白銀の少年の嘆く食事の約束を
神様、神様。僕とドゥルースを、もう少しでいいから、もう少しでも、いいですから一緒にいさせて下さい―
「お料理終わりっ!」
ことんっと大きく重い器を机の上に置く。
「さってと。早くドゥーの所に持ってかないと」
料理を器に盛る。この作業は立体的な絵を描いているようで、好きだ。
「よいっせ!」
その器を手引き車に乗せ、ずっずと引きずっていく。
ご主人様方が使われる所を、奴隷ごときが使う事は許されない。そのため、暗い電気の入っていない裏道を通る。
「ドゥー、お早う」
息を切らせながら部屋に入る。
「朝だよ。ご飯だぁっ」
ぐっと腕を引っ張り、ベッドの中に入れられる。
「おはよ」
恐る恐る目を開けると夕焼けが笑う。
「ビックリしたぁ」
「あはは、ごめん」
ほっぺたや額や耳にキスが降ってくる。なんだかかゆくて、優しくて、思わず微笑む。
「ご飯出来てるよ。食べる?」
「うん」
給仕をしながら、話をしながら、ドゥルースが食べるのを見る。
「エディーは食べたの?」
「うん……食べたよ」
それは、嘘。分かりやすい、嘘。奴隷は夜にパンと塩のスープを与えられるだけ。
「あーん」
「ええ!?」
いきなり目の前に大きな肉を差し出され、少し体を後ろに下げる。
「おいしいよ」
にこにこっと微笑まれる。
「……でも」
「おいしいんだってば」
ドゥルースの『おいしい』と笑顔は卑怯。なんだか逆らえなくなっちゃうから。
小さな口がぱくりと肉にかじりつく。苦戦をするエディスをドゥルースがほほえましそうに見る。
「ついてるよ」
「へ、どこ?」
ほわんとした返事。それに少し微笑んでから、口の端を舐める。
「わっ」
驚いたように手を押さえるのに笑ってから次の品を取る。
「ねえ、一緒に食べよう? その方がずっと美味しいよ」
「……うん」
幸せの形は、少しだけ変わり始めて、いた。