守りたかった大切なもの2
ファイル2 『遠足』
その日はチカさんの遠足(?)というものの前日でした。チカさんが楽しみでそわそわしているのはわかるのですが、お父さんも
「チカ、大丈夫かな…怪我しないかな…」
と心配していました。人間特有の感情だとわかっていても私には理解出来ませんでした。
この頃の私はチカさんの好みを完全に把握していて、チカさんが好意を持っているカケルくんという少年のことも知っていました。
チカさんにそのことをきくと
「べ…別に…好きとかじゃ無いし…」
と言われてしまいました。好きなのはわかりきっているのに何故嘘をつくのでしょうか。人間の感情はまだ理解出来ません。
チカさんの好みはとても甘いたまご焼きでしたがカケルくんは甘いものが嫌いなようで
「もう甘くなくていいから。」
と言われました。おかずを交換する仲になったのでしょうか。
「微笑ましい」
と私は思いました。これが人間の感情なのでしょうか?
遠足から帰ってきたチカさんは上機嫌でした。どうやらカケルくんはたまご焼きが気に入ったようです。
「ね…ねぇ…私にもたまご焼きの作り方教えてくれない?」
と言われました。たまご焼きは難しい料理ではないのですが、チカさんは料理なんてしたことがなく、悪戦苦闘していました。
なんとか作り終えたたまご焼きは見た目は私のものほどきれいではありませんでしたが、心がこもっていてカケルくんにも褒められたようです。
本人は隠しているつもりのようでしたが顔がにやけていたので私にはバレバレでした。
この守りたかった大切なものはしばらく昔話が続きます。はじめにあるファイルはのちのち大切な役割を担うのでそこにも注目していただけたら嬉しいです。




