僕はTV好きだけどTVは僕を苦しめる
こっち
家で晩飯を食べ、風呂から上がると、母親が料理屋が繁盛するまでのヒストリー番組を観ていた。嫌な予感がした。
「この人は繁盛させるためにこんなに努力したのにあんたは何やの!ハローワーク行って文句言ってるだけやないの。生活保護もらいたいんか?それやったら病院でも行って来いや。ずっと下向いてしんどい言うとけ」
俺、一言も喋ってないのに・・・
とりあえず、家で飯を食わせて貰ってる身なので、何も言い返さず部屋に戻った。戻ろうとする際に
「不正受給者帰れ!」と意味不明な事を言われた。
不正してないのに・・・
部屋に帰ろうとしてたのに・・・
また、夢であの老婆が出て来た。
「どうだい、駅での仕事面白いか?」
「えっ、まだ何とも。取りあえず難波が近くなんは分かったけど」
「それは、そんなに重要じゃない。それやったら君は甘いな」
「・・・何でですか?」
「カバン落としたオバちゃんの住所覗いたら良かったのに。電話番号よりよっぽど有意義やったぞ」
「あっ!」
「そこですよ。君がドン臭い所は」
俺は下を向いて黙るしか無かった。
「私も鬼じゃない。一応あっちで困った時に、呪文を唱えると一発解決するんじゃが、呪文の言葉知りたい?」
「・・・別に」
「あっちで死んだらこっちでも死ぬ事になるけどいらんか?」
「えっ!」
「あっちで死んだ場合、こっちのトイレで死んでるよ」
「教えて下さい」(俺の体向こうにあるんや。まぁ、今別人やしな)
「仕方ないなぁ。赤いアメンボ。黒いトンボ。緑のオタマジャクシ!って叫べば状況は一気に変わる。死ぬ事はなくなるぞい」
「緑のオタマジャクシ?」
「そこ気にする?」
「いや、言いずらいなって」
「まぁ、上2つ言ってくれたらほぼ、通るんやけど」
「はぁ。あっ!どっから見てるんですか。僕の仕事してる姿」
「企業秘密」
「・・・」(ちょっと睨んだ)
「私だけがこの仕事してる訳じゃないって事だけ教えるわ。色んな無職の人間にこんな事してるよ」
「前聞いたよ」
「それしか言えん。じゃ」
目が覚めるともう、朝だった。7時間も寝てた。
ハローワークのトイレに行った。トイレだけ寄るのも誰かに見られてたら変なので一応ハロワに寄った。
「求人検索したいんですが」
受付のオバちゃんに言うと3番と書かれたカードをくれた。
3番のPCで検索するも、すぐに止めた。5分でオバちゃんにカードを返した。何か言ってくるかなと思ったが
「はい、お疲れ様でした」
と言われただけだ。ガチやったら
「こんな求人もありますよ」
「他にも就職説明会とかありますよ」
「INDEED求人家のPCから調べれて、家から応募出来ますよ」
とか心配されそうだが実際は
「はい、お疲れ様でした」だけだ。
僕はこのええ加減さが好きかもしれない。それはダメな事だが。常連に対しても無愛想な感じが好きだ。干渉されたくない根暗ですから。
トイレに寄った。ここからが本番だ。いつものように個室トイレに入り、しばらくすると扉が開かなくなる。そしてちょっと待つと「チーン」と鳴り扉が開くようになる。いつも通り、あっちの世界に出た。