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6 増えていく仕事と企業契約

書いたり消したりでこれ

「ただいまー」

「……おかえり」

「あれ、今日収録とか言ってなかったっけ?」

「14時からだからまだ時間ある……はぁ」

「バレたことまだ気にしてるの?」

「そんな簡単に流せないって……」


 ありさちゃんの豪邸から帰宅するとなんかすごいしょげたフィーに出迎えられた。昨日のVtuberバレの件だと思うけど。


「まあそれはそうと昨日言ってた3期生のキャラデザ担当私だから」

「それは昨日マネージャーに電話した時に聞かされてる。というか6人全員まとめてとか初めて聞いたんですけど」

「やっぱ普通ばらけるもんだよねー、こういうの。まあ、全員分の情報は持ってこれてるからあとは描き起こすだけだからいいけど」

「お姉ちゃんならそのくらい余裕か。それよか、朝は何か食べてるの?」

「んにゃ、まだ食べてない」


 近いうちにデビューとかいう先行情報が出た以上早期に描き上げるのにこしたことはないので、朝起きて早々に豪邸からお暇して帰ってきてるから何も食べてない。


「りょーかい、なんか適当に作るから待ってて」

「はーい。昨日泊ってた子はもう帰ったの?」

「まだ部屋で寝てるよ……寝させるの大変だったよ」

「……年下?」

「同い年。寝るとき家だと全裸らしいから服脱ごうとするの止めるのに時間食った」

「あー、お疲れ?」

「ありがと」


 ダイニングテーブルに座ってキッチンに入って朝食つくりをしだしたフィーの背中を見る。私も作れるけど家庭スキルはフィーの方が高い、私が作るよりフィーが作った方が時間も効率もいい。

 ぼんやりとこの後描く3期生のキャラデザを思い浮かべる。

 凛ちゃんの猫娘、エリサちゃんの雪女、紅葉のカグヤ姫、海里の人魚姫、さつきちゃんの魔女にありさちゃんの天女。

 ラフはもう頭の中にあるからあとは描き起こして調整するだけ。


「ふぁ、ぁぁ……おはよー、なんかいい匂いするけどご飯だったりするー?」

「おはよー、詩歌……服どこいったの?」

「んー、あー……うん、部屋?」


 鈴を転がしたような、耳に入る声が心地いい声でしゃべりながらリビングに入ってきた

のは、グラデーションカラーで染められた長髪にキャミソールにショーツという恰好の女性。髪の色もだけど、フィーが言ったように服はどうしたの服は。


「んぅー? おお! フィーがいつもいってた双子のお姉ちゃん? 初めましてーぶいちゅーぶ2期生歌鐘詩歌ですー。あ、本名でもいいか、宝鐘天音、22歳でーす」


 昨日の配信を聞いたときもだけどなんか喋り方が緩い。服装含め全体的に緩い。


「自己紹介とかどうでもいいから服着ておいで」

「女しかいないしいいじゃん別にー」

「朝ごはん抜き」

「着てきまーす」


 フィーの朝食を人質にとった? 宣告でおとなしく服を着に戻っていった天音。スタイルがいいから余計緩さがきわだってる。


「昨日はあれでキャミもブラもつけてなかったからね、あれ」

「露出狂なの?」

「裸族らしいよ」

「Vtuberになる人って個性濃い人しかいなくない?」

「逆に言うけど個性なきゃやってけないって、Vtuberなんて」


 フライパンから皿に料理を移してテーブルに持ってきたフィー。確かにネットを通じて数多の人間を相手にする以上一定以上の個性がなきゃ埋没する。ただでさえ個人のVtuberもごまんといるみたいだし。なんだっけLive2Dだっけ、セルフ受肉できるアプリの名前。

 

「簡単だけどハムエッグできたよっと。はい、ソース」

「ん、ありがと」


 ソースの容器を渡してきたフィーは自分のには塩コショウをかけて食べてる。よそはこの辺なんか面倒なやり取りがあるらしいけどうちはそんな面倒な事せずに各々好きに食べてる。


「着てきたよー」

「ん、天音の分それね」

「ありがとー、マヨネーズある?」


 どうやらマヨネーズ派のようで。にしてもマヨネーズは初めて聞いたかも、ハムエッグいろんなのかけて食べる人いるねー。


「そういえばさー、あの件言ったのー?」

「あ、忘れてた」

「あの件?」

「昨日配信で名前出したけどくるみちゃんの件。今スランプ中らしくて絵が描けないからくるみちゃんにやってもらう予定だった案件とかどうしようかってなってるんだよね」

「ふーん、スランプねえ」

「そこでお姉ちゃんに依頼しようかって話が出てるんだけど」

「断る」

「だよねー、一応100%断られる前提で聞いてみるとは言ったからいいけど」

「私が受けてる仕事は3期生がらみだけで他は知らないし、他ののクリエイターがやる予定だった仕事ならなおさら嫌」


 スランプだかなんだか知らないけどそんなの本人の問題だし当人がどうにかしてほしい。今は3期生以外のことに注力したくないし。


「そうなるとー、卍ちゃんがどうにかするしかない訳だねー」

「マネージャーにはそう伝えとくね」

「ん、お願い」


 頭の中で今日やる作業の予定を組み立てているとスマホに通知が着て相手を見れば朱音さん。送信内容としては本社の方に来れるかというもので、今しがた聞いた話といいなんか都合がいいというかなんというか。

 フィーが出社する14時に合わせていこうかな。


*** *** ***


「うちと正式に契約雇用を結びませんか?」

「企業所属になれ、と?」

「端的に言えばそうなりますね。今後の展開予定としましてもフリーランスの状態よりも所属していただいた方が都合がいい、というのがありますね」


 前回通された大部屋に通された何を切り出されるのかと思えば、なるほど、雇用契約ね……まあ、確定申告とか面倒な奴全部やってくれるのと社会保険は強みか。それにこれといって断る理由もないし、今かかえてる他の案件もないから問題なし。


「通帳も印鑑も持ってきてないですよ」

「通帳はまた後日でも大丈夫、印鑑も電子印鑑を使ってますので大丈夫です。でも、その返答だといい返事だと思っていいんですよね?」

「特に断る理由もないので」

「よかったです、色々とやってもらいたい仕事があったので助かりました。ひとまずこの書面を読んで頂いてサインをいただければ」


 渡された書面には契約内容含めた規約が書かれていて最後にサイン項目がる一般的な契約書類。特に不明点もないし契約内容に含みもおかしな点もない……ん、サインっと。


「はい、ありがとうございます。電子印鑑はこのサインで登録させてもらいますね。それではさっそくなんですけど3期生がらみで今会議を開いているので来ていただいてもいいですか?」


 拒否権もこれといってない感じだし黙ってついて行って別の会議室に通されると、ここに来てさっき別れたフィーと天音、それともう一人見知らぬピンク髪の女性。


「だからさっきから何度も言ってるけど断られたから無理だって」

「そんあぁ、無理だよぉ今そんなすごい絵描けないもん……」

「まーだ言ってるのー? いい加減描かないとどうにもなんないよー?」

「だってぇ……」


 ああ、なんとなく検討はついた。あのピンク髪の人が画狂くるみか。

 会議室には大きめのテーブルが置いてあってそこにはフィーと天音、マネージャーらしき人と渦中の人物になってる画狂くるみが座って何やら話してる最中っぽいんだけど、内容は十中八九朝方フィーが言ってたやつだよねこれ。


「氷川さん、アシュリーさん連れてきましたよ。雇用の件も契約済みです」

「りょーかい。どうも初めまして、2期生のマネージャーをしています氷川愛理といいます」

「アシュリー・フレバンスです。それでこれは3期生がらみの話ということでいいんですか?」

「話が早いようで助かるわ。3期生のデビューテイザー動画に使う絵をくるみに描いてもらう予定だったんだけど、この通りスランプで描けないってなっちゃってね。本来なら3期生のキャラデザもくるみと半々でやってもらう話だったんだけど、こんな調子だからアシュリーさんに発注させてもらったわけ」


 結果的に6人分のキャラデザは問題なく見通しも立ってるからいいとして、企業案件方面に影響出してるってどうなのよ実際。Vtuberが本職でその延長戦での話だとしても。


「はあ、そうですか。どっちにしろテイザー動画ならもう構図も案もあるのでこっちでやりますけど」


 フィー、音桜リーチェの絵を描いたときにTwitterでやったアンケートの結果、全期生の絵を描く。体のいい具合に使いどころがやってきたというか、この際テイザー動画に盛り込んでしまおうと考えてる。動画制作はフィーに投げるけど。


「ふぇ?」

「おー、仕事がはやーい」

「その動画、素材はお姉ちゃんが描くとしても作るの私だよねそれ」

「3期生の絵は今週で初期案あげるとして、そこから擦り合わせで加筆修正するとして素材自体は2週間でいけると思う」

「まあ、動画自体は2.3日あれば出来るからいいけど」


 よし、言質は取った。

 画狂くるみと氷川さんを置き去りに話を進めていく。どっちにしろ3期生案件なら私の領分だしなんら問題はない。


「ん、じゃあ私帰るから頑張ってね」


 なんか唖然とした顔を向けられたけどここにいる意味がないしそれなら家に帰って絵を仕上げてた方が有意義だし。

 さーて家帰って24時間引きこもり作業しーようっと。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても面白かったです。出来れば続き読みたいです。
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