見つけ出した大切なもの4
見つけ出した大切なもの4
私達は男に酷い扱いを受けた訳では無かった。乱暴をされたこともなかったし、きちんと3食でてきた。問題は男が青年に力を使わせているところだ。最初は
「食べ物があるここから近くの場所を教えろ」
とか時には
「俺の無くした服はどこにある?」
とかあまり大したことでは無かった。
しかし、段々質問はエスカレートしていき、
「俺の食い物を盗んだのは誰だ?」
ときいてきて犯人を見せしめに殺したりするようになった。その度に青年は悲しみ夜に泣いていた。
ある日のことだった。ここから1番近い水場を男はきいてきた。すると青年は固まり
「少し待ってもらえないか?」
と言った。男は怪しんだ様子だったが部屋を出ていった。青年は私に
「近くの水場を探したんだ…それなのに…見えたのは孤児院の井戸だった…僕は…どうしたら良い…」
男には時間がかかるから明日まで待ってほしいといい誤魔化したがもう同じ手は使えない。その日の夜
「こんな力無ければいいのに…僕にどうしろって言うんだ…」
というつぶやきを聞いた私は青年とここから逃げる決心をした。幸いなことに私の手元には青年と暮らす前から持っているナイフがある。これで混乱を起こしそれに乗じて逃げるという作戦だった。青年には誰かを傷つけるような作戦は伝えられなかった。私は青年に嫌われたくなかった…
そして作戦決行の時が来た。
最初はうまくいっていた。男の部屋に忍び込むまでは良かった。だが男は私の死角から放ったはずのナイフをいともたやすく避けてしまった。
「おやおや、おそすぎますねぇ…」
やつの薄気味悪い声が聞こえた。
「ここまで忍び込んだ手腕は大したものですが女のそれも子供ですから速さと威力が足りませんねぇ…」
私は逃げようとしたが後ろから男の長い腕に掴まれてしまった。
「くっ…離せ…」
「いいえぇ、話しませんよぉ」
そのまま私は拘束された。
「何故殺さない?」
「あの青年との約束ですからねぇ。私こう見えても約束はまもるんですよねぇ。だ…か…らっ、殺しはしませんよ?殺しはねぇ」
地獄から響いてくるような声だった。私はおもわず本能的な恐怖に支配された。
「やっ…やめ…お願いしますから…」
「またこのようなことをされても困りますからねぇ…そうです!脚の健を切ってしまいましょう!我ながら名案ですねぇ…」
震えが止まらなかった。
「くっ…あぁァァァァァァ。」
私は脚の健を切られた後開放された。後ろから男の
「もうこんなことをしては行けませんよぉ?」
という声が聞こえた。脚が使えないので私は青年のもとに這っていった。そして驚いた顔をした青年に
「ごめんなさい…あなたと…もう…あなたと一緒にいられない…」
といい全ての事を説明した。すると青年は涙を流し
「すまない…心配させてしまった僕の責任だ。今からでも遅くない。一緒に逃げよう。」
「でもこの脚じゃあなたの邪魔になってしまう…」
「そんなことは無いさ。僕の力があればどの道を通ればいいかわかるし、そもそも僕も体が弱いからね。」
青年は私の頭をなでながら言った。
それから私と青年の逃亡生活が始まった。
次話で完結予定です
次は守りたかった大切なものを書く予定です