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1話

 どうもこんにちは。前宮翔渦です。


 今現在ゲームセンターに向かっているんだが、いやいや今年の夏は例年以上に暑いね。(毎年言ってる)

しかも今日に限っちゃ40度超えるって話ですぜ気抜いたら溶けちゃうなこりゃ。


 隣をすれ違うランニングメンに尊敬と憐みの視線を向けつつスマホを取り出す。


 「うわっ…、今日に限ってゼロ人か…」


 いつもつるんでる連中に声をかけていたのだが誰一人としてゲーセンに来る気がないようだ。

さしずめ部屋から出たくないのであろう。付き合いがいがねえな。

まあ俺も課題さぼってる手前、課題が視界に入る場所にいると罪悪感に押しつぶされそうだったから出てきただけで…。正直部屋から出たくなかった。


 そんなこんなでゲーセンについたのだが、相変わらずのおんぼろ施設だった。


 築50年程の年季の入った店というのもあるが、何より人の出入りがほとんどない。いや盛った、完全になかった。

 中も最新のゲームなどはほとんどなく、UFOキャッチャーの中身も8割が駄菓子だった。よく運営できてんなここ。


 入ってすぐ一人の店員と目が合った。


 「来たのか糞ガキ。ほかの連中はどうした?」


 「俺一人じゃ糞ババァ。冷房の温度もっと下げろや」


 「従業員入り口は言ってすぐ横にあっから勝手に下げな。せいぜい金たんまり落としていくんだね」


 このうぜえばーちゃんはここの店長の田中恵子さんだ。

ここをたまり場にしてる都合上面識は強い。

今年で70になるらしいがとてもそうは見えないぐらい機敏に働いている。

まったく頭が上がらないが、先のセリフを言われたおかげで今日は一銭も落とさないと決めていた。


 レトロビデオゲームの台があるコーナーに行き気分で台を決める。


 「今日は…こいつにするか」


 選んだのは古風な弾幕シューティングゲーム。

超上級者向けだが連コし放題のここなら俺でもクリアできる。


 「さて…」


 ポケットに忍ばせておいた針金を取り出す。

クレジット投入口に針金を挿入。手探りで奥にあるトリーガーを押す。これが意外と難しい。

カチッと音が鳴りゲームがスタートする。

小さくガッツポーズをしたあと、ババァにみられていないかを確認する。どうやら大丈夫のようだ。


 軽快な音楽とともにステージが開始される。今日こそは10クレ以内にクリアしてやるぜ。






 「あー、また死んだ…」


 開始から1時間、軽く20はコンティニューしているがラストがマジで鬼門すぎる。

集中力もだいぶキていた。そろそろ疲れたな…。


 「つぎで無理だったらやめるかぁ」


 そう心に決め針金を取り出したとき。


 (…ババァかっ!)


 背後から視線を感じ、勢いよく振り向くと見慣れない女っこが俺の手元をガン見していた。


 (…だっ…誰だ…?)


 ここのゲーセンに来る奴は大体顔見知りなのでマジでビビった。てかなんでそんなガン見なん?怖。


 いったん落ち着いてその娘をよくみてみることにした。


 高校生だろうか?制服を着ていた。

身長160ないくらいか。髪はまあまあ短め?考察力低いな俺。


 そんな感じで謎の女の子を眺めていたらコンティニュー可能時間が刻々と迫っていることに気づいた。


(やべえ…早くしねえと。でもめっちゃ見てるしなぁ…)


 とりあえず女の子とコンタクトをとってみることにした。


 「えっと…この台並んでる感じっすか…?」


 「…?」


 首を傾げられた。どうしたらいいんだこれ。


(珍しい客か知らんけど店員じゃねえなら別に何を見られようがどうでもいいか。)


いろいろ考えたがばかばかしくなって思考をとめた。


針金をさしクレジットを増やす。カチッ。


 「…おぉ!」


 …なぜか後ろから感嘆の声が聞こえた。もしかしてこれが見たかったんか?

満足したならどっかいってくれや。見られてると集中できんし。


 針金を台に置いてコントローラーを握ると、女の子の手が針金をさらっていった。


 「…おぉー!!」


 何を感動してんだかしらんがただの針金だぞそれ。

 視線を女の子に向けていると数秒と持たずにゲームオーバーになった。

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