苦渋の選択
桃がおかしい。
桃がおかしいのは今に始まったことでは無いが、昼休みが終わってからは拍車をかけておかしい。
話しかけようとすると他のやつのとこに行くし。かと思いきや、チラチラこっちの様子を伺ってる。
「あいつマジで何がしたいんだ?」
別に特に用がある訳ではないが、こうも露骨に避けられると釈然としねぇな。よし。
「おい!桃!」
「おっと、、野澤くんさっきの授業のノートみせてもらってもいいかい?」
「いいけど、 、僕の名前野村、、」
「おい!無視すんな!」
「無視なんかしてないとも!今は野澤くんと話す気分なのさ」
顔を逸らしながら言い訳をする桃を見ておおよその合点がいった。大方水無月、榊あたりの入れ知恵だろう。一緒に飯食ってたし。
「・・・はぁ〜。まぁいいや」
俺は踵を返して自分の席に帰る。
何を企んでるのか気にならない事も無いけど、アイツらの企みに関わるとロクな事にならないのは目に見えてる。君子危うきに近寄らずって奴だな。つまり放置だ。
「ちょっ蓮!?何か私に用があったんじゃないの?それをあっさり引いていいのかい!?」
「はぁ〜?お前野澤に用事あるんだろ?ならいいわ。別に大した用事でもねぇーし」
「僕野村なんだけど、、、」
「なんでそんなにつれないの!あっ!もしかして嫉妬して不機嫌なのかなぁ?」
ニヤニヤしながら近づいてくる桃にチョッブを入れてため息をつく。
「お前に嫉妬?俺が?なんで?」
「ぐっ!そんな心底不思議そうな顔されると傷つくんだけど」
「そもそも嫉妬する理由ねーし」
「だって君を蔑ろにして他の子と話してたし、少しくらい気にしてくれてもいいじゃない」
「はぁ〜」
「なにさ!」
なにを企んでいたかと思いきや、そんなことか。
まったく、、。
「あれぐらいの事で蔑ろにされてるとも思わねーし、俺と違ってお前は友達多いし気にする必要もねえだろ」
「そうだけど、、」
理解はしているけど、どこか納得していていない桃を見て少し笑ってしまう。もしかして、素っ気なくして構って欲しかったのか?
「なんで笑うんだい?」
「なんつーか、お前昔から遠慮なくグイグイ来るくせに不器用っていうか空回りが多いんだよな」
「ぐぬぬ、、どこか否定できないのが悔しい」
「まぁ、、でもお前のそういう不器用なところは結構すきだぜ?」
なんか1人でクルクル回ってるハムスターみたいでなんか面白いし。口にはしないけど少し可愛いとも思う。、、、うん。死んでも口にしないけど。
「ぐはぁ!唐突に来る蓮の直球は威力がた、たきゃい、、はぁ〜幸せ♪」
いきなり胸を抑えてうずくまったかと思いきや、幸せそうな顔で惚けてしまった。忙しいやつ。
一方。その様子を眺めていた二人はと言うと。
「・・・結局いつも通り」
「あれは桃が堪え性無さすぎるのよ。もっと引かないとこの作戦の意味はないわ」
「確かに。あれじゃあ唯の構ってちゃんなだけ」
「まぁある意味上手く言ったといえばいったのかしら?」
「幸せそうだしいいと思う」
「それもそうね。にしても相変わらず桃はカウンターに弱いわね。いつもはグイグイ行く癖に」
「そこが可愛い」
「確かにね〜」
「さて、バカップルの出歯亀もやめにして帰りましょうか」
「賛成」
友人の勇姿(?)を見届けた二人は荷物を纏め教室を後にした。
こうして、作戦は桃が辛抱堪らず、失敗に終わった。
本日の勝利:各務原 蓮(無自覚カウンターにより)
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