痴女が「女性専用車両を作れ」と言って来た
あっち
暖簾をくぐり、受付の方に向かうと柴君がチャーハンを食べていた
「ピーさん。受け付けの方お願いします」
「分かった」
受け付けのイスに腰かけ、3分程でオバちゃんのお客さんが来た。ボディコンチックな衣装で胸元が開いている。ただ、オバちゃんだ。40歳くらいだろうか。クレ○ンしんちゃんに出て来るみさえの友達のおケイに似てた。
「また、体触られた!」
「えっ!」(そんな恰好してるからやんけ)
「もう、何回言わせるの。ずっと、言ってるやん。女性だけの車両作ってって!」
「えっ!あるじゃないですか」
「ハ?」
「え?」
「ないよ。それか出来るメドあるの?」
「・・・はい」
「あるんやな!言ったぞ。今、確かに言ったぞ!」
「以前、上の方に上げたので、本庁のほうで、話合いはなされてるはずです。」
「当たり前やろ!何回触られてると思ってるの?客を守るのは当たり前だよ」
「・・・そうですね」
「安全第一。当たり前だよ」
「そうですね」
「女性ばかりの車両だと安心出来る。当たり前だよ~」
ヒートアップすると語尾に当たり前って付けるオバちゃんか。
「みんなが納得出来る社会になればいいですね」
「当たり前だよ~」
めっちゃ笑いそうになったが、下を向いて耐えた。オバちゃんはお尻をプリプリしながら帰って行った。「触れ」言うてるような服装、歩き方じゃないか。
今は一体いつなんだ?前の落し物の客は携帯ではなく家の電話番号を書いてたし、「女性専用車両なんで作らないの」って言われるし。
あっ!
ヒントじゃないか。これは!
女性専用車両が出来る以前の話だ。絞れる。ちょっとやけど絞れる。
向こうに戻ったら「女性専用車両 いつから」ってPCで調べよう。改札を見ると赤木さんがそのオバちゃんに絡まれてた。何を言われてるんだろう。
柴君から
「痴女の相手お疲れ様です」
「えっ!あ~。あの人いつも変な恰好やな。痴女っぽいわ」
「色んなあだ名ある人ですからねぇ。売春婦とか企画物とかマルサや国境なき医師団」
「ハハハ。マルサと国境なき面白いな」
「何言ってるんですか。マルサはピーさんが付けたんじゃないですか!」
「えっ!自画自賛バレた?」
「もう」
うまく誤魔化した。
「実はマルサの女なんやって」
「フフッ!」柴君は軽く笑った。
「国境なき医師団は何でやっけ?」
「あれですよ。赤木さんが飲み会で旦那は医者ちゃうかって言ったからですよ」
「フフッ!」今度は俺が軽く笑った。その後続けて
「絶対ちゃうやん(笑)」
「絶対ちゃうから面白いんですよ(笑)」
「医者があんなんと結婚せんやろ」
「そのギャップが良いんでしょうね」
「あだ名ってギャップで付けても面白いな」
僕らが盛り上がってると赤木さんが戻って来た。
「柴~、改札変わって~。ほんで、ピーちょっと来て~」
ビクッとした。さっきの痴女の件だろうか?柴君がチャーハン食ってた控え室に呼ばれた。
「さっきの痴女の件やけどな」
「はい」
「女性専用車両が出来るって言ったらしいな」
「はい」
「そんなウソ付いたらあかんのちゃう」
「いや、ウソじゃないです」
「俺ら、そんな話聞いた事ないのに、何でお前がそれを知ってるんや?」
「いや、あの、はぁ、いえ」
「お客様の対応でウソ付いたらあかんで。それは付け焼刃でしかなくて、後日さらに怒って文句言いに来よるだけやからな」
「・・・すいません」
未来で痴女の言い分通りますよ。って言ってやりたかった。
「ちょっとトイレ行って来ます」
「早よ戻って来いよ」
トイレに逃げた。そして、ハローワークに戻った。やはり俺はビビりなのだろうか?