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コドクノオタク

作者: magnet


僕は21歳、ニートだ。今は絶賛地下アイドルの発掘とゲームに勤しんでいる。日々大変だが充実していると思う。


親の金で毎日生活しているが罪悪感は無い。1人息子だし親が嫌と言わないなら別にいいんじゃないか?


まあこの生活が出来ているだけで僕はとても満足している。最近の悩みは体重だ。体型が横に徐々に大きくなり、眼鏡もかけているせいでどうしてもオタク感が拭えない。


オタクなのは変わりないが体型よりは美味しいものを食べることを優先してしまうためこうなってしまう。まあ仕方のないことだ。アイスもポテチもチョコレートも美味しいのがいけないんだ。


そんな充実した僕の毎日に、いつもとは少しだけ違う変化が訪れた。まあ、それすらもいつも通りと言えばいつも通りなんだが…


ゲームを完全攻略してしまったのだ。育成型RPGでやり込み要素もかなり多く連日連夜のめり込んでやっていたが、オタクの前にはどんな神ゲーもクソゲーも等しく攻略されてしまう。それも完膚なきまでに。


オンライン対戦もあったようだがそれもランキング上位をキープし、頂点にも何度か立った。もう、することは全てやり尽くしてしまった。



そんな訳でお気に入りともいえるゲームと別れを告げたわけだが、そこで始まるのが新しいゲーム探しだ。やはりオタクと自他共に認めるだけあって、ほぼ全てのゲームをやり込んでいる。確かにまだしていないゲームも数多くあるが、オタクを満足させるものはそうそう現れない。


それだけに、新作ゲームでなかなかの良ゲーだった育成型RPGにのめり込み、攻略してしまったのだが…


そんなオタクの(自称だが)充実した毎日にも終わりは訪れる。しかも突然に…




「はっ!いけないいけない!ついウトウトしてしちゃった!もうすぐ最近推しのミルク&ティーの最新アルバムのフラゲがあるのに!いち早く入手して、ヘビロテしないと!って…え?ここはどこ?」


そこはオタクがたまにいく、大手アイドルが使用するライブ会場のような、しかしそれにしてはなんというか無骨で生々しい、大きなドームのような場所だった。しかも、その中に数百人もの人がいる。


周りにも人がおり、続々と人が増えているように思える。


各々ザワザワしており、オタクの最高に気持ち悪い登場シーンも見逃した人が多いようだ。しかし、とは言っても目立つことには変わりなく、その光景を見てしまった人達は…


「え…きも…」

「やば…」

「まじかよ、オタクまでいんのかよ!」


と様々な反応で、中には無言で立ち去る人もいる。


だが、オタクには全くのノーダメージだ。長年のオタク生活は彼が小学校にいる時から続く。最初の方はオタクも周りの目やイジメなどに悩んだ時期もあったのだろう。


しかし、成長した今、オタク特有の開き直りを身につけてしまった彼にはもう怖いものなんてなくなった。気にするだけ無駄だと、自分は自分のやりたいことをするだけだと、ある種の悟りを開いてしまったオタクにはもう手のつけようがない。


だがそんなオタクにも動揺する場合はあるのだ。


『こーんにーちわあああああーーー!!!!今回お集まり頂いた皆さん!ご協力ありがとうございますっ!今回はこのような場に携わらせていただいて本当に光栄ですっ!

 さて!もう早速本題に入りますか!焦らしてもいいんですがもう楽しみで楽しみで!』


『では、皆さんには殺し合いをしてもらいます。』


声色が急に変わった謎の声は再び元の声に戻り続ける。


『ルールは至って簡単!体力5!で攻撃手段は弱攻撃と強攻撃!ただし強攻撃は溜めないといけません!それに、守る!で完全防御ですね!これらの技を駆使して皆さん勝ち上がって下さい!必ず一対一で行います!ルール違反になる行為は出来ないようになってますので悪しからず!では、早速はーじめっ!』


『あ、あと皆さんには1人1個特殊技を持たせてます!常時発動型、バトル中に1ターン使うもの、その他たくさんあるのでしっかり見極めて使って下さい!バトルに勝利したら、相手の技を奪えます!だから沢山殺って沢山ゲットしましょう!』


立て続けに説明されるが殆どの人達がついていけてない。そこに謎の声は再びとても冷酷な声で、


『逃げようとか戦わないでおこうとか、無粋なことは考えないで下さいね?無理ですから。』


『前置きが長くなりすぎてしまいましたね!では改めて、よーいはじめっ!!』


謎の声は小さくなっていく去り際の声で、

「うっひょー楽しみだなー…」という言葉を残し、更に人々を怖がらせるのであった。



「ん?これはどういうことだ?僕にはミルク&ティーの2人が待ってるから早くフラゲをしなきゃいけないのに!ここはどこだ?さっさと帰らないと!」


オタクは基本独り言が多い。まあ音量はそこまで無いので迷惑かと言われれば人によるが…


そう言ってオタクは出口を探しに向かうが、人混みから外れて、さらに外側の外縁部に向かおうとするとそれ以上体が動かない。試しに戻ってみると、それはすんなりいく。


「な、なんだこれは!これでは家に帰れないじゃないか!ふ、2人が待っているんだぞ!早く帰らせろ!」


何度も試すが一向に動かない。オタクに触発された人々が帰りたいと口々に言って脱出を試みるがどれも皆一向に外側には動けない。


そんななかどこからともなく、


「おーーい!そんなとこで固まってても無駄なんじゃねーの?あの声聞いてたから?無理って言ってただろ!そんなのもわかんねーのかよ!俺はさっさと全員倒して、一抜けさせていただくぜ!おい!そこのおっちゃん勝負だ!」


声の主、恐らく男性のそれは固まってる人達にむけて発せられたのだが最後のは近くにいた気弱そうなおじさんに向けられものだった。そこからバトルが始まったようで2人の姿は見えなくなった。


この場にいる全員が1人を除いて現実が見え始め、ぼちぼちとバトルが始まっていった。みんな、もうなす術もなく、仕方なくという感じだったが。


そんな中、1人オタクが


「な、なんで帰れないの!僕にはミルク&ティーの2人が待っててくれてるのに!あの2人を待たせる訳にはいかないんだよ!」


そんなことを喚いている。実際はただCDのフラゲだけだというのに。


しかし、オタクにも人より何倍も遅れて現実が見え始める。


「そ、そうですか、帰さないんですね?ぼ、僕怒りますよ?いいんですか?知りませんよ?」


やっとスイッチが入ったオタクは現状把握を始める。ゲームオタクでもあるためなんだかんだ合理的な行動をとれる。(ゲームにおいてはだが)


「まずはステータス確認ですね!僕が出来ることは…」




HP 5/5

・弱攻撃 コスト0‥相手のHPを1削る

・強攻撃 コスト1‥相手のHPを3削る

・溜める コスト0‥コストを1溜める

・守る  コスト0‥相手の攻撃を防ぐ 2回まで連続ガード可

・特殊技『看破』コスト0


『看破』‥相手の特殊技を知ることができる。常時発動型




「なるほどです。これを使って相手を倒せばいいんですね。余裕ですね。」


「さっさと終わらせて、早く2人の元へいかないといけないのです…!おいっ!そこの人!早速バトルをしようよ!」


そうしてオタクは近くにいた、青年へと勝負をしかけた。すると2人は別空間に隔離されたかのように周りの人が見えなくなり、同様に周りの人からと見えなくなった。もっともオタクはそんなことまるで気にしていないのだが、


「この勝負の肝は、ターン制ということ、勝負を決めるにはいかにじぶん攻撃を当てて相手の攻撃を守らないといけないということ、そしていかに特殊技を悟らせないかというとですね。」


オタクは既にゲームの考察を始めている。オタクは集中力だけはすごい。ひとりブツブツと呟くだけで相手を萎縮させるほど真剣にゲームの攻略法を考えている。


「ふむ…なるほど。要はジャンケンの様なものですね。守るは攻撃に、攻撃は溜めるに、溜めるは守るにそれぞれ有効と言える。だがここでミソなのは勝つためには攻撃を与えないといけないということです。守るや溜めるだけでは永遠に勝てない…つまり必然的に攻撃の比重が大きくなると…」


そうしていよいよバトルが始まる。


オタクはまだ呟く。


「このバトルただ弱攻撃を5回当てれば勝てるゲームだ、と見せかけて明らかに2ターンで3ダメージ与えられる強攻撃の方が主軸になるし、それを使えるって状況だけでアドバンテージを取れるだからもちろん初手は溜める…ですよねぇ?」


このオタク、ゲーム、特に対人戦では性格がまるで違う、相手の心を読み徹底的に倒す。いつもは気弱なら感じだか、ことゲームに関しては自信がある。


『戦闘を開始します。』

オタクvs青年

・1ターン目 オタク:弱攻撃 5/5

        青年:溜める 4/5


「うん。ですよねぇれやっぱり溜めたいですよねぇ?溜めたら強攻撃、撃てますもんねぇ?でも、1ダメージ食らっちゃいましたねぇ。残りHP4ですよ?大丈夫ですか?僕より死に近づいてますよ〜?」


ここで初めて相手にもはっきりと聞こえるように発したその声は煽りだった。


このオタクの常套手段である、早口な煽りは相手を焦らせ正常な判断能力を失わせる。ましてやこれは殺し合い、一手一手が死に直結するこの状況では冷静になることすら難しい。


オタクはまたブツブツと考察を始めた。


「ここで相手は焦りはするが、自分は一回分溜めてると一旦冷静になるでしょう。相当やばかったら撃ってくるでしょうが相手は子供じゃなくて青年だ、少しは考えられるでしのう。今僕が煽ったのは強攻撃を撃たせるためだ、と思うはずです。なら、僕が次とる行動は…」


・2ターン目 オタク:弱攻撃 5/5

        青年:溜める 3/5


「そうやっぱり溜めたいですよねー?貴方が強攻撃を撃ってくる読みの僕が守りをしてくると思ったんでしょうが、甘いですよー?

 あなたがここで守りを使う可能性はほとんどない。だって、ここで守ると溜められた場合に差が縮まらない。だから貴方はここで溜めた、最悪攻撃されてもいいと思って、一方的にアドバンテージを取られるくらいなら痛み分けの方がいいと。

 だが本当にそうですかー?貴方は刻一刻としに近づいている。もし強攻撃を貴方が食らえばそれで終わりですよー?」


再びオタクの考察、


「こうは煽ってみたものの、実際相手が2連続溜めて来たのには理由がある、特殊技です。

 相手の特殊技は『貫通』だ。コスト1を使って相手の守りを突破してダメージを与えられる。僕の体力が少なくなった時に不意打ちでこれを使うつもりなんだろう。このおかげで相手も少し安心して溜めていられる。そこまで余裕は失ってない。これが分かるのは相当なアドバンテージだ。

 だが、裏を返せば僕には戦闘中に使える切り札が無いと言うことだ。それを悟らせないためにどう立ち回るかがこの勝負の鍵だ。

 残りHPは相手が3で僕が5、強攻撃を当てれば僕の勝ちだ、だがそれは相手も分かっている。それに僕にはコストが溜まってない。ここで僕が溜めるを使うと思えば、相手は強攻撃を撃つ絶好の機会、だがここで守られると相手はもうほぼ勝てないだろう。ということは…」

 

・3ターン目 オタク:溜める 4/5

        青年:弱攻撃 3/5


「うん!やっぱり無難に行きたくなるよねぇ!ここでもし守られると終わるし、かといって、溜めてる間に攻撃されるといよいよ死が近づく。ここは無難に攻撃を加えることで僕との差を縮めたかったんだよねー、なるべくローリスクで。

 でも、僕コスト溜まっちゃったよ?大丈夫?強攻撃当たったら死んじゃうよー?」


相手は自分の死を考えてしまったのかひどく怯え始めた。


・4ターン目 オタク:溜める 4/5

        青年:守る  3/5


「うん、知ってた。流石に守るよね。もし強攻撃なら死んでるからね。そりゃ溜めるよ。でも、これでもう、終わりだね。君が勝つにはここで攻めるしか無かった。ここで目先の安全を取ったが為に君は負ける。」


・5ターン目 オタク:強攻撃 4/5

        青年:守る  3/5


「守るの連続ガードは二回までだ。だからそんなに不用意には使えないんだよね、特にここぞという時ほど取っとかないといけない。無駄な守るはただ自分の首を絞めるだけ、それならまだ溜めるを使った方が勝率上がるしね。ってアドバイスしても無駄か。お疲れ様です。」


・6ターン目 オタク:強攻撃 4/5

        青年:弱攻撃 0/5


『戦闘終了、特殊技「貫通」を獲得しました。』


相手の姿は薄くなっていき、完全に消えた。


「ふう、初戦はこんなもんですか。これで戦闘中に使える特殊技ゲットですね、僕の特殊技は戦闘中には使えないのでこれでまただいぶ戦術が変わってきますね。」


オタクは初戦が1番肝心である、と考えていた。何故なら彼の特殊技は戦闘中に使えず、いざ戦闘が始まってしまうと、相手に特殊技を使うかもというブラフだけで戦わなければならなかったからだ。


しかし、もうその必要はなくなった。新たな技を獲得したことにより戦闘中における切り札が使えるようになったので特殊技一つの相手には一方的なアドバンテージがある。オタク自身はまだ1回もバトル行っていないというふりをすればいいだけである。


「次も、特殊技一つ持ちの人と当たって技をゲットしたいですね、看破は戦闘中じゃなくても使えるから便利ですねー。」


オタクは何も無くても独り言を言っている。常にだ。ずっと言ってるから周りの人からは自然に避けられる、本人はそれをまったく気にすることもなく次の敵を物色していると、


「おい!そこのデブ!俺と勝負しろ!どうせまだ戦っていないんだろうが、特殊技一つは必ず持ってるはずだ!俺とバトルしてその特殊技をおれによこせ!お前が持ってるより俺が持ってた方が有効活用でるだろうよ!」


いかにも、なチンピラが現れた。こういう輩はこの異常な状況でも見事に環境に適応できるという素晴らしい能力を持っている。むしろこの異常な状況でしか輝けないのではなかろうか。ただ、なまじ環境に適応できるだけなのに自分こそが至高と考える節がある。それに加えこのオタク、売られた喧嘩は買うのである。


「都合良く、僕が技一つだと思ってくれてるようですね。相手は単細胞ぽいですし上手くいけば技をゲット出来る。これはいい機会です、これを掴めばかなり成長できる。ただこれを逃せば死あるのみ…僕にはあの2人がいるんです!負けられないのです!」


「あぁん?何さっきからぶつぶつ言ってんだぁ?おい、デブ!バトルするのかしねえのかさっさと答えろや!」


バトルはお互いの了承が無ければスタートしない。だが、ずっとバトルをしなければそれも退場になってしまうからバトルしなければならないのだが、


「僕はデブではない!いいでしょう、その勝負受けて立ちましょう!」


「はっ、何かっこつけてんだデブが!どう見てもデブだろ!それに、本当に勝負を受けるとはなぁ、よほど俺に特殊技を渡したいようだな!なんせ俺は技二つ持ちだからなぁ!」


相手のこの自信は自分が特殊技を二つ持っているという所からきているのだろう。が、実際は、オタクは相手が技二つ持ちということを勿論知っており、その技の効果を見た上で勝つつもりでこの勝負を受けている。それに、デブと罵られてかなり怒っているようだ。


『戦闘を開始します。』

オタクvsチンピラ

・1ターン目  オタク:溜める 5/5

       チンピラ:溜める 7/7


「ふむ、流石に初手から攻撃してくるほど頭のネジは外れていないと、まあ、技を二つ持っているし、一つはコストがかかる、なら溜めから入るのは当然ですね、」


オタクも技をゲットしたから溜めからスタートだ。先程のバトルは自分が技を使えなくて相手だけが使えるという状況だったため、先手必勝で相手のHPを削り、心理的ダメージをくわえながら逃げ切りで勝った。


しかし、いわばそれはある種の賭けでもあった。もし相手がもっと慎重だったならば、もし相手が特殊技をガンガン使って来ていたならば、と色々仮定はあるが、それらを含めてオタクの対戦相手選びであり、煽りを含めた試合運びであるのだが。まあ、初手は溜めから入るのがセオリーと言えるだろう。


今回の対戦相手、チンピラの特殊技は「体力増加」「超攻撃」だ。チンピラは初戦、自前の超攻撃で相手の体力増加に対してゴリ押しで勝った。そして更にチンピラは脳筋と化している。


「体力増加」‥HPが7になる。 常時発動型


「超攻撃」‥相手のHPを4削る。 コスト2

      

「まずは、お互い溜め、相手は取り敢えずコスト2は溜めたいはず、なら僕は攻撃すべきか?相手はHPが7もある、攻撃をどんどんしなければこちらがジリ貧。僕の勝ち筋は相手の超攻撃をドンピシャで守りつつ、相手の溜め時に攻撃を当てまくる。相手のHPが少なくなれば貫通があるこちらが有利。ということは先程の互いの溜めは悪手だったか?

 いや、どちらにせよ貫通の為に1コストは必要だからあれは必要経費だ。

 となると、相手は体力増加にものを言わせて超攻撃でのごり押しでくるに違いない。つまり次のターンは勿論…」


「ぶつぶつぶつぶつ、うるせぇんだよ!さっさとしろよ!」


・2ターン目  オタク:弱攻撃 5/5

       チンピラ:溜める 6/7


「へぇ、デブのくせにもう殴ってくんのかよ!面白えな!だがな!俺には体力増加があるんだよ!そんな弱っちい攻撃なんか効かねえぜ!」


チンピラの煽りはもう既にオタクの耳には届かない。オタクは今まで散々陰口、イジメ等々に晒されてきており、それでも今まで耐え抜いてくることにより、驚異のスルースキルを身につけている。そのことで自分の煽りは相手に届くが、相手の煽りはもとより相手の言葉さえ殆ど一切入ってこない。自分の聞きたいことしか聞こえないという超自己中体質なのだ。


つまり、オタクは考察を続けている。


「これで、相手は超攻撃を撃てる態勢は整っている。相手は見た目通り馬鹿そうだから脳死で撃ってくるか?だが、初戦を突破している。少しは考えてくるだろうか?僕の勝ち筋的に一発食らうとそこでもうほぼ負けだ。圧倒的なアドバンテージを取られてしまう。ここは絶対にダメージを受けられない。

 だが、相手は僕が相手の技を知ってることを知らない。ならば…」


・3ターン目  オタク:弱攻撃 5/5

       チンピラ:溜める 5/7


「へぇー守らなかったか、なら攻撃しとけば良かったぜ!まあ、こっちは3溜めしてる上にHPはまだお前とおんなじだぜ?もう、諦めて降参したらどうだ!」


それでも、オタクには届かない。


「ここで、攻撃される可能性があるのに攻撃する、と言う姿勢を相手に見せつけた。ここで相手がとる行動は流石に読めるな。」


オタクは考察を相変わらずぶつぶつしているが、今回のバトルでは煽っていない。オタクはまるで焦っていない様に見えるが、超攻撃と体力増加というかなり脳筋だが強力な組みわせに無意識に驚異を感じている。本人は負けるつもりは毛頭ないだろうが、その第六感とも言うべき感覚にしたがってオタクは考察を深めている。オタクにとっての唯一の救いは相手が行動を読みやすい、チンピラであるということだろう。


・4ターン目  オタク:守る  5/5

       チンピラ:弱攻撃 5/7


「チッ、イライラするなぁ。まあ、弱攻撃で様子を見て正解だったな!おい、デブ!さっきから無視しやがって、聞いてんのか!あ?次はデカイのお見舞いしてやるから覚悟しとけよ!」


「ここまではいい感じだ。相手の狙いは勿論超攻撃を当てること、弱攻撃なんて頭には入ってないだろう。対してこちらは相手が残りHPが5だ。最短で弱2回、強1回だ。ラスト貫通でいくとしても、もう一つ溜めが欲しい所ではある。

 相手が超攻撃を僕に通すこと一択である事を考えると僕がとるのは…」


・5ターン目  オタク:溜める 4/5

       チンピラ:弱攻撃 5/7


「クソッ!守れよ、そしたら次デカイのいけたのによぉ。あのデブ面倒くせぇな。ぶん殴ってやりたいぜ。だが、これでももう俺の射程圏内だぜぇ?」


オタクに攻撃を許容されて、さっきまでのうるさい態度から一変、オタクの厄介さに気づいたチンピラはイライラを露わにしだした。自分の言動に臆することなく、自分の嫌なことを的確にしてくるのが癪に障ったようだ。


もし、このターンでオタクが守っていれば連続ガードが不可となり、次のターンに超攻撃を食らわせられるという、チンピラの目論見は外れることとなってしまった。


オタクの考察内容は相手には聞き取れない音量であるため、何を考えているるか分からないという、恐怖に対して、無意識にチンピラの防衛本能が発動してのこのイライラであり、脅しなのだろう。オタクには一言も聞いてもらえてないが。


「ここで弱をもらったのはかなり痛い。超攻撃を1回受けることが出来なくなったのは辛いが、これから超攻撃を全て防ぐことに変わりはないし、後3回弱攻撃を受けれると前向きに考えよう。

 それで、相手は是が非でも超攻撃をおれに届けたい。…しかしなー、相手がどれほどの脳筋かにもよるよな、ここで撃ってくるか?だが流石に防御が張れるこのタイミングで撃ってくるとは考えづらい。ならば…」


・6ターン目  オタク:弱攻撃 3/5

       チンピラ:弱攻撃 4/7


「クソォッ!!なんなんだよこのデブは!」


チンピラの作戦は尽く外される。オタクは全て読んでいるのだ。チンピラの作戦はこのターン弱で様子を見つつ、相手の守るを誘う。それで、相手が守るをした次のターンに連続ガードを嫌って攻撃もしくは溜めてきた所に超攻撃を撃つつもりだった。


しかし、もちろんそれをオタクは読んだ上でこのターン守るを使ってしまうとその次のターンで超攻撃を守れればいいのだが、その守りを弱攻撃ですかされた場合そこで詰んでしまう。相手に選択肢があるのを嫌うオタクはここでの弱を許容することで、この後の行動もチンピラに迷わせつつ、相手のHPを確実に減らすという、やはり最適解に限りなく近い行動をとっていた。


「ここで、弱攻撃を当てられたのはデカイぞ。相手は超攻撃を守られるのを恐れている。いや、恐れすぎている。そのせいで短調になり読みやすい。勿論、次のターンは…」


・7ターン目  オタク:強攻撃 2/5

       チンピラ:弱攻撃 1/7


気づけば、7もあった自分のHPが残り1となり、次に一度でも攻撃をくらえば死ぬという事実を突きつけられたチンピラ。


相手のチンピラはこのデブもといオタクがこの自分を追い詰めているという事実を薄々感じてはいたが自分のプライドがそれを認めようとしなかった。それによって更にオタクに読まれやすくなってしまった。相手を驚異と認めればその分冷静な判断が下せたかもしれないというのに。


・8ターン目  オタク:守る  2/5

       チンピラ:超攻撃 1/5


「クッソォおおおー!!なんでだ!なんでだよ!なんで俺がこんなデブに、こんなデブにぃー!!」


チンピラは自分の残りHPが1となり慌てて超攻撃を撃つが当然守られる。もしかしたら自分が死ぬという事態に直面したことにより極度に焦り、まさかのミスをしてしまう。さっきまでの彼なら守られるのを嫌って確実に仕留めようとしただろう。


オタクは相手の言葉は聞こえないが、自分が必要なものは相手からしっかりと頂く。相手の表情、仕草等から相手の気持ちを読み取るのだ。必要な情報はフル活用するが、必要のないものは全く入ってこない、とても都合の良い体だ。


「よし、これでなんとか倒す事ができたようだな。いやー相手が相手で助かったでござるな。もう少し賢かったらと考えると恐ろしいですね。」


勝ちを確信したオタクはすでに余裕の表情である。言葉から切迫した雰囲気もすっかり消えている。


・9ターン目  オタク:弱攻撃<貫通  2/5

       チンピラ:守る     0/7


『戦闘終了、特殊技「体力増加」「超攻撃」を獲得しました。』


「ふぅ、なんとか勝てましたね。今回は危険も伴ったがその分収穫もあったと言えます。この調子だとどんどん人数も減って相手もどんどん強くなっていくから今のうちに欲しいスキルをゲットしたいですね。」


オタクは強いスキルを得てなかなか満足していた。元々持っていた貫通とも相性がいい超攻撃、単体で強い体力増加、かなりの戦力アップだろう。ここでオタクは自分だけの特権、看破を使いさらなる戦力アップを図ろうとしている。オタクは自分と相性の良いスキルを選んで戦いを挑む事ができるのだ。


更にここでは、特殊技三つ持ちを頑張って倒すよりも、二つ持ちを手堅く倒した方が安全に強くなれる上に結果得られる技も多くなる。


相手は切り札も戦略も調べ尽くされた上で勝負を挑まれるため、互いに特殊技の数が増えていけば行くほどオタクは有利になっていくのだ。


「お、あの人の技が欲しいですね。」


オタクが新たな獲物を見つけ出した。その人のスキルは「毒」「封印」だ。


「毒」‥1ターンに1度相手に1ダメージを与える。 コスト1

「封印」‥相手がそのターン使った技をそのバトル中使用不可能なる。 コスト1


「うん、毒は僕の体力増加と封印は毒とも超攻撃とも相性がとてもいいです。これは是非手に入れるべきですね。」


オタクは恥じらい、躊躇いなどもどこかに置いてきているので無駄に行動力がある。その為、一度やろうとしたことはすぐに行動に移してしまう。善は急げというやつだ。


「すまない。僕と勝負してくれませんか?」


相手は大学生くらいの知的な男性だ。彼はオタクを見るなり、


「え?あぁ、いいですよ?お手柔らかにお願いします。」


そう言って、握手を求めてきた。彼は俗に言う爽やかイケメンである。オタクとは正反対で自分に自信があり、周りからの信頼も厚い、そんなオーラが漂う人だった。


ただ、もちろんそんな環境であった為に、無意識に人を見下す癖がついてしまったのであろう。オタクを見てほんの一瞬蔑むような、嘲るような表情をしたのだ。すぐに元の爽やかな顔に戻ったのだが、もちろんオタクは見逃さない。


オタクにとっては侮ってもらう方が好都合だ。警戒されるよりかは何倍もやりやすい。


『戦闘を開始します。』

オタクvs爽やかイケメン

・1ターン目    オタク:溜める 7/7

      爽やかイケメン:溜める 5/5


「へぇ、体力が少し高いんですね。少し怖いですね。」


爽やかイケメン(以後略、爽イケ)はそう言って怖がる表情を見せたが、内心は全く焦ってなどいなかった。相手はまだ特殊技をゲットしていなくて最初から持っているのが体力が増えるものだったのだろう、と。また、体力が増えるだけなら自分と相性がいい、と。そう、内心たかを括っていた。


・2ターン目    オタク:溜める 7/7

      爽やかイケメン:溜める 5/5


「へぇ、動きませんね。やっぱりどう動けばわかりませんよねー。取り敢えず溜めてしまいますよねー。」


爽イケはにこやかな笑顔でオタクを安心させようとする、場を和ませようとする。だが、殺し合いでそれが行われるとかえってその人の醜さを露わにしてしまう。特にこの爽イケはもう既に一度人を倒しており、特殊技を獲得している時点でそれはただの汚い嘘にしかならない。


対して、オタクは今回のバトルではとても静かである。相手の言葉も聞いておらずどこか上の空の様子だ。それを見た爽イケは内心舌打ちをした。


・3ターン目    オタク:弱攻撃 6/7

      爽やかイケメン:毒   4/5


「やっと攻撃してきましたか。ですが、もう手遅れですよ。僕の毒は止められない。」


青年はとうとう、内にある毒を隠さずに吐き出した。それに対してもオタクは無反応でどこか上の空だ。


・4ターン目    オタク:超攻撃 6/7

      爽やかイケメン:封印  0/5


「このコンボはいよいよ止められない!お前はもう何も出来ずにしん、」


爽イケは言い終わる前に消えていってしまった。


『戦闘終了、「毒」「封印」を獲得しました。』


「うん、思った通りに勝てて良かったです。今回はかなり簡単でしたね。まあそういう敵を選んだのですが…上出来です。」


実はオタク、このバトルについてはもう始まる前からこの展開が見えていたのだった。その為バトル中もろくに考察をせず早くミルク&ティーの2人の元に駆けつけたいとそれしか考えていなかった。今回は自分から勝負をかけることが出来たからこその芸当だろう。


そうは言っても、オタクの先読み力と看破がありきの話なんだが。


そうやって、オタクが首尾良く技をゲットしている間一つの視線がオタクに注がれていた。



「へぇ、もう終わらせたのね。早いわね。一体いくつのスキルを持っているのでしょうね。次はアイツにしましょう。」



オタクが次なる獲物を見定めていると、


「ねぇ、貴方。私と勝負してくださいな。」


そこに現れたのは若い女性だった。顔立ちは悪くなく、もしろ整っているほうで大人の色気というものを身に纏っている。ドレス姿でピンヒールにゴージャスな扇子といういかにもセレブ感ただ漏れの女である。


「貴方、先ほどのバトルもの凄い速さでおわらせましたよね?もしかしてあなたとてもお強いんではなくて?私は、どうしても強くなりたいから負けを譲ってくれないかしら…?」


オタクは女嫌いという訳ではない。むしろ大好きだ、自分から追っかける程に。しかし、それはアイドルとか二次元に対してのみだ。現実にいるかつ身近な存在に対しての女性はオタクの眼中には映らない。


今までの彼の人生で淡い期待をもつことは沢山あった。オタクだって一人の男の子だったのだ。しかし、もちろん理想と現実とは大きな隔たりがあり、失敗というか挑戦すらできなかった。


そんな人生においてオタクは期待することすら無意味という事実に到達してしまった。金をかければ必ず反応してくれるアイドル、自分の思い通りの言動をするキャラクター、いつしかオタクの心を満たすことが出来るものは徐々に限られていった。


つまり何が言いたいかというと、オタクに女性の色香は効かないということだ。はなから期待しなければ傷つきもしない訳だ。そういう訳で、


「え?断ります。」


「な、なんでよ!この私の役に立てるのよ?光栄に思いなさい!そして負けなさいよ!」


「え?貴方の役に立って私になんの得があるんでしょうか?それに私には想い人がいるので…」


「ちっ!使えない奴ね、全く!まぁ、いいわ、この私こう見えてもかなり強いのよ?貴方はせいぜい2人しか倒してないでしょうが私は既に4人倒してるのよ!従わないというから覚悟しなさい!!」


『戦闘を開始します。』

オタクvsセレブ女

・1ターン目  オタク:溜める 7/7

       セレブ女:溜める 5/5


「へぇ、貴方、体力が増えてるのね。少し厄介だけど、それが私の手に入ると考えるといいってことよ!おほほほー」


女はもう既に勝った気でいるように対して、オタクは今回は余裕ではないのか、独り言考察に入っている。


「まず相手の特殊技は「命令」「連続行動」「回復」「麻痺」「真似」か…これはかなりの強敵だな。」


「命令」‥発動したそのターン相手に任意の相手が使用可能な行動をさせる。 コスト1


「連続行動」‥1バトルに1度だけ2回分行動ができる。


「回復」‥HPを3回復させる。 コスト1


「麻痺」‥相手を発動したターンから2ターンの間行動不能にする。 コスト1


「真似」‥相手が使った技を使うことができる。 コスト1


「くそー。かなり凶悪ですね、この技達は…殺意が結構高めだ。唯、4人倒したって言った割に技が5個しか無いから、一つ持ってる人を5人倒したのか、ただのブラフだったか、どちらにせよこれ以上技がなくて、助かったな。

 んー。このバトルのキーになるのは、俺の封印を綺麗にきめられるかどうかと、何を真似させるか、そして、僕の超攻撃を当てれるかどうか、だな。ちょっとこれは本気でやらないと負けるかもだから頑張ろう。

 このバトルは長引けば長引くほど相手の方が有利な展開になる。だからなるべく早くケリをつける。そのためには…」


・2ターン目  オタク:毒   7/7

       セレブ女:溜める 4/5


「なっ、毒ですって!どんな効果なんですの?貴方体力多いくせにそんな技使うなんて卑怯ですわよ!」


「よし、ここで毒を決めれたのはでかいぞ。後4ターン耐えたら僕の勝ちだ。だが相手は2溜めがあって、おれはゼロだ。ここからの動きが肝になってくるな。

 相手は毒にされて焦ってるはず、そしてどうしても僕にダメージを与えたい。それでいて相手の持つ技を考慮すると…」


・3ターン目  オタク:行動不能 7/7

       セレブ女:麻痺   3/5


「おほほー麻痺ですわよー!これで貴方は次のターンも動けませんのよー!おほほほー」


「くそぅ、まあただこれは読めていたな、これで次のターンも行動不能。相手はこれで残り1溜めだよな。相手が回復することも考えるとここは溜めるを使ってくるか…?」


・4ターン目  オタク:行動不能 7/7

       セレブ女:溜める  2/5


「じわじわ、私のHPが削られていくじゃないの!!でも私には秘密兵器があるのよ!」


「よし、これで麻痺は解けたぞ。相手は2溜めだ恐らく回復を行ってくるだろう。そうなると僕が毒で勝つことは厳しいな。まあ、あくまで毒は一つのプレッシャーだ、毒があることで視野を狭める。そして僕は攻撃を加える。だから…」


・4ターン目  オタク:溜める 7/7

       セレブ女:回復  4/5


「おほほほほーー!貴方の毒なんて私の回復の前では無意味ですのよー!おほほー!さー、いかがしますのー?」


「やっぱりジリ貧だな…だがどうする?超攻撃を撃つにはコストが足りない。かといってもう1度溜めるか?それとも封印を使うか?いや、封印はこの相手には聞きづらいだろう。手数が多く、単発撃ちが多い。いや、待てよ…ということは…」

            

・5ターン目  オタク:溜める 6/7

       セレブ女:真似>毒 3/5


「おほほほー!貴方の毒が自分を苦しめるとは思ってもみなかっでしょー!私の前に貴方は倒れる運命なのですわよー!」


「まあ、そうくるだろうな。だが、相手はこれで溜めがなくなった。ということは勿論あれをするしかないよな?」


・6ターン目  オタク:封印  5/7

       セレブ女:溜める 2/5


「な、なんですの?それは!も、もしかしてもう私溜めることが出来ないの…?」


「よし、綺麗にきまったな。相手が慢心してくれてたおかげだな。相手は最後の溜めを使って回復するか、僕を麻痺させるか、まあどちらにせよ僕のすることは変わらないか。」


・7ターン目  オタク:弱攻撃 4/7

       セレブ女:回復  3/5


「わ、私には回復があるのですよ!貴方なんかに私が負けるはずないですわ!!」


オタクは考察を止めた。


・8ターン目  オタク:溜める 3/7

       セレブ女:守る  2/5


「ひっ!攻撃して来なさいよ!貴方は男でしょ!男らしく攻撃してきなさいよ!」


女はもうすぐ自分の死が近いことを薄々感じてきているのか、だいぶ乱れて来た。もはや最初のオーラはもう見る目がない。


それに対してオタクは圧倒的余裕な態度だ。


・9ターン目  オタク:弱攻撃<貫通 2/5

       セレブ女:守る    0/5


「きゃーー!!!!やめっ


女は最後まで発することは出来ずに消えてしまった。


『戦闘終了、「命令」「連続行動」「回復」「麻痺」「真似」を獲得しました。』


「ふぅ、思ったよりもギリギリな戦いだったでござるな。だが、得られたものも大きいぞ。人数も少なくなってきたようでござるし、最後の一踏ん張りってところでござるな。」


『あー、あー、ごほん!ここで生き残っている皆さんにお知らせがあるよー!今生き残っている人数はちょうど20人だよ!このまま普通に戦ってくれてもいいんだけどー、あんまり面白くないというかー、もっと面白くしたいなーって思ったので、パーティ制を導入しまーす!!パーティ制ってのは周りの人と仲間になれるっていうシステムだよ!最大4人までで、いつでも結成、解散していいよ!あ、もちろん1人でもいいよ?それで戦う時はお互いが同じ数だけ行動出来る様になるから安心してね!まあ、仲間を作れば味方の特殊技の恩恵にあやかれるからね!

 あ、ちなみにー今特殊技を1番多く持ってる人はー、そこのメガネをかけたぽっちゃり目のひとだね!ぐっじょっぶ!

 では、もう少し楽しい時間を過ごさせてねー!ばーいばーい!』


『あ!言い忘れていたけど、今からは相手を倒しても新しい技はゲットできないよ!だからそれを含めてパーティのこと考えてねー!ばーいばーいー!!』



嵐の様に突然現れたと思えば瞬く間に去っていった。だが、その声がもたらした情報はとてつもない影響を与えた。


まず一つ目はパーティ制、これで技所持数が少ない者でも勝てる可能性が上がった。ただ、問題点が結成、解散は自由とのことなので情報だけ抜き取られて解散後に裏切られる可能性がある。また、相手の特殊技の分配についても触れられていないため、もしランダムだった場合そこでまた争いが起きる可能性がある。


次に二つ目はオタクが今特殊技最多所持者ということが全員に向けて発表されたということだ。これで多かれ少なかれオタクは狙われることになるし、狙われるオタクと組みたがる人はいるのかということにもなる。


更に三つ目の新情報である、新しい技の獲得不可、それにより1番多く技を持っているオタクは狙われる可能性はますますあがる。


そんな中当の本人は、


「ふむ、僕が一番多いで!んですねー。このまま行って早く二人に会わないといけませんね…」


パーティ制はおろか、自分が標的にされることなど全く考えていないようだ。早く二人のもとに行きたいという気持ちにオタクは今支配されている。そもそも誰かと組むという思考回路が無いのだろう。


そんな中、もちろん多くの技を持っている者は狙われるわけであって、


「おい、そこのオタク!俺たちと勝負しようぜ!」


早速勝負を挑んできた連中は男2人、女2人の4人組パーティだった。この構成がオタクの心に火をつけたのだった。


『戦闘を開始します。パーティメンバーが不足している為、仮想メンバーが追加されます。』


オタクvsリア充パーティ

・1ターン目     オタク:溜め 14/14

       リア充パーティ:溜め 10/10


「なっ、このオタク体力が高いぜ!くそ、流石に特殊技を1番多く持ってるだけはあるな!」


「それでも流石に4対1だから勝てるよ!頑張ろう!」


男1が定番の体力が高いことに対する反応。女1がそれに対して皆を鼓舞する発言。いかにもリア充らしい対応にオタクの火は燃え盛る。


「あいつら絶対に倒しますね。」


このパーティ制はパーティだからと言って4対4になるわけでは無い。パーティを組んでいる者達が1つになり、それを皆で操作する。だから、結局今まで通り構図でいうと1対1の構図だ。


だが、パーティを組むことによる変更点なのは前述の通り使用可能な技が単純に増えることと、話し合って行動を決めれること、そして体力が2倍になることだろう。話し合いが足の引っ張り合いにならなければの話だが。


・2ターン目    オタク:封印 9/14

      リア充パーティ:狂撃 9/10


「狂撃」‥自分のHPを1使って相手に5ダメージ与える。 コスト1


「なっ!?封印だと?もうこの技を使えないってことか?」


「まじかよ!これが1番効率良く相手とのHP差を縮められる技だってのによ!だなこれでHPは並んだぜ!」


オタクは今回、リア充相手とあってかかなりガチモードである。第二手目での封印はかなり賭けのようにも思えるが、溜めの場合であっても有効打であるし、何より初っ端から相手に精神的ダメージも与えられる。


最後の詰めとしての封印もキツいが最初から選択肢を奪われるキツさもなかなかだろう。


・3ターン目    オタク:溜める 9/14

      リア充パーティ:溜める 9/10


・4ターン目    オタク:溜める 9/14

      リア充パーティ:溜める 9/10


ここは両者共に一旦呼吸を整え、落ち着こうとしているようだ。しかし、リア充パーティ(以後略リアパ)は圧倒的恐怖に立ち向かう為の呼吸、オタクは獲物を狩る為の予備動作としての呼吸、そのように錯覚してしまうほどの違いが両者に見受けられるこの2ターンでの溜め。この次のターンから動きだす、まるで嵐の前の静けさだ。


オタクは未だ静かに燃えている。


・5ターン目    オタク:毒  8/14

      リア充パーティ:吸収 9/10


「吸収」‥相手に1ダメージ与えて、自分はHP1回復する。 コスト1


「えっ?毒?毒って私たちとの相性最悪じょない!!」


「私達の吸収も毒の前ではあまり効果が薄いわね…」


相手もここまで残ってきたメンバーのパーティというだけあってなかなかの粒揃いの技だ。ただ、技に差が無くなれば無くなるほどに顕著になるのが試合運びだろう。


・6ターン目    オタク:麻痺   8/14

      リア充パーティ:行動不能 9/10


「なっ、行動不能っ!そ、そんなの卑怯だろ!!これいつまで続くんだ!?」


「お、落ち着いて!そんなに長くは続かないでしょ!最低2、3ターンでしょ続いても、だなら今のうちに作戦を立てましょう。」


オタクは眼光を鋭く光らせ、依然として静かだ。


・7ターン目    オタク:連続行動>溜め×2 8/14

      リア充パーティ:行動不能     9/10


「くそぅ、何も出来ないのが1番嫌だな。しかも相手2回も溜めてやがるぞ、チートだろ…」


「でも、次のターンは動けるっぽいよ!」


・8ターン目    オタク:真似>狂撃  7/14

      リア充パーティ:演舞    3/10


「演舞」‥次の攻撃時に与えるダメージが三倍になる。


「はー?俺の技を使いやがっただと?このままでは負けてしまうぞ!?やばいやばい!」


「落ち着いて!流石にまだ、負けと決まった訳じゃないでしょ!こっからでもやりようはあるわよ!」


オタクは相手を物凄い形相で睨みつけながら、


「爆ぜろ、リア充。」


・9ターン目    オタク:超攻撃<貫通  6/14

      リア充パーティ:吸収     0/10


 「「「「えっ…!」」」」


『戦闘終了』


「ふぅ、ようやく倒せましたね。パーティだとHPが高くなるから厄介ですし、何より時間がかかる。」


オタクがバトルを終えた時そこにいたのはオタクを除いて5人だけだった。


「ようやく、終わったようですね。もう、残りは私達パーティと貴方の戦いだけ。ここで一つ最終決戦といきましょう。」


「思ったよりもずいぶんと時間が掛かってたったすね。相手のパーティそんなに強かったっすか?そんな風には見えなかったっすけど、俺ら暇すぎて全員倒しちゃいましたよ。やっと、強そうな奴と出来て嬉しいっすわ。」


「そうですね…ここまで1人で生き残れたのは称賛に値しますが、最後に勝つのは私たちですよ。」


「…」


「もう、みんな待ちくたびれてたようですね!では、早速戦いましょう!!」


そこには5人1組のパーティのみがいた。それぞれが強者の風格を漂わせている。オタクに一気に緊張感が走る。今までとは比べ物にならないくらい手強そうな相手だ。


オタクは今まで苦戦しそうだ、とは言っておきながらもどこかに心の余裕はあった。だが、この強者を目の前にしてその余裕すらぶっ飛んだ。


だが、それがオタクの、ゲームオタクの闘争心を駆り立てる。自分こそが強者だと、1番だと証明するために。


オタクが相手の特殊技を見る。口角を吊り上げながら、


「とても面白そうですね。やってやりますよみなさん。」


『スートップぅーーー!!!バチバチな所ごめんねぇー!今から最高の試合をするつもりだったんだろうけど、実際僕もちょー楽しみなんだけど、もっと面白くする為にちょっと寄り道しまーすっ!折角だからということで、もっとすごい舞台を用意してもらいました!ということでそこに移動しましょう!』


パチンッ!という音と共に一瞬で周りの風景が変わった。


今まではドーム型をした何もない空間だったのが、今は木々がたくさん生えている森の中になっている。


「っ!あいつらはどこに行ったんですか!?」



『はーい!みなさーん!びっくりしたと思うけどー、皆さんは今、魔物の森に来ていまーす!今の状態で戦うのもいいけど、折角ならより強くなってからの方がいいと言うことなので、皆さんにはここで強くなってもらおうと思います!ルールは先程と同じで戦ってもらうだけです!そして、相手を倒すと技を貰えるというルールも復活しますっ!という訳で、最後に戦う敵がはっきりしているこの状況で、みなさん出来るだけ強くなって下さいね!あ、人間同士かち合ったらその時点でやりあっていいですからね!では、頑張ってくーださーいーー!!せいぜい楽しませせてね?』






ーーーそう、ここは蠱毒の世界。強き者だけが生き残れる世界。ここで孤独なオタクはただひたすらに相手を倒す。ミルク&ティーの2人に会うために。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

好評でしたら続編も書こうとおもってます!

なのでブックマーク、評価の方よろしくお願いします!


連載小説も書いてるのでそちらのほうも宜しかったら読んでみて下さい!


Twitterもしてるので、感想、ご指摘、質問等あればこちらからでもどうぞ

@H581V1DT2IZQJaQ

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