白銀の少年の嘆く朝食の願いを
「おーい! 二人共起きろー!」
翌朝、エディスたちはミシアに揺り起こされた。エディスとシトラスは目を擦りながら洗面所へと向かっていく。
「シトラスー」
「はい?」
「お前、朝食担当な」
「はい!?」
しゃこしゃこと歯ブラシで磨いていた手を止め、シトラスはエディスを見た。
「俺が洗濯物干すから、朝食頼むな」
シトラスが呆然としている間に口をすすいだエディスはタオルで拭う。
「食材はなに使ってもいいって言ってたから」
じゃ、と去っていってしまったエディスに、シトラスは唖然と口を開いたまま突っ立った。
「料理なんてしたことないですけど……」
呟いた言葉を聞いてくれる人は誰一人としていなかった。
「おー、美味そう」
掃除をしてから下りてきたミシアがそう言って目を光らせる。テーブルに並んだ料理はどれも美味しそうだった。
「……量多くないか?」
だが、四人分にしては量が多かった。特大の大皿にこんもりとのったスクランブルエッグはとろとろと甘そうで、十枚のパンもこんがりと焼かれている。初めて作った料理としては、かなり上出来ではないかとシトラスは思っていた。
「いけるいける」
簡単そうに言うミシアに、小食のエディスは本当か? と疑いながら席につく。
「どうぞ。初めて作ったにしては上手くいったと思ってるんですよ!」
シトラスに促されたエディスたちは、スクランブルエッグを各自配られた皿に盛り、食べ始めた。
「うん、美味い」
エディスがそう言うと、シトラスは安心したような顔になる。地を這う者はスクランブルエッグをスプーンですくい、口の中に入れた。もぐもぐと口を動かしていると、眉が自然と寄っていく。
シトラスはそれに気づかず、地を這う者の隣に座った。それから自分の皿にもよそい、まずはパンに齧りつく。ザクザクと香ばしく焼かれたパンは、美味しい。バターを表面に塗ってから焼いたので、甘みもある。
そして、スクランブルエッグを口に入れ、
「うっ」
ザリザリとした固いものが舌に当たってきた。これは一体なんなのか、シトラスには想像もつかなかった。まさかと思い、お皿を持ち上げてしげしげと見る。
「……シトラス、卵の殻だ」
エディスが飲み込んでも大丈夫だと教えると、硬直していたシトラスは口を機械的に動かし、飲み込んだ。
「美味しくないじゃないですか。痛いだけです」
「多少入ってるくらいなら平気だ。これも悪くない」
多少どころではなく卵の殻が大量に入っているスクランブルエッグを、顔色一つ変えないで食べるエディスを見る。
「……痛くないんですか?」
「全然。石よかマシ」
ミシアは皿の端に卵の殻を避けて後は美味しく食べていたし、地を這う者は文句は言わずパンを食べている。
「気にすんな」
そんなに気にすることではないのだと、素っ気なく言われたシトラスは、頷いて止まっていた手を動かした。
「ごちそうさま!」
大皿いっぱいのスクランブルエッグは瞬く間になくなった。殻を除けば美味しかったのだ。
「じゃ、片づけるわ」
そう言ってエディスがおぼんを持ってきて、のせていく。シトラスがそれを手伝おうとするが、やりたいからと笑って持っていく。その様子を見ていたミシアがこっそりキッチンに入っていった。
「お前が気にしてるんだろ。あんな無茶して食って」
「そんなことねえよ」
「普段豆粒くらいしか食わねえくせに」
「うるせえ」
ガシガシと頭を撫でられたエディスは、乱暴にそう返した。
「友達になれるといいな」
「……うるせえ」
もうほっとけよ! と叫ぶエディスを、ミシアはニヤニヤした笑顔で見守る。背中にその視線を感じながら、エディスは皿を洗い、なおした。
「ほら、終わったぞ!」
「ん、えらいえらい」
優しく微笑まれ、昨日のことを思いだしたエディスは目を逸らす。
「シルクを迎えに行くか」
手を引きながら言われ、エディスはうん、と返事をしてついていく。
「シトラスー、ちぃー、そろそろ行くぞー」
「あっ、はい!」
ソファーに座っていたシトラスは立ち上がり、鞄を持った。地を這う者もソファーから下り、白いレースで飾られたピンク色のワンピースをぱたぱたと叩きながら玄関へと向かっていく。全員外に出た後、ミシアが鍵をかけた。
「さー、遊びに行くぞー」
と言ってミシアは歩き始めた。




