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6.ユーリ様との会話内容は

後半、アリスティア視点です。

終業を知らせる鐘が鳴り、リリデアナは立ち上がった。

旧図書室から戻って来たリリデアナはこの鐘が鳴るまで、ウズウズしていたのだ。

放課後は、カイルと放課後にヒュルス街に向かう事になっている。王都の中にあるヒュルス街はそこそこに繁盛している。


「リリデアナ様、その…今日の当番は…」


ユーリがリリデアナに話しかけた。ユーリは、ベルモント伯爵家の令息だ。

髪は茶色で仔犬のようにパーマがかっていて、瞳もアーモンドの色をしていた。


当番とは、雑用当番のことだ。放課後に、日誌を担任に提出しに行くことになっている。


「日誌は私が提出しておきます。もう書きましたか?」


「え、あ、はい。ですが、リリデアナ様だけに行かせるのは申し訳ないので。僕、待っておきます」


ユーリの返答を聞き、リリデアナは自身の懐中時計に目をやった。

カイルとの約束の時間までに余裕がある。


「ありがとうございます。ではお願いしてもいいですか?」


「は、はいっ!」


首を傾げたリリデアナに頬を染めたユーリ。その光景をクラスメート達は羨望を含んだ目で見ていた。


十分ほど時間が経ち、リリデアナは上を見上げた。


「ユーリ様、終わりました」


「それでは職員室まで持っていきましょうか」


人当たりの良さそうな笑顔でユーリは微笑んだ。


「あ、その前に少し待ってくれませんか」


「いいですよ」


ユーリに承諾を得て、リリデアナはアリスティアのもとへ行った。


「私がいない間にカイルが来たら、ユーリ様といますから安心してくださいって伝えてもらえませんか?」


「えぇ、いいわよ」


「ありがとうございます、アリス」


アリスティアとの会話を終え、ユーリのもとへ駆け寄るリリデアナ。

ユーリは、ゆるゆるになりそうな顔を必死に堪えている。それを見てアリスティアは呟いた。


「そりゃ、カイルも過保護になるわけね」


─────────


そんなアリスティアの思いも知らないまま、リリデアナはユーリとの会話を続けた。


「ユーリ様、お待たせして申し訳ありません」


「いえ、いいんですよ。僕が自分でしたことですし」


「ふふ。優しいんですねユーリ様。私の再従兄に似ています」


ニコリと、いつもの微笑より濃い笑顔のリリデアナ。

優しいユーリに少しだけ心を許していた。


「再従兄…ですか…」


ガクッとユーリは肩を落とした。

再従兄…それは、ルーシャのことだ。リリデアナが名前を言わなくても有名だからわかる。

見目麗しく、魔性の笑みを浮かべ、男女問わず虜にするルーシャ。加えて、成績はいつもトップクラス。

そんなルーシャがリリデアナにぞっこんなのも周知の事実だった。


「ユーリ様?」


「あ、いえ。行きましょうか」


「はい」


二人は職員室に向かった。






◇◇◇






「リリデアナは?」


リリデアナとユーリが職員室に向かった頃、案の定カイルが来た。


「ユーリ様と、職員室に行ったわ」


アリスティアがそう言えばカイルは不機嫌そうに壁にもたれ掛かった。


「ユーリ…。ベルモント伯爵のところですか…」


「えぇ、そうね。あそこの領地は鉱物が採れるって有名なのよ」


「そうですか。勉強になりますね」


興味もなさげにいうカイル。

周りでは、令嬢達がチラチラとこちらを見ていた。


「カイル、教室に入ったらどう?ここじゃ通行の邪魔よ」


「それもそうですが…。一年生の私が二年生の教室に入ってもよろしいのでしょうか」


確かに、そうだ。しかし、絶対に入ってはいけないということでもないのでいいだろう。


「大丈夫よ。…それに、リリデアナの椅子にも座れるわよ」


アリスティアの甘い誘惑にカイルは驚いた。何故なら、彼女だってリリデアナにぞっこんなのだ。それをライバルである自分に譲るなんて。有難い話だが、カイルには不信感の方が勝っていた。


「何故リリデアナを譲ろうとするのですか?」


「別に譲ってるつもりなんかないわ。これは、一つ下というハンデに負われた貴方への慰めなのよ」


感謝しろと言わんばかりのアリスティアの態度にカイルは苦笑した。




教室に入り、リリデアナを待っていると、唐突にアリスティアが話し出した。


「カイル、貴方はリリデアナのどこが好き?」


「そうですね…。やはり、不器用なところですね。人の為だったら感情は抑えきれないけど、自分の事になると、我慢する癖がありますから。まぁ、そういうときは全力でリリデアナのサポートをしますけど」


ニコニコとリリデアナの事を語るカイル。

その笑顔にご令嬢が数名倒れた。


(甘い。甘すぎるわ。リリデアナも早く気付きなさい!)


カイルが放つ、甘いオーラにアリスティアはやられそうだった。

アリスティアが悩んでいる間にも延々とカイルのリリデアナについての魅力自慢は続いていく。


「他にも、いつも微笑を浮かべていて余裕綽々のあの顔が真っ赤になるときは最高ですね。それに加えて、涙目になったり上目遣いをしたり。本人は人前で泣かないよう育てられているので泣くことはそうそうないのですが…。このときのリリデアナが一番レアですね。ゾクゾクします」


『はぁ…可愛い』と言いながらまだ続けるカイル。アリスティアもリリデアナについては延々と語れるが、カイルのように饒舌に語れるだろうか。


「あぁ、それと。私とデートするときにリリデアナは待ち合わせより早く来るんですよ。まぁ、私の方がいつも彼女より早く着いてしまうんですがね。

店をまわると、綺麗な雑貨があったときや、美味しそうな食べ物があったときは、彼女が犬に見えるんです。食べ物を買えば、待て、と言われた犬のように瞳をキラキラさせてこちらを見るんですよね。それがあまりにも可愛くて。

あーんってしてあげると、恥じらいながらも、食欲に負けてすぐに食らいつくんですよね。その時ばかりは食べ物に負けた気がします。

でも、街に行くといいことばかりって訳じゃないんですよ。リリデアナは少し自分の魅力に疎くて、下心丸出しの男に道を訊かれてもホイホイついていっちゃうんです。

後で注意しても『気にしすぎですよ』って笑われちゃうんですよね。リリデアナにはもう少し自分に自信を持って欲しいです」


アリスティアは、リリデアナ達が帰ってくることだろうと思い、チラリと教室の入り口を見た。

リリデアナとユーリがちょうど教室に入ってくる頃だった。


「あ、リリデアナが来ましたね」


先程までのリリデアナ自慢を終え、カイルがリリデアナの方へ向かった。

気配を察知するのが上手すぎるカイル。それはリリデアナ限定なのだろう。


カイルは無自覚の隠れドSです。

あと、過保護で、心の中ではリリデアナの心配ばかりしています。

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