メリッサの告白ー乙女ゲームの世界ー
コロナの為親子でダウンしてます。暫くは不定期更新にします。
リリーナは次の日、早速ルーカスに手紙を送ってトリニード公爵令嬢になることを伝えた。
(これで大丈夫ね。それにしてもお父様と思っていたのがただの気持ち悪いおじさんだったなんてね。確かに顔は良い方だったけれど、お母様の話を聞くとクソ野郎ね!)
『トントン』
「どうぞ」
「失礼します。お嬢様おはようございます。朝ご飯をお持しました」
メリッサがカートを押して入ってきた。白いまるパンにスクランブルエッグ、ソーセージ、野菜スープ、薬草茶がカートに並んでいる。
「メリッサ叔母様、おはようございます」
メリッサは給仕の手を止めてリリーナを見つめた。
「サリーナ様にお聞きになったんですね。叔母と言っても私は平民ですから、敬語は辞めてください」
少し照れたように微笑み給仕を再開した。
「あのお嬢様、お食事が済みましたらお話したいことがあるのですが、お時間をいただけませんか?」
「大丈夫よ」
リリーナは今日も美味しい食事をお腹いっぱい食べ、薬草茶を飲んで一息ついた頃にメリッサが話し始めた。
「お嬢様は転生という言葉をご存知ですか?」
「てんせい?いえ、知らないわ。どんな意味なの?」
「死んだ魂が新たな命として誕生することです。実は私はメリッサとして産まれる前に違う人として生きた記憶があるのです」
「まぁ。それって凄い話ね!二人分の人格があるってこと?」
「いえ、前の記憶はあくまで記憶で、自分が体験したというより、お芝居を見た感じに近いと思います」
「そうなのね」
「前の私はこの世界とは異なる魔法がない世界で学生をしていました。その世界では娯楽として疑似恋愛を楽しむゲームがありまして、私が好んでやっていたゲームとこの世界がほぼ一緒なんです」
「えっ?どういうこと?」
「そのゲームは主人公のマリアが攻略対象者と呼ばれる見目麗しい男性達の中から一人の男性を選んで恋愛しるんです。その攻略対象者の中にルーカス殿下がいるんです」
「えっ??この世界がゲームの世界で、ルーカス様と恋愛するのは私ではなくて、そのマリアという人だということ??」
「あーいえ、そのゲームではルーカス殿下の元婚約者であるリリーナ様はご病気で亡くなられているんです」
「・・・・・そう」
リリーナは色々思うところがあったがそれをメリッサに話しても仕方ないと思い、続きを促した。
メリッサは物語だと思って聞いてほしいと前置きしてゲームの内容を説明した。このゲームは乙女ゲームと呼ばれ、主人公マリアをプレイヤー、ゲームをする人が操作して架空の恋愛をするお遊びらしい。
マリアは娼婦の母と二人で暮らしていたが、ある日母が貴族の男性と恋に落ち、結婚することになった。その男性は少し前に妻と娘を病で亡くし、塞ぎ込んでいた所、マリアの母と出会い、恋に落ちた。男性はマリアにも親切ですぐに母と結婚し、彼の屋敷に住むことになった。
伯爵令嬢となったマリアは淑女教育を懸命に頑張り、王立学園に入る頃には元平民とは思えない所作を身に着けた。しかし、元平民というだけで学園では複数の生徒から非難の目を向けられ、制服を汚されたり、足を引っ掛けられたりといじめにあっていた。
そんなマリアを攻略対象者が助け、犯人の証拠を集めた所、犯人は攻略対象者の婚約者達だった。卒業パーティーで婚約者達を断罪し、マリアとマリアが選んだ攻略対象者の中の一人が結ばれ、結婚する。
話を聞き終わると、リリーナは疑問点を口にした。
「それで、この世界とそのおとめげーむの世界の共通点はルーカス殿下と私だけなの?」
「いえ、お嬢様と奥様が亡くならなかった事以外は乙女ゲームと一緒なんです」
「・・・・そう」
(なんだか何が何でも私とお母様を亡き者にしたい輩が多いのね)
リリーナはとても複雑な心境だった。父親だと思っていた人に勝手に死亡届を出され、信頼する侍女兼叔母には死んでいたはずなんだと言われている。
(早くこの国から出ていきたいわね)
リリーナは遠い目をして考えることを放棄した。
「あ、あのあくまで乙女ゲームの話であって、私はお嬢様と奥様が生きておられて嬉しいんですよ!」
「ありがとう」
リリーナらぎこちなく微笑んだ。
「何でこんな話をしたかというと、乙女ゲームではマリアの義父はサイフォールド伯爵なんです。そしてマリアは聖魔法が使えます。
実は、昨日、執事長から手紙が届きまして、サイフォールド伯爵が再婚されたそうです。連れ子もいて、名前がマリアです。執事長曰くマリアは大層ルーカス殿下に会いたがっているそうで、婚約者になりたいと伯爵に強請っているみたいです」
「メリッサは私とお母様が生きている以外はおとめげーむと一緒だから、私とルーカス様は結ばれないと言いたいの?」
怒りを含んだ眼差しをメリッサに向けた。
「違います!この先何が起こるか分からないので、乙女ゲームの知識があれば少しは助かるのではないかと思っただけなんです。私は奥様にもお嬢様にも幸せになってもらいたいんです」
「・・・そう」
リリーナはなんだか行き場のない気持ちがモヤモヤしてメリッサにあたってしまった。その後メリッサが泣いて謝り、部屋を出ていってしまった。リリーナは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




