。


その後は次のテーブルに移る時間になるまでルーカスとリリーナは二人で会話と菓子を楽しんだ。ただ自己紹介のタイミングを掴めずルーカスに名乗らなかったのは不敬だったかしら?と悶々としていたので、その後にあったルーカスに無視された令嬢達の嫌味はスルーされた。ルシータと彼女の妹が言い返してくれていたのはなんとなく覚えていたので後でお礼の手紙と焼き菓子を送った。


ルーカスが全てのテーブルを回りきった頃、茶会はお開きとなった。


その3日後、リリーナ宛に王妃から茶会の招待状が届いた。


「王妃様から茶会の招待状が届いた。リリーナ、この前の茶会で何か不敬をはたらいたのではないのか?」


「そ、そんなことは・・・・」


(名前を名乗らなかったのは大丈夫だったのかしら?お母様に確認しとけばよかったわ)


「あなた、リリーナはきちんと対応できていたわ。私が見ていたもの。安心なさって」


「そ、そうか」


父はそれきり茶会の話はしなくなった。

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