白銀の少年の嘆く死の願い
シトラスが能力に覚醒して以降、エディスたちの戦闘任務は増えるばかりだった。気付けば朝の数分以外、ミシアと顔を合わせることもなくなり、一日中なにも食べないという日も少なくはない。
「じゃあ、悪いけど二人ともこの書類を頼むな」
そんな過剰労働に、シルクもシトラスも限界を迎えていた。それは二人だけではなく、新たに任された三十人の部下も例外ではなく、エディスは彼らにも調整をして休みをとらすようにしていた。
「後、他の奴らも今日は中の勤務だから、その紙に書いてある仕事をやるように伝えておいてくれ」
「分かりました」
安心した顔をするシトラスに、エディスは頷く。そして、一人軍の中から出ていった。おのずと、一人で戦闘任務に出かけることが多くなっていた。 古びた剣を一本だけ持っていき、巨大な紋章陣を描く。そうして、魔法を使って大量の魔物を殺していった。
エディスだけに体調の異変が見られなかった。濃いクマは消えないが顔色もそう悪くなく、髪ツヤもいい。シトラスのように吐くわけでも、シルクのように無理に明るくなるわけでもなく、平素と変わらなかった。ただ、目だけが肉食獣のようにギラギラと光っている。そんな様子に、「エディス少佐は殺しが余程楽しいのだろう」と影で話している者がいることをエディスは知っていた。
広範囲の光魔法により、黒く焼け爛れた大地を背にして歩いていたエディスは、ふいにつまづき、倒れた。声もなく地面に伏せたエディスは、起き上がることもせず、ぼーっと横の地面を見つめる。そこには、地面と同化したような姿の魔物が同じように横たわっていた。
「後三十分で帰って、十五分で報告書作成。その後は南地区で狼男の群れ退治と、東地区で巨人退治。今日中に間に合うかな。明日は……なんだっけ。今日と似たような、いや、違う。反軍退治だ。偽の、アイツじゃない、反軍。リーダーだけ殺して、後は解散。従わなかったら南に送って。その後は……。あれ? シルベリアって、もう行っちゃったんだっけ?」
虚ろな目で呟くエディスの前に、一羽の白い鳥が止まった。それは、鋭いクチバシで魔物の皮膚を食いちぎり、中身を食べていく。エディスは、それをじっと見ていた。
顔をどの位置に変えたとしても、死体が目に入るだろう。顔を上にすれば、嫌いな青空が見えるだけだ。エディスはようやく体を起こし、辺りを見る。やはり、見渡す限りにしたいが倒れている。死体の群れ。自分が殺した魔物の死体、死体、死体。
「俺も、死体みたいだ」




