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10 体つくりと助け船

本日2話目の投稿です

「そういえばお姉ちゃん珍しく夕飯時に下に降りてきたけど描いてなかったの?」

「描いてたよ?」


 フィーが言うように私は今描く手を止めてリビングで夕飯を食べてる。作業に入る前ににフィーが言っていたカレー、それとサラダに唐揚げ。

 

「……描き上げたとかいわないよね?」

「さすがにそれないって。装飾とかタトゥーのデザインしただけだから」

「エルフなのにタトゥーいれるんだ」

「衣装だけじゃなんかものさみしいからね。装飾と一緒に入れちゃおうかなって思って」


 とはいってもがっつり彫り込むようなものじゃなくてアクセント程度のものだけど。実際このタトゥーのデザインが一番面倒だったりするからキャラデザする前に描き始めたってのはある。

 あまり凝ったものをデザインしてもくどくなるし、なんなら入れ墨としての悪印象を抱かせるしでいい具合のデザインを見繕うのが面倒ってのもあって先にやってた。

 前に何回かデザインしたのもあったからそれをもとにデザインしてるからそこまで時間はかからなかったけれども。


「まあこの短時間で描き上げてないってのもだけど、デザイン工程までしか進んでないってのが怖いよね。普段ならラフくらいは終わらせてるでしょ?」

「まあ締め日は特に指定されてないし時間はあるからってのもあるけど、自分の分身になるんだし描き込みたいってのもある」

「完成絵を見たいような見たくないような……」

「ずいぶんな言いようされてるんですけど」

「だってねえ? じっくり時間かけてお姉ちゃんが絵描くとかどんな化け物が生み出されることか」

「なんか前にも似たような事言ってたきもするけど、加減する気ないしね」


 あの子らの立ち絵も手を抜いたつもりは一切ない、配信者として十分に渡り歩いていけるものを描きあげてる。それと比べて私の立ち位置としては純粋な配信者ではなく企業所属の絵師かつ、3期生のママ。この立ち位置にいる私があの子らと同じ絵柄でいいのかといわれれば言いわけもなく、私の匂いは残すけれども全部違う絵柄ではなくがっつり私の絵柄を出していくものにする。

 3期生の絵柄と乖離させて差別化っていう名目と産みの親ってすごい方が自慢できるでしょ? それにこれは私が配信者をしている間の体になるんだから徹底的にやる。それもあってあれこれこだわって描いてるだけなんだけどね。


「映像班が泣かなきゃいいけどねー」

「まあどうにかなるでしょ」

「まあそうだよねえ……お姉ちゃんってモデリングできるっけ?」

「一応できるけど本職には劣るとは思うけどどうして?」

「あれだったらお姉ちゃんがモデリングまでやっちゃえばいいんじゃないって思って」

「まあ、クリスタのややこしい操作と比べるわけじゃないけどほぼほぼ専門外だからねモデリングは。さすがにやんないかな」


 やりこめば出来るとは思うけどやりこんでまで取得する気も起きなかったしね。

 確かに絵を描くことに関してはある程度収めてきたつもりだけど、モデリングはなんとなく肌に合わなかったというか、毛色が違ったというか。

 結果的に自分で満足いくものを作れなったという時点でダメだったんだと思う。


「んぅ?」

「仕事?」


 フィーのスマホにディスコードに来た通知。普段なら仕事かなーとはおもうけど、配信がらみかな?


「今夜コラボしよーだってさ」

「コラボって当日決まるもんだっけ」

「んー、前日とかもあるけど大体数日前とかだね。大型とかだと1か月前から準備したりとかもあるけど」

「そんな前から準備って一体なにやるの?」

「対戦ゲーム系とかの練習期間とかかな、まあものによるけどコラボ内容によりけりって感じだね。箱内ならいいけど外箱とのコラボだったらまだいろいろある感じ」

「うわぁ、コラボめんどくさそう……」

「自主的コラボオンリーならいいけど、企業所属ともなれば運営主導のとか案件とかもあるからねー。やらないってわけにはいかないけど、お姉ちゃんの場合はどうなんだろうね。Vtubeとはいえ専属絵師枠での所属だし」

「3期生デビューの1か月後にデビューしてコラボ配信する、くらいしか今のところ聞いてないからそのへんはなんとも。まあやるならやるで何かしらあるでしょ」


 



「んぁ……」


 朝だぁ……あれ、寝落ちしてる……。昨日夕飯食べてお風呂入って作業の続きをして……ん、作業データはちゃんと保存出来てるから問題なし、と。寝落ちとかするの結構久しぶりな気もするけどそんなに疲れ溜まってたかな。まあ3徹繰り返してたっていう思い当たる原因はあるんだけれども。

 とりあえず今の時間は何時かなっと……朝の6時。二度寝するか、作業の続きをするか微妙に悩む時間だけどもどうしようか。


「装飾デザインとタトゥーのデザインは完成してる。肝心のキャラデザもざっくりと構想はできてるから描き起こして選別するだけだしそこまでの急ぎってわけでもない、そうなると二度寝しても問題ないかなー」


 思い立ったらということで保存状況を確認するために起動したパソコンをシャットダウンしてベッドに。マットレスに掛布団、枕含めベッド一式で3桁万円ともなれば寝入り具合は言うまでもなく、意識はすぐ夢の世界に飛んだ。


*** *** ***


「……」


 二度寝からの目覚め。ぼんやりとする頭を働かせながらベッドから起きてスマホを見れば、11時過ぎ。これといった通知も来てない

 のそりと体を起こして低稼働の頭をどうにか働かせつつ部屋から出て下に降りると、


「あ、お邪魔してます」

「……んぁ」


 ソファになぜか朱音さんがいた。その対面にはフィーも座って一緒にパンケーキを食べてた……え、なにそれ作ったの?


「お姉ちゃんの分も冷蔵庫入れてるよ。チョコソースとかはちみつは好きな量かけてね」

「普段の配信と作業量を見てる分、リーチェさんが作ったのはいまだに信じられないですね」

「生活能力なさすぎってコメントが最近増えてきたから配分割り振って料理してるだけんんだけどね。料理してる証拠の写真とか動画上げたらなんか騒がれたりしたけど」


 たまに作った後に写真撮ったりしてたのはそれでか。

 冷蔵庫を開けて中を見れば二段に積まれたパンケーキ。普通に焼き上げたパンケーキかと思ったけど、店とかで見るメレンゲを大量に入れて作るタイプっぽい。うちにハンドミキサーなんて物あったんだ……。

 冷蔵庫から出してレンジで温めてチョコソースをかけてソファへ持っていく……、改めて考えてもなんで朱音さんがうちにいてフィーが作ったであろうパンケーキを食べてるんだろうか。


「今後の活動方針とマネージャー変更をお伝えによらせてもらった感じですね」

「方針はともかくマネージャー変更ですか」

「現段階では私の受け持ちが3期生とアシュリーさんなんですけど、来週からリーチェっさんも私が見ることになりまして。リーチェさんとアシュリーさんが共同で何かしらする機会も多くなるのなら一括りで見た方がいいだろうと言う事が会議で決まった感じですね」

「他の2期生はそのまま氷川さんが?」

「ですね、そこは現状維持です。ですがくるみさんの件もありますので変動あり、という感じで一時保留の意味合いの方が強いですね」

「スランプ入って配信のメンタルも落差激しくなってきてるしね、くるみちゃん。会議でも休止させて様子見したらどうか、って言われてるらしいよ」


 休止、ねえ。あの子のスランプ具合で休止なんてさせたら二度と這い上がれないどころか引退まで行くと思うんだけどその辺どう考えてるんだろ。

 

「あれで休止とかさせたら引退まで行きそうだからさせない方がいいとは思うんだけど」


 案の定というかフィーも同じ考えだったようで。

 まあこの考えに行きついてるのがその会議で案を出した人間含めどれだけいるかって話なんだけど。


「まあそのあたりは氷川さんとくるみさんが結論を出すと思うので一旦置いておくとしましょう」

「フィーも同じ考えって事でいいの?

「うん」


 クリエイターとしては乗り越えるのもそこで潰れるのも本人次第、とは思ってるんだろうけど同期としてはそうでもないんでしょうね。さっきから他人事の用には喋ってるけど表情も声もまるで正反対。

最近で言えば時折話題が出るたびに抱えてる仕事のフォローを私にできないか聞いてくるときも、2期生の話になった時の表情や声色がかなり嬉しそうで上機嫌だったり。

 朱音さんが私ら2人のマネージャーになったのも考えすぎでなければ画狂くるみのフォロー、もしくはスランプ脱出のきっかけとしての役割を私に担えないかの打算をするのも含まれてると思ってる。


「……はぁ」

「……お姉ちゃん?」

「締め切り近い順にリストアップして持ってきて」

「……いいの? あんなに嫌だって言ってたのに」

「嫌も何も、もうどうにも首が回らないんでしょ」


 そう切り返してみれば信じられないものを見る目で見てくるフィー、どこかしら安堵した顔をしてる朱音さんがいた。

 私の考えは遠からず当たってたのかな、これは。

 まあそれはそうとフィー、お前そんな事いう奴じゃないだろって顔で見てくるのやめな? 確かに普段の私なら絶対に言わない事だけどさ。


「それではお言葉に甘えてさせてもらいますね」


 それからの朱音さんの行動は早く、パンケーキを食べ終えると生き生きとした顔で帰っていった。しばらくしたら朱音さんから私宛にリストアップされたものがメールで届くとは思う。

 締め切り近い順とは言ったけど一体何件くるのやら。


「あ、そうそう。フィー、朱音さんに言い忘れたけど画狂くるみに言っといて、私を追いかけるのはやめなさいって」


 *** *** ***


「それで? 菓子折りを持ってきた、と」

「ぅぁ……、ぁ、うん」


 目の前には限界化したヲタクと化した画狂くるみがいる。そのとなりにはうちに連れてきたフィーとなぜかいる歌鐘詩歌。どうせ暇だとか面白そうとかでついてきたんだろうけど。

 フィーからざっくり連れてくるにあたっての経緯は聞いたけど、私があれから画狂くるみの抱えていた仕事の約9割が朱音さんから送られてきてそれを全て処理し終えたのがその4日後。画狂くるみが手元に残った仕事を終えたのがその5日後、つまり今日な訳で。描き終えた絵を納品するなりフィーに連絡を取って菓子折りを持ってうちに来た、が一連の流れ。


「なんかめちゃくちゃ挙動不審なんだけど」

「そりゃめちゃくちゃ意識してる相手に仕事のしりぬぐいしてもらった挙句に絵柄も完璧に模倣されたらねえ」

「ぅぁぁああああっそこまではっきり言わなくてもいいじゃん!!!!」

「ひと様の家でうるさいよー、卍ちゃん」


 リビングに通してソファに座って話してたんだけど目の前にいた画狂くるみが発狂した。うわぁ、目の前で見ると画面越しと比べてかなり生々しい。


「だって、だってだってだってぇぇぇぇぇっ!!! あんなに普段から意識しまくってる上にプライド捨ててフォロー頼んだけど一回断られどうしようとか思ってたらしれっと抱えてた仕事のほぼほぼ全部やってもらって絵柄も完全模倣されたとかもううぁぁあああああああッ!!!」

「元気だねぇ、くるみちゃん」

「これ元気とかいう奴じゃないでしょ」

「これも一種の個性って思って見たら微笑ましいものだよ、お姉ちゃん」


 これを微笑ましいとか普段からどれだけ見慣れてるのよ一体。


「それよりも、他にも言うことあるでしょくるみちゃん」

「……ありがとう」


 髪をかき乱しながら発狂していた画狂くるみがフィーの一言でピタリと動きを止め、若干瞳孔が開いてる目を私に向けながら一言つぶやいた。

 まあそれも苦々しい顔をしながらだけれども。


「今回は朱音さんとフィーの顔に免じてフォローに入ったけど、今後はスケジュールの管理どうにかしないとまた同じことになるわよ」

「そのへんは大丈夫だよー氷川さんが卍ちゃんの仕事一時管理することになったからねー。今までみたいに勝手に受けることもできなくなったからもう大丈夫だよー」


 そもそもだけど、企業所属の人間が事務所通さずに仕事受けてパンクしてる事態がおかしいんだけれどもね。まあ氷川さんが一時管理するみたいだし大丈夫なのかな?


「そう、それならまあいいけど。それで? 他に何かあるんでしょ?」

「あ、わかっちゃう?」

「うちにくるだけならフィーだけで事足りるでしょ、わざわざ3人で来なくても」

「だよねー、まあバレたならいっか。今度2期生で出すアルバムにつける特典ステッカーとカバーイラストの絵を描いて欲しいなーって」


 そう切り出した詩歌の隣を見れば案の定血涙を流さんばかりに目を見開いて、というか瞳孔も開いてこっちをみてる画狂くるみがいた。

 いや、あんた今仕事受けても絵が描けないなら意味ないでしょうが。


「まあ別にいいけど。私に言う前に朱音さんに話は通してるんでしょ、どうせ」

「うんー、今のところ公式追加で発注する仕事はないから本人から許可もらえるならいいよーって」


 投げやりというか私に扱いを心得ているというか。3期生がらみの絵も早々に仕上げてるし手が空いてるといえばあいてるから引き受けても問題はない。


「受けるのはいいけど納期は?」

「できれば来月中かなー。数量限定でサイン付きにする予定だから」

「仕上がったステッカーにサイン描いて封入して発送、になるからね。発送予定期間の目安もそれで決めるみたいだから」


 サインを描いて封入、ねえ。どんだけ書くのか知らないけどそれなりの量書くのよねきっと。


「あとそれとね、今日うちでオフコラボしていい?」


 菓子折り持ってきた事よりそっちが本命でしょ絶対。


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