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死んだことにされた伯爵令嬢は公爵令嬢として幸せになる  作者: ちる
リリーナ・サイフォールド伯爵令嬢は死んだ
2/26

回復

ブックマークありがとうございます!

ストックがほんの少しあるのでできる限り毎日更新していきます。

リリーナが目を覚ますと見慣れない天井が目に入った。そこは馬車ではなく小さな部屋のベットの上だった。とても簡素なその部屋にはほとんど家具はなくベットと小さなテーブルしかなかった。リリーナは何かわからないが違和感を感じた。ふとベットから起き上がってみると、体が重くないことに気づいた。よく見ると手にあの赤い湿疹がない。多少のダルさはあったがそれは体力が落ちたせいだろう。あれほどまでに辛かった苦しさが嘘のように無くなっている。


(きっと叔母さまか叔父様が助けてくださったのね。あ、お母さまはどうなったの?まさかあのまま・・・)


瀕死の状態だった母を思い出し、一気に血の気が引き顔が青ざめていく。母の状態を知りたいような知りたくないような気持ちのまま、ベットに置いてあった呼び出しベルをじっと見つめているとドアがノックされた。


「・・・はい」


どのくらい寝ていたのかは分からないが長い間寝ていたようで声が出にくく、だいぶかすれた声になってしまった。


「失礼いたします」


聞き慣れた女性の声が聞こえ、そっとドアが開いた。小さなカートに紅茶と薬らしき小瓶を載せて彼女は部屋に入ってきた。


リリーナは彼女に駆け寄りたかったが上手く体が動かずベットから転げ落ちてしまった。


「お、お嬢様。ご無理なさらないでください」


メリッサはリリーナを抱き上げ、ベットに寝かせた。よく見るとメリッサはあまり寝ていないようでメイクでは到底隠せない程に濃いクマが目の下に蔓延っていた。目は赤く今にも涙が零れ落ちそうな程潤んだ瞳をしていた。


「お嬢様ぁ〜。本当に良かったです。1週間も目を覚まされなかったのでとても不安でした。症状が重いサリーナ様は2日で目を覚まされたのに。本当に心配しました。アドリード様が目覚めたようだとおっしゃられて、すぐにかけつけたかったのですが、慌てて紅茶をひっくり返してしまって」


張り詰めていた物がプツンと切れたかのように泣き出し、リリーナに縋り付くメリッサの頭を撫でながら母のサリーナも無事だと分かりほっと胸をなで下ろした。


その後、落ち着いたメリッサに紅茶を淹れてもらい、リリーナたちが気を失った後の話を聞いた。






馬車が村に着き、メリッサが馬車の扉を開けると室内はキラキラと光り輝いていた。何か魔法の気配を感じ、二人に何か危害が加えられたのではないかと思い、急いで中に入った。驚いたことに二人共赤い湿疹がなくなっており、穏やかな寝顔をしていた。念の為に脈と呼吸があることを確認し、ほっとしている所に外から声が聞こえた。


「こちらはサイフォールド伯爵家の馬車で間違いありませんでしょうか?どなたかいらっしゃいますか?」


メリッサが馬車から顔を出すと、ガッチリした体格の良い熊みたいな男が不似合いな白い神父服を着て立っていた。メリッサは笑いをグッと堪え返事をした。


「サイフォールド伯爵家の馬車で間違いありませんが、何か御用でしょうか?」


かなり怪しい身なりの男に警戒しつつ、そっと太ももにあるナイフを握った。


「あぁ良かった。これから往診に行くんですがその前に逢えてよかった。妻からお二人の治療を頼まれていまして。あ、私はアドリードと申します。妻はフィーリアです」


その言葉を聞き、メリッサは警戒を緩め、馬車の中に案内した。


リリーナの母のサリーナから妹のフィーリアの夫の話は聞いていた。昔、教会で働いており、国一番の治癒魔法の腕を持つ男。次期教皇候補だったにもかかわらず、フィーリアに一目惚れし、フィーリアの父であるリファード公爵に反対され駆け落ちした。サリーナ曰く見た目と中身が違う変わり者。


(凄い筋肉。この熊みたいな人が神父服着ているなんて怪しすぎよー。本当に治癒魔法が使えるの?)


メリッサは警戒はしていないものの、アドリードの背中に疑いの目を向けた。


「な、な、な、何だこれはーー!?」


アドリードの叫び声が聞こえ、慌てて馬車の中へ入った。


「どうしましたか?お二人に何かありましたか?」


「えっ、あ、あのー・・・完治しています」


「本当ですか!?あぁーありがとうございます」


メリッサは勢いよく頭を下げた。


「いや、あのー。なんというか・・・。私が診たときにはもう完治していまして。この病は自然治癒力で完治するものではないのですが。というか、完治するのは初期の段階の患者だけで、それも治療にはかなりの魔力量を必要とするので、この国だと私ぐらいしか出来ないのです」


アドリードはポリポリと頭を掻きながら説明した。


「で、でも完治しているんですよね!?」


「はい。それは間違いありません。とりあえず診療所の方にお二人を運びたいのですが」


二人を患者用に用意された部屋のベットに寝かせるとアドリードは往診へ出かけて行った。




それから2日後、サリーナが目を覚ました。いつ死んでもおかしくない状態からの完治だった為、目覚めたというよりただ目を開けただけの状態で話をするなんて無理ではあったが、なんとか少量のスープとフィーリアの薬草茶を飲ませることができた。目覚めてから3日経ち、少しづつ回復してきているがまだ寝たきりの状態は変わらない。しかし、症状が母ほど重くなかったリリーナは目を覚まさない。


5日経っても目覚めないリリーナのをアドリードが再度診察していた。その横にはフィーリアとメリッサが立っていた。


「うーん。これは病気のせいではないと思うんですが」


アドリードが不思議そうに首をひねった。


「うーん。あら?これは・・・魔力が変じゃない?これ大丈夫なの?」


フィーリアはリリーナの異変に気づき青ざめた。

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