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プロローグ
「はやく!追いつかれる前に逃げなければ!」
僕はそう言われ、この金髪の男に手を引かれていた。
何から逃げているのか。
どうして逃げているのか。
そして金髪の男の名前や、自分の名前すらも。
いまいち思い出せないでいた。
後ろから声が聞こえる。
えらく騒がしい。多分、その声の主たちから
僕たちは逃げているのだろう。
不思議と疲れは感じなかった。この金髪の男の
必死の表情を見てると、疲れより不安が大きかった。
声がどんどん近くなる。
男は肘で、脇の扉をこじ開けて僕と二人でその部屋に
入った。
「やっと着いた…!見えるか?あの機械が。」
そう言って男が指差した先には、透明なガラスの筒の
ような装置があった。
「いいか、もう時間が無い。この装置の中に入って待機してくれ!残りの作業は全て俺がやる。」
言われるがまま、僕は筒の中に入った。
男は扉にバリケードを作っている。
バリケードがガタガタ揺れ、大きな声が聞こえる。
何を言っているのかまでは聞き取れなかった。
「〜〜〜〜ッ!」
声を出そうとする前に、意識が遠のいていくのが分かった。
遠目に見えたのは、扉が破られた瞬間だけだった。