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二章

 翌日。月曜日。

 筋肉痛の身体をなんとかベッドから起こし、顔を洗う。クローゼットから濃紺のジャケットにスラックスを取り出しジャケットだけをベッドの上に投げスラックスを穿く。そしてゆうべアイロンをかけておいたシャツを着込んでネクタイを締めた。これだけ見るとそのへんの男子高校生の制服なんかと大して変わらない。しかし、机の引き出しから金のモール三本が縫い付けられた肩章を取り出しシャツに留め、左胸にこれまた金色に輝くウイングマークを着ければもう、どこからどうみても普通の高校生ではなくなる。ウイングマークの真ん中には『Ⅱ』の文字の刺繍がある。さきほどベッドに投げたシングル三つボタンのジャケットの袖にも、金色のモールが三本ぐるりと縫い付けられていた。

 航学操縦科の制服だ。

 肩章その他は全て現役パイロットと同じものを着用しているが、唯一違う点がある。ジャケットがシングルになっているところだ。現役のパイロットはダブルのジャケットを着ている。現役と間違われないようにという配慮らしい。

 首輪をかけて金の帽章の付いた制帽を脇に抱え――、おっと、ジャケットに付けるウイングマークを忘れていた。ジャケットの左胸にもメタルの金色『Ⅱ』文字のウイングマークを付け、フライトバッグではなく手提げ鞄を持って部屋を出た。時刻は7時45分。弘人の部屋のドアを殴り叩いてから食堂に向かっても、まだ大分余裕がありそうだ。

 どかんばこん。

 それに続いて声がする。

 「うぃーす。起きてるよー」

 二つとなりの部屋のドアを鞄で殴ると、寝ぼけ眼で健と同じ身なりの弘人が出てきた。寝癖はまだ直りきっていないようだけれど。

 「朝メシいこうぜ」

 「おいーっす」と言いながら制帽と鞄を抱えて出てくる弘人。そのまま部屋を出てバタン、と音を立てながらドアが閉まる――寸前のところで、弘人の身なりに異変を察しドアの隙間に革靴のつま先を突っ込んだ。

 「首輪っ!首輪忘れてる!」

 「首輪ぁ?ああ~、首輪ねぇ~」

 寝ぼけパイロットは首をくくりにのそのそと部屋へ戻って行った。


 一週間に一度だけ、日本全国に散らばり訓練に励む第十二期の航学生が全員揃う。それがこの月曜日の朝である。なんのために多忙な学生諸君をわざわざ集めるかとお思いだろうが何を隠そう、ただのHRのためである。これのため、日曜の夜までには全生徒が羽田に集まっているように訓練スケジュールが組まれている。

 航学にも普通の学校のようにクラス分けがあり、中期課程では一学年に5クラスが存在する。一つのクラスには必ず操縦科と整備科の生徒が8人づつ、そして客室科の生徒が24人の計40人が在籍しており、前年度の成績順に1組から5組まで振り分けられる。操縦科の主席生徒は1組、次席は2組以下同じく、といった具合だ。6席以降はまた1組から順に振り分けられる。操縦科の制服にあるウイングマークの真ん中の数字はそのクラス番号を示しており、ウイングマークを付けない他学科の生徒も胸にクラスバッチが付いている。

 そしてこのウイングマーク&バッジ。クラス番号以外にも、あることが一目でわかるようになっている。

 

 月曜の朝だけは盛況になる食堂。盛況とはいっても、席の半分よりちょっと多いくらいが埋まっているだけ。食堂の食事は個室に持ち帰って食べる事が許されているということもあるし、何よりこれは客室科に多いのだが、前日に外で買っておいたパンやおにぎりで朝食を済ませてしまう生徒もいる。それでも、昨日の昼に比べればこの人数は大混雑といってもいいくらい。健と弘人はは入学してからずっと、朝は食堂で摂るようにしている。理由は無い。ただの趣向であり生活習慣だ。

 焼き魚と卵焼きにお新香という、どノーマルな朝定食を二人でつつく。中央の柱に掛けられたテレビでは朝のニュースが流れていた。内容は国交省の大臣が代わるとかなんとか。

 「あれ。あのじじい辞めんの?」

 さっきよりかは目の覚めていそうな弘人が、味噌汁をすすりながら呟いた。

 「秘書がなんかやらかした責任をとるんだってさ。金曜にニュースでそんなことやってた」

 「次は誰?」

 「さあ。また違うじじいになるんだろうよ。それより、俺先に行くわ。プリント取りに教官室来いって連絡来てたから」

 時刻は8時15分。45分からのHRまでには大分時間はあるものの、ゆうべHR担任の内田教官からメールが入っていたのでここらで席を立つ。メールには級長と副級長とでHRで使うプリントを始業前に教室に運んでおくように、とあった。

 「んー、了解。級長は大変だねぇ」

 そう言いぽりぽりと沢庵漬けを噛む弘人のウイングマークには『Ⅳ』の文字。彼は4組なので健とはクラスが違う。そしてもうひとつ。

 弘人のウイングマークは銀色だ。

 各学科の上位5人はウイングマークもしくはクラスバッジは金色のものを着用する。それ以外は全員銀色。金色保持者は各クラスに操縦、整備、客室から一人づつ配置されており、この三人はクラス委員を任されているいるのだ。そして何故か操縦が級長、客室が副級長、整備が書記をやるのが通例になっている。昔からの伝統なのだという。

 そんなわけで金地に『Ⅱ』文字のウイングマークの保持者である健は、2組の級長という大変有難くもよくわからない役職に就いている。級長らしいことをするのはHRのある時くらいしかない。それこそ、今日みたいな荷物運びくらいだ。

 

 制帽を被り、一応軽くネクタイを締め直して「失礼します」と言いながら教官室のドアを開ける。中にいる教官は皆現役のパイロットや整備士やCA。それもベテランばかりだ。顔なじみであるといっても多少緊張する。

 内田教官の机を見ると教官の姿は無い。席を外しているようだった。無造作に置かれた本やファイルは運航規則や航空法、気象科学のものがほとんどだった。その隣にはプリントの山、そして山の上に『これをHRまでに配っておくように』と書かれたメモがあった。メモを裏返し胸ポケットからペンを取り出して『受領しました 新川』と走り書いて、机に置いておいた。

 両手の塞がれた状態でドアを開けるのはなかなか難しい。左半身をドアに密着させ、丸いドアノブに左腕を擦らせて回そうとする。が、一体なんの生地でできているのかは知らないが、シングル三つボタンのジャケットの摩擦係数は相当低いようだった。ガチャガチャとノブを揺らせるだけでオープンポジションまで回ってはくれない。

 と、その最中。

 がちゃり。とドアが開いた。もちろん外側から。

 「うおっ!」

 「きゃっ!」

 健が驚きに声を上げたのと、ドアの向こう側から女の子が声を上げたのはほとんど同時だった。健からすればただ単に不意にドアが開いただけだが、あちらから見ればばプリントの山を抱えたパイロットもどきがショルダータックルをかましてきたのだから、その驚きはこちらの比では無いはずだ。驚かせたのは完全にこっち。なのに。

 「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 なんとまあ、謝られてしまった。ぺこぺこと小さい頭を上下させている。顔の上下に合わせ、ふわふわもふもふなボブの髪がわっさわっさと揺れ、おまけに大きなお胸も上下運動する。その様子を見て、健はこの女の子が誰であるかを察した。

 「あ、あの!ノックしようとしたらドアノブが少し動いたので待っていたのですけれど、なかなか出てこないのでこちらから開けてしまいました!本当にごめんなさい!て、あっ、し・・・・・・新川、くん・・・・・・?」

 言いながら涙目でこちらを見上げるミディアムボブの女の子はCAさんの格好、客室科の制服を着ていた。胸には金色の『Ⅱ』文字のクラスバッジがある。

 彼女の名前は佐藤早希。健と同じ二組の客室科生徒であり金バッジ保持者。副級長だ。

 「おはよう佐藤さん。驚かせてごめん」

 「お、おはよう、ございます・・・・・・。て、ご、ごめんなさい!今日は私が先にプリント持っていこうと思ったのに!」

 再びぺこぺこと上半身だけの上下運動を始める。

 「いや、いいよ。級長は俺なんだしさ」

 「で、でも。いつも新川君がやってくれてるから申し訳なくって。今日こそはって早起きしたのに・・・・・・」

 「いいっていいって。重いものを運ぶのなんか、男に任せとけばいいんだよ」

 「でもっ、でもっ」

 大きいおめめをさらにウルウル滲ませ、ぷるぷると顔を横に振る佐藤さん。鬱陶し可愛いことこの上ない。

 「それじゃ、今日のは少し多いから手伝ってもらおうかな」

 「ほ、ほんとう?」

 「うん。これだけお願い」

 上から三分の一くらいの山を彼女に渡す。

 「ありがとう。えへへ」

 人から荷物を渡されて喜ぶのは航学広しといえどもこの子くらいだろう。

 「どういたしまして。意外と重いから気をつけて」

 「う、うんっ」

 受け取った早希は餌を貰った犬のように嬉しそうに笑った。

 生活棟二階にある教官室からHR教室のある学科棟までは少し距離がある。そもそも羽田校の建物は、元々はどっかの航空会社の施設だったものに生活棟やら宿舎やらを建て増し後付けしたもんだから、棟間は離れていて移動が結構面倒なのだ。

 これでもかと磨き上げられたピカピカの廊下をニコニコしながら歩く早希と、すったすったと歩く健。半分渡さなくて正解だったな、と健は思った。小さい身体に似合わない大きなお胸がプリントの山で圧縮されかけている。

 「ね、佐藤さんさ。さっき、今日は早起きしたって言っていたけど――」

 ぴくん。とプリントの山の重力に潰されているはずの体が跳ね上がった。

 「あ、あのそれはねっ。あの、今日はいつもより早く起きたの。それで、あと10分は早く教官室に行けるはずだったんだけど亜希ちゃんがね、その・・・・・・なかなか起きてくれなくって・・・・・・」

 「あー、なるほどね」

 健はセリフと共に隠し切れないため息を混じり出してしまった。

 早希には双子の妹がいて、健達と同じ十二期生で整備科に所属している。この妹がまあなんというか、この可愛らしいお姉さんとは似ても似つかない愚妹だった。

 「亜希のやつ、まだ佐藤さんに起こしてもらってんのかよ」

 「うん」

 「あいつ前期の頃から全然変わってないのな・・・・・・」

 「そうなんだよね、卒業したらどうなるか心配だよ。えへへ」

 「えへへ。て」

 ちっとも心配そうじゃないけど。

 「そういえば前に、前期の頃は新川君が起こしてあげていたって亜希ちゃんが言っていたけど、そうなの?」

 中期課程になって早希が入学してくるより以前は、亜希の朝低血圧による寝坊を食い止めるのは健や弘人や、整備の同期の毎朝の日課だった。

 「うん。俺とか弘人とか、あと整備の高田とか」

 ちなみにそいつらは全員サル部員だった。

 「そっかあ。毎朝・・・・・・、毎朝新川君に・・・・・・」

 何やらぶつぶつ言い出した早希。考え事をしているのか、たった今到着した目の前にある我らが2組の教室を通り過ぎようとする。

 「佐藤さん。どこまで行くの?」

 彼女はまたもやぴくん、と跳ね、そして今度は止まった。辺りをきょろきょろし、ここが教室を少し過ぎたとこであることに気づき、そして上半身だけで軽く振り向き。

 「あの、あの、あ、えと・・・・・・、なんでも、ない・・・・・・よ?」

 と照れくさそうに笑った。


 40人分のプリントやパンフレット、資料の山を二人で手分けして各生徒の机に並べる。それが終える頃には教室にはほとんどの生徒が顔を見せ、教室内はわいわいがやがやと賑やかになる。いつもの訓練は少人数で行われるものばかりなので、この時くらいしか顔を合わせられないクラスメイトが沢山いるからだ。一週間でつもり積もったあれやこれや話で花を咲かせているのはきまって客室の女子生徒がほとんどだが。

 健も操縦や整備の友人と軽く談笑した後、席につく。次第に他の生徒達も自主的に席に座り出す。学生とはいってもここにいる生徒は全員、資格の上ではそれぞれプロフェッショナルである。何をする時も予鈴の鳴るまでもなく、5分前には集合して準備が出来上がっているのが当たり前だ。

 時刻は8時40分。ほぼ全員の生徒は着席し、各自の前後左右の席の生徒とこそこそと話をしている程度になった。健の席は黒板から見て一番左、廊下側の一番前。級長はここに座るのが決まりで、その後ろには副級長である早希が席についていた。さらにその後ろ、書記の席は未だ空席。

 時刻は42分を過ぎようとしていた。後ろの早希が明らかにそわそわとしているのが背中越しにわかる。すると、その原因が――

 「うおっはようみんな!!まだ遅刻じゃないよね?ね?」

 健の目の前のドアが、がばりと中の人間になんの配慮も無いくらいの勢いで開いた。濃紺のつなぎを着て同色のキャップを被り、少し息を荒げた様子のその原因は、ずかずかと教室に入り早希の後ろの席にどすんと腰掛ける。胸の『Ⅱ』文字のバッジは金色に輝いている。着席するなり、すぱん、と脱いだキャップを机に軽く叩きつけた。早希と同じ位の長さのストレート髪が、汗で少し湿り気を帯びている。教室まで走ってきたようだ。

 「ちょっとお姉ちゃんどうして先に行っちゃうの!?おかげで二度寝しちゃったじゃない!」

 息を整える時間も無いまま、ずい、と前席の早希に顔を寄せてまくしたてる。

 「だ、だってHR前に副級長のお仕事があったから・・・・・・。でも、起こしたときにちゃんと言ったよ?今日はお仕事があるから先に行くね。って」

 すると「あっれー?そうだったっけー」などと言い、ふんぞり返って頭の後ろで手を組みだした。偉そうに足まで組んで。

 この原因、もとい彼女は佐藤亜希。こんなのでもまあ、なんと佐藤早希の双子の妹であり、そしてこんなんでも我がクラスの書記。つまり整備科の次席生徒である。男だらけの十二期整備科唯一の女子生徒で性格もさながら男そのもの――いや、男以上に傍若無人。しかし何故か整備の腕と知識だけは大変優秀であり、素行に多少の問題さえ無ければ間違いなく史上初の女性首席になっていたであろうと言われている程の、将来有望な整備士である。

 健は後ろを振り向いた。しょんぼりしている早希とあっけらかんとキャップで一人遊びしている亜希は、顔立ちだけ見れば確かに双子のものだった。

 「亜希さあ、まだ自分一人で起きられないの?」

 「ん?ああ、健いたの?おっはよ。全然気づかなかったわー」

 将来有望な女性整備士はふふんと鼻歌を鳴らし、くるくると人差し指でキャップを回しながら言った。

お前、俺の目の前を通っていったろうが。

 「うーん、多分本気出せば起きられると思うんだけどねー」

 「なら常に本気でやれや」

 「いやあね、起こしてくれる人がいるウチはこれでいっかなーって」

 「なんだそれ」

 「なんてゆーか。あー、そうだ。これはこれで姉妹の大事なスキンシップ?みたいなもんなの」

 「適当なことを言うな」

 きーんこーんかーん。と予鈴が会話を塞ぎ、同時にがらりとドアが開く。一人の中年男性が入ってきた。程よくがっちりとした体つきに、長い肢体、日焼けした顔には口ひげを蓄えている。健や弘人とは違い紺色ダブルのスーツに、袖のモールは四本巻かれている。

 「おはようみんな。元気にしてたか?」

 内田幹雄(もとお)教官。我が十二期2組の担任であり、森教官と同じく現役のキャプテン。教官は教室内を一瞥して全ての座席が埋まっていることを確認すると、開きかけた出席簿を閉じた。

 「今日も全員いるなー、関心関心。んじゃ、HRはじめるぞ、プリント見れー」

 先ほど配ったプリントには今週の訓練の予定と校内の一部の工事による注意事項等が書かれていた。もっとも、これらの情報は各生徒に配られている携帯端末と自室のパソコンにもデータで送られているのだが、確実な情報伝達のためにHRで文書を渡して読み上げることがよくある。というか、HRはこれくらいしかやることがないというのが実情だった。

 内田教官は順にプリントの項目を読み上げ続ける。

 「それじゃ次、最後のページなー。えー、あと二週間で冬季休業に入るわけだー。それで、年末年始の帰省時にデッドヘッドで便乗を希望する生徒は申請用紙を学生部に提出するように。期限は19日、来週の金曜までだからなー。毎度の事だが対象は国内線のみな。路線名と搭乗希望日と時間帯を書いて提出するように。帰りの便も忘れずに書けよー」

 「はーい」と数人の生徒が返事をする。

 「ここまでで何か質問のある者はー?いない?いないな。何かわからないことがあれば端末かパソコンのデータを確認するか、各自学生部に問い合わせるように。俺は今週フライトが多くてオフィスアワーが少ないから、俺に聞くのは勘弁なー」

 最後のは内田教官流の冗談。彼は一見少し適当そうだが、どんなことでも親身になって相談に乗ってくれるいい教官だ。ということを皆が口にしているのを聞いた。

 「それじゃHRはこれでおしまい。みんな今週一週間、事故の無いように元気でやれよー」

 再びがやがやと賑やかになる教室。数人の女生徒はHR中には言いづらい相談なのだろうか、教官のところへやってきて何やら小声で話している。

それにしても――

 「ねえねえ、旅行に持っていく荷物もう準備した?」「うん。あのねあのねっ、水着新しいの買っちゃったんだ♪」とか「ねーねークボミってさ、実家沖縄でしょ。帰省するとき、一緒についていってもいい?」とか、冬休みを楽しく過ごす算段を立てている生徒の多いこと。

健はといえば、みんな楽しそうだなー、だなんてぼーっと考えていた。すると。

 「ね、ねえ。新川君は冬休みは何か予定とかって、ある?」

 後ろから声がした。

 「いや、今のところはなにも無いかな」

 「健ってば、長期休みはいっつも寮に引きこもってばっかじゃん。出不精なんだから」

 さらにその後ろから余計な声がする。

 「うっせ。これでも、こないだの夏休みは弘人の実家に遊びに行ったんだぜ」

 「前田君のご実家って、どこ?」

 「よ、横須賀・・・・・・」

 「・・・すぐそこだね」

 「・・・すぐそこじゃん」

 「ま、まあ俺のことはどうでもいいじゃない」

 「そうね、どうでもいいわ」

 同意すんな。

 「佐藤さん達は?どこか遊びに行くの?」

 「私達は・・・・・・」

 「ねえ・・・・・・」

 と、気まずそうに同じつくりの顔を鏡のように見合わせる二人。

あー、そういや。

 「そか、芦屋の実家に顔出さないといけないんだもんな」

 この二人。兵庫県は芦屋出身という超がつくほどのお嬢様なのである。

この事実を早希から聞いたときはとても驚いた。早希がお嬢様だということは亜希もそうだということになるからだ。後期に入ってこの二人が姉妹であるということを知った時もかなり驚いたが、これはその比では無かったのを今でも覚えている。前期課程の頃、亜希は滅多に帰省しなかったし、どうしても帰省しなければならない日が近くなると、あからさまにテンションが落ちていたっけ。

 「でもさ、亜希はともかくとして、佐藤さんはどうして実家に帰るのが嫌なの?」

 「なんで!あたしは!ともかく!なの!」

 「いや、だって。お前みたいなのが旧家名家に生まれたら絶対に波風立つじゃん。お前もご両親も今までさぞかし大変だったろうに」

 「そ、そりゃ、まー。そうだけどさ」

 「で、でも。亜希ちゃんはなんだかんだでパパとママから信用されてるんだと思う、よ?」

 フォローを入れる姉。

 「そうなの?」

 「そうだよ。でなきゃ、中学出てすぐに航学行くのなんか、許してくれなかったと思うもん」

 おまけに整備科ときたもんだ。でも、家出同然で飛び出したっていう噂を聞いた事がある。

 「で、佐藤さんが実家に帰りたくない理由は?」

 「それは、その・・・・・・」

 「うん?」

 なにやらもじもじしだした早希。耳が見る見るうちに赤くなっていく。

 「あ、あのね。その・・・・・お、お見合いを、しなさいって・・・・・、しつこく、言われるか、ら・・・・・・」

 言い終える頃にはもう、顔全体が真っ赤っ赤になっていた。

 「そ、それはなんとも・・・・・・、大変、だね・・・・・・」

 「うん」と小さく頷く早希。

なんだか健の方まで恥ずかしくなってしまった。

 二人で顔を赤くして気まずそうにだんまりしてしまう。すると。

 「何それあたし聞いてない!!お見合い!?お姉ちゃんが!?一体誰と!?」

 愚妹が雄たけびを上げた。2組の全生徒が――あ、内田教官までもがこっちを向いた。

 「お、おい亜希・・・・・・」

 「ちょっ、亜希ちゃん。声が大きいよう・・・・・・」

 流石にまずいと悟ったのか、はっとして声のトーンを落とす亜希。 

 「だ、だってだって。あたしそんなこと聞いたの初めてだったんだもん」

 「え、そうなの?」

 「うん・・・・・・。亜希ちゃんには内緒にってパパにお願いしてたから」

 「どうして亜希には黙ってたの?」

 「だって・・・・・、もし私が無理やりお見合いさせられそうだって、亜希ちゃんの耳に入ったら・・・・・・」

 「そら、なんかするだろうな」

 「そうね、殴るわ」

 「両親を殴るんじゃない」

 「失礼な。いくらあたしでもそんな親不孝なことはしないって。殴るのは見合い相手よ」

 「赤の他人もダメだ」

 やはりこいつだけは芦屋に帰してはいけない気がする。

 「確かに、帰省する度にそんなことを言われれば帰る気も失せちゃうよなあ」

 「うん。いつもお相手の方の写真が何人分も用意されちゃってて。その度にもうこれっきりにしてって言ってるんだけど、ね・・・・・・」

 「大丈夫だよお姉ちゃん。今回の帰省でこれっきりにさせてあげるから」

 「俺はお前に会えるのがこれっきりにならないように祈ってるよ」

  なんてバカ話をしていると、生徒の相談事を終え教室を出ようとしていた教官が席の前を通り過ぎるときに「あー、そだ。新川に佐藤姉」と話しかけてきた。

 「なんですか」

「な、なんでしょうか」

 「年明けすぐに特別輸送のチャーター機を飛ばす予定になっててな、多分その輸送業務にお前らが就くことになりそうだから」

 「「はあ・・・・・・」」

 「詳しいことは年明けに正式な指示が出るからその時に話す。粗相の無いように金バッジ保持者にやらせるようにとお達しがあったから、とりあえずそういうのがあるってことだけ覚えといてくれ」

 「「はい」」

 「もちろん訓練じゃないから手当ても出るぞ。よかったな」

 にっこり笑ってそう言い、内田教官は教室を出て行った。

 「特別輸送、つってもねえ・・・・・・」

 「一体なんなんだろうね。怖いお客さんじゃないといいけれど・・・・・・」

 中期課程後半の生徒は皆、保持しているライセンスの上では現役のパイロットや客室乗務員と変わらない。なので時たまこういったチャーター便の乗務に航学の生徒を割り当てられることがある。そして訓練以外の便に乗務する時は、きちんと手当てが出る。

 「それに、手当てっつってもねえ・・・・・・」

 航学の生徒は入学したその日からみなし公務員であり、毎月ちゃんと給料を貰っている。そしてこういった訓練以外のフライトに乗務すると手当てが支給されるのだ。臨時収入が得られるのには、まあ悪い気はしない。しないのだが、もともと衣食住はタダみたいな環境で尚且つ訓練に忙しい身であるため、ほとんどの生徒はお金に困っていない。唯一お金を使うことがあるのは長期休暇の時くらいで、この時ばかりは海外旅行に行ったりとパーっと使う生徒がいるのだが……。

 「健、お金貯まりまくってるもんねえ・・・・・・」

 ご存知の通り出不精である健の預金額は、もうすぐ三百万円の大台に乗ろうとしていた。俺、まだ二十歳になったばかりなんだけどな・・・・・・。

 「ま、まあ。特別輸送担当なんて、滅多にあることじゃないし光栄だよね!がんばろうね、新川君!」

 気まずい空気をどうにか打破しようと、早希が気丈に振舞ってくれる。ぶんと腕を振りまわし、胸も揺らせながら。

 「そうだね。そうと決まればこの先の訓練は気合入れなきゃな。俺、このあと航空法の口頭テストがあるから先に行くわ。それじゃまた!」

 言いながら制帽と鞄を抱えて席を立った。なんにせよこれは成績上位者に与えられる名誉ある乗務だ。これからの訓練にも力が入るというもの。「まったねー健」「う、うんまたね新川君・・・・・・」と見送る二人の声を背に受け、健は教室を出た。


 さて、この朝のすこし後。具体的には冬休みにあれやこれやと少し込み入った出来事があったりしたのだが、今ここで話すような事では無いので割愛させてもらうことにする。舞台は年明け、一月の始業日に飛ぶ。


 年明け始業日。出不精の健にしてはめずらしく動き回った年末年始のおかげで、疲れが取れるどころかむしろ貯まり溜まってしまった感があるその日の朝五時。十二期の生徒全員にある事項が通知された。通知文書は全生徒の携帯端末とパソコンに送信され、廊下にも掲示されることになっている。以下本文。

 『特別チャーター輸送一番機業務に以下の生徒を任命する 機長――操縦首席二荒晴夏 副操縦士――操縦次席新川健 チーフパーサー――客室首席八重樫香織 客室乗務員――客室次席佐藤早希 客室六席浅海悠介 客室七席久保美穂 客室十一席秋山純 客室十二席井上薫子 同二番機 機長――操縦三席後藤安次・・・・・・ 該当機の飛行前整備はそれぞれ一番機は1組と2組、二番機は3組と4組の整備科生徒が行うよう 任命された以外の者も、その他の業務において善処するよう 任命権者 国土交通省航空局長 松尾静馬』

 寝起き一発目にこの内容はちときつい。この文面からわかることは、特別チャーターは二機で運航すること、そして一番機と二番機はそれぞれ1組と2組、3組と4組が受け持つということだけだが、健にとって、このすぐ後にわが身に降りかかる受難を思えば頭を抱えたくなるには十分すぎるものだった。

 今日は新年1月5日。始業日、そしておまけに月曜。HRがある日だ。

 身支度を終え、いつもより少しだけ弱々しく殴り叩いた二つ隣のドアからは、これまたいつもより少しだけ目が冴えている弘人が出てきた。首輪を忘れていないし、寝癖もない。

 「おはよーっす、健。年始早々は色々大変だったらしいなー」

 めずらしく年末年始に遠出していた健の事情を知っているせいかそんな話題で朝の会話を始めた弘人。さっきの通知は彼も既に承知のことだろうが、健の心情を読み取ってくれているのか朝食時も教室までの道中もそれには一切触れてこなかった。なんだかんだでこの男ははそのへんのことをよくわかっている。

 そんな友人の隣にいても憂鬱な時間がすぐそこまで迫っているのは避けようの無い事実である。そして学科棟へ続く最後の曲がり角を曲がった時、その時はやってきた。

 「――こんなことってありか?なんで1組と2組が同機割り当てなんだよ」「3組の後藤はいいなあ、特別機で機長やれるんだぜ。タナボタにも程があるよ」「えーっ!どうして1組の相手が4組じゃないの?キヨノ、今度こそ浅海君と組めると思ってるわよ」「あーあ。あの子、このままじゃ多分卒業まで浅海君と一緒のフライトはなさそうね」

 教室前の掲示板に張り出された辞令の前には人だかりができており、めいめいに感想を口走っていた。

 「当事者のことなんかおかまいなしにテキトーなことばかり言いいやがって。そんなんだから、お前らは一度も金バッジつけられずに卒業するんだよ」

 弘人は人だかりに聞こえるような声でそう言った。その途端、彼らこちらを見てはっと黙り、急にひそひそと声をひそめ出した。

 「んじゃな健」と奥にある4組の教室めがげてずかずかと人ごみの中を歩いていく。健だって、彼らの言い分も十分にわかる。こういった特別機の業務では1組は4組、2組は3組と組むのが慣例であり、操縦科の主席と次席は特別機で機長を務めるのが開校以来の慣わしであり、名誉になっていたからだ。


 教室のドアを開けると我らが2組の教室には微妙な空気が流れていた。2組が1組と組む。これは2組の全ての学科の生徒が1組の指揮の下で業務を行うことを意味しているからだ。特別輸送に割り当てられていないクラスメイトも――、いや、割り当てられていない生徒の方がこの事実に納得していないようだった。彼氏彼女らは彼氏彼女らなりに2組であることに誇りを持っているらしいからだ。

 意を決し「おはよう」と言いながら教室に入り席につくと、早希が数人の生徒の取り囲みにあっているところだった。

 「ねえ早希ちゃん。本当にこれでいいの?本当なら早希ちゃんがチーパー(チーフパーサー)、やるはずだったんだよ」

 「わ、わたしにチーパーなんて務まらないよう。それにかおちゃんはとってもとっても優秀だから、かおちゃんの下で乗務できるの、とっても嬉しいなって」

 「それはそうだけど・・・・・・。新川君はどうなの?せっかく次席にいるのにこんな仕打ちされて悔しくないの」

 今度は矛先が健に向いた。彼女の方は見ずに返事をする。

 「俺も佐藤さんと同意見かな。どうあっても首席が二荒さんなのは事実だし、悔しいも何も全ては首席になれなかった俺の実力不足のせいさ」

 「で、でもっ!女子キャプテンのコパイなんてやらされて、それでもいいの」

 いいわけはない。これでも、万年次席でも、厳しい訓練に全力で取り組んできたのだから。というか、君らだって女の子だろうに。

 「いいも悪いも、通知が出てるからそれに従うだけだよ。せいぜい首席サマのフライトを勉強させてもらうさ」

 「で、でもそれじゃ――」と取り巻きの彼女は執拗に食い下がる。健も遂にイライラが顔に出そうになった、その瞬間。

 「うおっはようみんな!!」

 健の席の前のドアがいつものように、しかしいつもより早い時間に開いた。時刻はまだ八時半を過ぎた頃だというのに。

 「おはよう亜希。今日は早いのな」

 「ああ、健おっはよ。今日はなんだか早く目が覚めちゃってさー。あれ?みんなお姉ちゃんとなんの話してんの?あたしも混ぜて混ぜてー」

 「う、ううん?」「な、なんでもないよ」と歯切れの悪そうな受け答えをしながら彼女達は佐藤姉妹の席から去っていった。愚妹もたまには役に立つじゃないか。

 「・・・・・・亜希ちゃん。ありがとう」

 「なに言ってんのさお姉ちゃん。たまたま早く目が覚めちゃっただけだって」

 「うんしょっ」と前から三番目の妹専用席に座る亜希。いつもどおりすぱんと脱いだキャップの下の髪はいつものように湿ってはいないようだった。「それにしても――」と亜希は続ける。

 「まああの子たちの気持ちもわかるっちゃわかるけどねー。せっかく2組にいるんだし、どうせなら自分達で大役引き受けてみたくもなるよねー」

 「お前は?1組の下で整備するの嫌じゃないの」

 「整備は操縦や客室に比べれば学生に任せられる領分がそこまで多くないからさ、席次はあるけど生徒間の上下の差ってのもほとんど無いし。なにより――」

 「あたしは飛行機がいじれればそれでいいのさ」

 にっこり笑ってそう言った。

 「それより健はどうなのさー。一番機の副操縦士やるの、正直どうなの?」

 「てめっ。その話題ぶり返すのかよっ!」

 お前が断ち切ってくれたとばかり思ってたのに。

 「だから言ったじゃん。混ぜて混ぜてーって。で、そこんとこどうなのよ?」

 「どうもこうも、通知が出てるんだからそれに従うだけで――」

 「そうじゃなくて!二荒さんと組むのはどうなのって聞いてんの!」

 二荒(ふたら)(はれ)()。操縦科の首席生徒。元は空軍の航空学生で中期から航学に編入してきた編入組、そして編入以後不動の首席である。

 空軍にも航学のようにパイロットを養成する航空学生という制度があり、こちらも中学を卒業した少年少女を六年かけて育て上げる。航空学生と航学の前期課程はほぼ同じようなカリキュラムが組まれている。そのため、前期が終わると相互間で学生の編入を行うことがある。十二期では航空学生から二荒が編入し、そして航学からも「どうせなら戦闘機に乗ってみたい」という一人の生徒が空軍航空学生へと籍を移した。健も編入時期に空軍の将校から面接受けたが、どうしてかあちらからお呼ばれすることはなかった。軍隊の求める人材の基準はよくわからん、というのが健の感想だった。件の彼の成績はどちらかといえば低いほうだったし、運動神経抜群というわけでもなく、健や他の生徒のほうが遥かにいい成績を修めていたのだから。

 話が飛んだ。

 そんな空軍からの編入組である二荒晴夏は、編入前からちょっとした有名人でもあった。『わが国初の女性ファイター誕生か』と航空情報誌にでかでかと煽られた記事を見たことがあったし、テレビのニュース番組で特集を組まれたこともあった。さらにはその精悍さと美貌で、彼女を起用した空軍の勧誘ポスターは全国各地で盗難にあったという話まである。それほどまでに、彼女は戦闘機乗りとして将来を期待される存在だった。そんな彼女が中期から編入すると聞いた時、健達は顔を見合わせた。『わが国初の女性戦闘機乗り(ファイター)』が旅客機を飛ばすための学校に編入してくるなんて、夢にも思わなかった。

 『女性のファイターは時期尚早』それが空軍のお偉いさんの出した答えだったようだ。あそこまで大々的に宣伝しておいてそんなバカな話があるかとも思ったが、風の噂によると二荒家は代々続く空軍の名家であり、現在空軍の幹部である彼女の父親が娘の身を案じ戦闘機の操縦桿から引き剥がした、というのが通説になっていた。

 編入してからの彼女といえばそんな噂はどこ吹く風、颯爽と操縦科の首席へと上り詰めていった。前期からの操縦科の生徒をあざ笑うかのようなスピードで旅客機の飛ばし方を吸収していった彼女は、今では航学十二期全操縦士の頂点に君臨している。

 というのが二荒晴夏の大体のスペックである。スペックとはいってもこの程度のことはここの人間なら誰もが知っていることであるし、中には噂に尾ひれや尾翼までついた話も紛れ込んでいるらしくあまり参考にならないかもしれない。とはいってもこれが健の知っている二荒晴夏に関する知識の全てだった。なぜなら――

 「俺さ、実は二荒さんと組んだことないんだよね・・・・・・」

 「へ?」

 亜希がすっとんきょうな声を上げる。

 「だから二荒さんがどういう性格かとか、どういう飛ばし方をする人なのかって知らないんだ」

 中期の実技訓練はほとんどが個人単位か二人一組。学科の授業で顔を合わせることは何回かあったが、話をしたこともなかった。

 「亜希は?二荒さんと話したこととかって、ないの?」

 「あたしらはよその学科と顔合わせないからねえ・・・・・・。お姉ちゃんは?」

 「緊急脱出の訓練で、一度だけ一緒になったかなぁ。なんていうか、いい人だったよ?怒鳴ったりしないし」

 「お姉ちゃん、大抵の人にはいい人って言うんだから・・・・・・」

 「かおちゃんに聞いてみたらどうかな。同じ1組同士だし、いろいろ知ってると思うよ」

 「八重樫さんに、ねえ・・・・・・」

 客室科主席の、かのフレンドリー元気っ娘の姿を頭に浮かべる。確かに彼女ならいろいろ知っていそうだし、あっさりと情報を教えてくれるかもしれない。

 「いや、やっぱりいいよ。あまり他人の事を嗅ぎ回るのもよくないし」

 「そんなこと言って。ホントは気になってんでしょー?」

 「んなことねっての」

 とは言ったものの、やはり一緒に組むパイロットのことは気になるのが当たり前。数時間とはいえあの狭い空間で二人きりにさせられるのだから。後で他の操縦の生徒にでも聞いてみるか。などと考えていると。

 「おはようみんな。いや、あけましておめでとうか。元気にしてたか?」

 内田教官が教壇に上がってくるところだった。


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