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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

花は色づき、君と散る。

作者: 逸川生糸
掲載日:2021/06/02

 大学生に上がり、私には初の彼氏ができた。相手は同じ学部の子で、友達思いで笑顔が素敵な男の子だった。しかし彼は最近学校に来ておらず、電話も全く通じない。

 そんな私を見かねた幼なじみの愛理は、慰めと称して久しぶりに家に招いてくれた。


「こんなに可愛くていい子の優ちゃんをほったらかしにするなんて、酷い彼氏。別れちゃいなよ」


 別れる、か。そんなこと、思いもしなかった。彼はいつも私のことを気にかけてくれていたし、喧嘩だってしたことがない。連絡が途絶える前も、私が嫌いになったとか、そういう素振りは全く見せていなかった。


「……無理だよ、そんな簡単に。理由だってまだ聞いていないし……」

「そっか。じゃあしょうがないね」


 愛理は、足元で包装されて束になっており、黄色く立派に咲き誇るバラへと視線を落とした。


「ねえ優ちゃん。黄色いバラの花言葉って知ってる?」


 私は花にそこまで詳しくはない。私は、少し寂しそうに顔を覗き込んでくる愛理に、考える素振りもみせずただただ首を横に振った。


「友情、だよ。私は優ちゃんのことが大好き。友達として……いや、それ以上に。優ちゃんはどう?」


 それ以上……というのはよくわからなかったが、友達だと改めて言われるのは嬉しい。私も愛理のことは幼なじみで友人だって、親友だって思っているし、同じく大好きだ。

 私は、照れたようにもじもじと体を揺らす愛理の頭を撫で、優しく抱き締めた。

 

「私も大好きだよ愛理~。悩みを聞いてくれる相手なんて、愛理と彼しかいないよお」

「私と、彼氏さんかぁ」


 愛理は私を華奢な体できゅっと包むと、耳元で囁くように呟いた。


「もしも彼氏さんが死んじゃってたりしたら……優ちゃんはどう思う?」


 少し、ぞっとした。そんなこと想像したくもないし、もしかしたら……なんて考えている私もいるのだ。


「そんなの、悲しいに決まってるよ……もう立ち直れなくなっちゃうかも」

「大丈夫だよ、そうなったら私がずっと側にいてあげるから」

「ありがとう。でもその時は一人にして欲しいかも……」


 愛理は私の背中から両手を放し、すっくと立ち上がった。


「……ねえ優ちゃん。そんなに彼氏さんが好き?」


 さっきから、似たような質問ばかりだ。今日は愛理が相談を聞いてくれる、慰めてくれるはずだったんだけど。


「好き……だけど、どうして?」

「私とどっちが好き?」


 質問を、質問で返された。先程から愛理の表情がどんどん暗くなっているように見えるのは、気のせいだろうか。

 しかも、彼氏と愛理のどっちが好きかだなんて、決められるはずがない。


「どっちも好きだよ」

「……それじゃやだ」


 ぼそぼそとこもったように呟く愛理。

 いつもと様子が違う彼女に戸惑いながらも、私は宥めるように彼女へと手を伸ばした。


「仕方ないじゃん、選べるわけないよそんなの」

「なんで……私がいれば、それでいいじゃない!」


 愛理は涙を浮かべ、私を突き飛ばした挙げ句悲鳴のように叫んだ。

 沸々と沸き上がる恐怖。得たいの知れない悪寒。

 私は尻餅をついたまま、呆然と愛理を見上げることしかできなかった。


「……ねえ優ちゃん。黄色いバラの花言葉って知ってる?」


 愛理は黄色いバラの束から鋭利な何かを取り出した。私はそれが何かすぐに理解したが、頭は無意識に気づかないフリを強要していた。


「ゆ、友情……だよね……?」

「うん。でも、もう一つあるんだ」


 愛理は笑顔を浮かべたままナイフを私の首に突き立て、慣れた手つきでスッと横に薙いだ。


「嫉妬。……優ちゃんは誰にも渡さないから」


 あまりに一瞬のことで、何が起こったのか思考が追い付かない。だんだんと狭まる視界の中、愛理の嬉しそうな表情だけが映っていた。


「優ちゃんの血、赤くてとっても綺麗……。そうだ、赤いバラの花言葉も教えてあげるね」


 愛理は、背中から床に崩れ落ちた私の両手を無理やり組ませ、隙間に赤く染まったバラの茎を差し込んだ。


「熱烈な恋……だよ。一緒に逝こ? 優ちゃん」


 ナイフは再び赤い花を咲かせ、からんころんと二人の幸せを祝っていた。

お読み頂きありがとうございます!

普段は「バケモノグラシ。」というギャグ調のラブコメ書いてます、もしよろしければそちらもどうぞ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄く素敵な作品でした。 こういう恋愛もなかなか…… 面白い作品を作っていただきありがとうございました
[良い点] 花言葉をオチに使ったのは上手いです。 [気になる点] また人気が付かなそうなジャンル攻めてますね。 これが女友達じゃなくて男友達だったら日間ランキング表紙にも入れたくらいの出来なのに。 […
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