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3話

意気込んだはよかったものの、そもそもの話しかけるきっかけがなかった。

まさか店員にクレジット増やしてやれと頼まれましたとは言えまい。

下手な絡み方をすれば不審者だと勘違いされかねない。それだけは絶対に回避せねば。


 まずはさっきまで座っていた席に戻って話しかけるチャンスを窺うか…。


-ドンッ!ドンッ!ドンッ!-


 前言撤回、そんな暇なかった。


「おいバカっ!やめろ!筐体壊す気か!」


 後ろから手をつかむ。


「んー!っだってぇ、ゲームがぁ…!」


 なおも暴れる女の子。ほんとに高校生かコイツ?


「っだーもー!俺がクレジット増やしてやるから後ろで見とけ!」


 何とか女の子を台から引き剥がし、針金を奪い返す。

女の子はめちゃくちゃ不服そうな顔で俺のことをにらむ。


「…その台お兄さんがやってたやつできなかったよ?」


「まあ黙ってろって」


 いつもの慣れた手つきで針金をさしトリガーを押す。カチッという音が鳴るとクレジットが増えた。

軽快な音楽とともにゲームが開始される。


「っと、おらできたぞ」


 隣の台の椅子に移動して席を譲る。


「すっすごい…!」


「まあな!」


 練習を積んできたものを人に褒めてもらうのはうれしかった。褒められた技ではないのは確かだが。

つらい修行の日々を思い出しながら感傷にふけっていたら、女の子が急に迫ってきた。近い近い。


「あの!」


「え!?あ…なに?」


「弟子にしてください!!」


「………は?」


 …何言ってんだコイツ?てかなんの弟子なんだ?


「さっきのやつとか、ほかにもいろいろすごい技教えてください!」


「…どゆこと?」


 つまりあれだろうだろうか?ゲームセンターのいろいろなイカサマや御法度の手ほどきをしろということだろうか?どういうことだ?犯罪者志望なのか?


「おねがいしますっ!」


 深めに頭を下げてきた。マジなのか…?


「…話は聞いてやるから、とりあえずそのゲームやったら?」






「…ということなのです!」


 どうやら話を総合すると俺のイカサマ技に一目ぼれしたらしい。

やれかっこいいだの、男らしいだの煌々と語られたがよく意味が分からなかった。まず男らしいの意味はき違えすぎだろ。

あれかね?人と違うことをするのがかっこいいと思ちゃう年ごろなのかね?若さって怖いわー。


 ちなみに"ということなのです(`・ω・´)!"のところで派手に俺のほうへ向き直したおかげでゲームオーバーになっていた。すかさず追いクレジットしてあげる。


「それで…弟子にしていただけますか?」


「…うーむ」


 正直ちょっと迷ってた。だってJKの弟子とかめちゃくちゃ面白そうじゃん?字ずらだけで破壊力あるじゃん?

でもなあ…めんどくさそうな匂いもするんだよなぁ…。


「だめですか…?」


 上目遣いで言われた。かわいいなおい。


「ったく…しょうがねえなあ!」


 決め手は下心だった。我ながら糞か。


「ほんとですか!?やったぁ!!ありがとぉ師匠!!」


 両手を挙げて喜んでらぁ。後悔しそうでならないが言っちまったもんはしゃーないか。


「で、お前なんて名前なんよ?」


「っは!?そうでした。私は伊上輪子といいます!りんちゃんとお呼びください!」


「りょーかい。俺は前宮翔渦。よろしくな」


「はい!よろしくです師匠!」


 かなりの勢いで頭を下げる。なんだかなあ…。


「…その師匠ってのやめるわけにはいかんの?」


「なんでです?」


「なんかはずい」


「じゃあしょーさんとかでいいですか?」


「!っそれで」


 年下JKにあだ名で呼ばれてちょっと興奮したのは内緒。


「暇なとき俺は基本この店にいるから聞きたいことあったらその都度聞いてくれたまえ」


「りょーかいしました!じゃあさっそくさっきの技教えてください!!」


「んあぁ…あの技はなぁ…」


 そんな感じで俺とりんちゃんの奇妙な関係が始まった。




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