白銀の少年の嘆く慰めの約束を
誰かが笑っている夢を、見た。自分や、他の誰かを嘲笑っている声ではなく、包み込むように優しく、誰かを愛していると思える笑顔だったように思えた。
目が覚めた時、温かい手が自分を撫でていた。涙で盛大にぼやけた視界に闇が入ってくる。
「アンタ……?」
「あ、起きた?」
目を開けたエディスは、やはり目が痛くて閉じた。押さえようとした手を握られ、代わりに右まぶたにかさついたものが触れてくる。離れたかと思うと、今度は左まぶたに感じられた。
「もう開けても痛くないよ」
そう言われ、おそるおそる開けてみる。すると、確かに痛みはなかった。
「なんで、こんなとこに……」
自分の頭を膝の上にのせ、大きな手で撫でてくれていたのは、フィンティア家で会った闇だった。
「誰かさんが泣いてる気がしてね」
暗い色を落とすのに、その優しさは変わらない。どうしてか会いたかった、自分が好きになったらしい人。
「今日はどうしたの?」
柔らかな声色で訊ねられたエディスは言ってしまってもいいものかと悩んだが、どうにでもなれという気持ちも強かったため、口を薄く開いた。
「妹が、亡くなったんだ」
そう言うと、闇は目を軽く開く。
「今日葬式だったんだけど……妹を好きだった奴に汚れるって、追い出されちまって」
「それは酷いね」
「ひ、人殺しって」
悔しいのか、誰かに聞いてもらえて安心したからか、涙が零れてくる。
「ずっと俺が苦しませたし、人が殺したことがあるから間違ってはないんだ。けどっ、」
「君が妹さんを殺すはずがないよ」
いとも簡単にそう言われ、涙を指の腹で拭われた。冷え切った体を包み込まれるような気持ちになったエディスは唇に手を当てる。
「うん、ありがとう」
そう言ったエディスの目に、手がのせられた。
「さ、もう少しお眠り。なにも怖がることも、哀しいことも今だけは起きることはないから」
「……うん」
エディスは目を閉じ、なにも感じるもののない世界へと沈みこんでいった。
次に目を開けたら、ぐちゃぐちゃになったままの自室にいた。汚れているはずの正装ではなく白いシャツとズボンに着替えている。
不思議に思ったエディスはベッドから下りていき、ベッド下のクローゼットを開けた。すると、そこには綺麗にクリーニングされている正装が入っている。
夢じゃなかったのかという気持ちよりも先に、こんなに丁寧にしてもらってよかったのかという驚きが出てくる。
「こ、今度会えたらちゃんとお礼言おう」
うん、と頷いたエディスは軍服を着、任務へと出かけていった。




