見つけ出した大切なもの 1.5
見つけ出した大切なもの1.5
私は青年と旅をしていた。というより青年に旅をさせてもらっていた。今まで旅などしたことのない私ははっきり言って足手まといだったし、何回もミスをしてしまった。そのせいで青年を危険に晒してしまった。その度に青年は
「仕方ないよ。したことがないんだから。でも次はしないように気を付けよう。」
と励ましてくれた。
ある日のことだった。私と青年は重大な問題に直面していた。
「どうしようか…」
「どうしましょう…」
明日の分の食料がないという事態は今までも何度かあったが今回は飲水がなくなってしまった。私はとても困りどうしていいかわからなかったが、青年は
「仕方ないよ。探そうか。」
と言って私を先導してくれた。その時の青年の微笑みを忘れることができない。この感情は何なのだろうか?
日がくれるまで私たちは歩いた。ただ青年の動きには迷いが無いように見えてまるで水がある場所を知っているようだった。日が暮れてあたりが少しずつ暗くなってきた頃私たちは寂れた町(?)のようなところにたどり着いた。中に入るとそこには…
沢山の子供達と6人の大人がいた。
「何をしにきた?」
と真ん中にいた背の大きな男が子どもたちを背後に庇いながら言った。私はとても怖かったけれど青年が
「水を分けてもらえませんか?見ての通り僕とこの娘こしかいませんので。」
と言ってくれた。背の大きな男は
「ふぅん…」
と言いながら訝しむようにこちらを見てきた。
「まぁいい。水なら町の真ん中に井戸がある。それを使うといい。案内してやるからついてきな。人間に会うのは久しぶりだからな。この世界で会えるのは機械ぐらいだ。」
と言いながら男は笑った。案外悪い人では無いのかもしれない、と私は思ったが本当の意味で信用できるのは青年だけだった。男は自分のことをリーダーと名乗り隣の眼鏡の男をサブリーダー、背が高い女の人を料理長、眼鏡のおじさんを教授、後の大きな男二人を兵士と紹介した。兵士と言われた男達は
「おいおい兵士ってそりゃねぇだろ…」
と言っていたが体の筋肉のつき方は間違いなく戦闘に特化したつき方だった。リーダーが
「俺達はここで孤児院のようなことをやってる。まぁあまり子どもたちをいい待遇でおいてやれていないが…とりあえず今晩は飯を食べて泊まっていくといい。料理長の飯は絶品だぜ?」
と言ってくれた。
「それではお言葉に甘えさせてもらいます。」
と青年は言った。リーダーの言葉通り料理長の料理は量は少ないながらも味は絶品でとても美味しかった。私は恥ずかしかったが
「ありがとう…ございます。とっても美味しいです。」
と言った。それぐらい美味しかったからだ。すると料理長は
「ありがとう、この男達なんて何も言わないのよ。ほらあんたたちも見習ったらどう?」
と言うとリーダーが
「俺達は食う専門なんだよ」
と笑いながらいった。こんな日常がいつまでも続けばいいと私は思った。
次の日の朝
リーダーに呼ばれて行くとリーダーが
「お前ら。俺たちと一緒にいないか?」
ときいてきた。
「見ての通りあまりいい待遇はできんがこの世界で二人で生きていくのは辛いだろう。こういうときは…何ていうんだっけか?」
隣にいたサブリーダーがこめかみを抑えながら
「振り袖合うも他生の縁ですか?」
といいそれを聞いてリーダーは
「ははは、そうだった。すまんすまん。さて話を戻そうか。俺達と一緒にいる気はないか?」
青年は迷っているようだった。
「君はどうしたい?」
ときかれ私は
「あ…あなたと一緒なら何処へでも。」
と言った。自分でも顔が赤くなった自覚があったのでやはり顔は赤いのだろう。青年は咳払いをすると
「仲間に入れてください」
と言った。そこから私達のリーダーとの暮らしが始まった。
ある日のことだった。私達が町に兵士一人と子供を残して食べ物を探しに行ったときだった。リーダーが
「そろそろ近場に食べ物が無くなってきたな…」
とつぶやいた。まるで重大な決断がせまっているようだった…
家に帰るとリーダーは井戸のある広場に皆を集めて
「…すまない…俺達は旅に出る。」
と言った。私はわけがわからなかった。子どもたちはどうなるのか、と私は思ったが当の子どもたちはいつかこうなってしまうとわかっていたように…いやわかっていたのだろう。誰もリーダーを攻めなかった。
「すべては、俺の責任だ…俺が…弱いからお前らの面倒を見きれなかった…」
とリーダーは泣きながら言った。私は「違う」と叫びたかった。「悪いのは世界だ」と言いたかった。しかし青年に止められた。
「本当にすまない…これからはお前たちだけで生きてくれ…」
と言った。
「悪いなリーダー。俺やっぱり残るわ。」
と兵士の一人が言い
「俺だって仕方ないってことはわかってる…でも俺は今まで一緒にいたこいつらを置いてはいけない。悪いが俺はおいていってくれ。」
と泣きながら言った。皆泣いていた。普段けっして弱いところを見せなかったサブリーダーさえも泣いていた。それだけみんなにとって苦しい決断だったのだろう。私たちが話に入るのは違う気がした。おそらく青年も同じ気持ちだったのだろう。
そして私達の放浪生活が始まった。
リーダーが
「俺達がいまするべきは後ろを振り向くことでは無く前に進み生きることだ!」
と言ってからもう誰も孤児院のことは話題に出さなかった。けれど私は孤児院の事を忘れられなかったし、リーダーは夜に一人で泣いていた。料理長は夜に私と話をしながらお酒と言うものを飲んで泣きながら寝てしまった。兵士は今まで以上に兵器を壊すようになり、教授はその兵器の研究に没頭した。そして私達は二年間生き残った。あの日が訪れるまでは…
次こそは4をだします…た…多分…