白銀の少年の嘆く海中の願いを
海の中は深い闇に覆われていた。その中を、リスティーはエディスの手を握り、すいすいと泳いでいく。
「最初、ここには来たくなかったんだ。こんな仕事は嫌だ、軍のやることじゃない、って」
急に話し始めたエディスを横目で確認し、進んでいく。
「けど、実際こっちに来てから、ドゥーのことを思いだしちまって」
「変に失敗できないとか、復讐っていう言い訳とか、どんどん自分の中が複雑になっていって、あせったのね」
やる気がないから失敗に近い形になっちゃうのよ、と言われ、エディスは苦笑する。
「どいつもこいつも、皆同じようなことを言うのよねー。飽きちゃった」
「……いつもお前が相手してんのか?」
「大体はハガイの改造魔獣が先にやるんだけど、あたしが先に見つけた時だけ駆除してる」
改造魔獣、という言葉にエディスは首を傾げさせた。
「ほら、アンタが倒して、あたしを守ってくれたじゃない。あれよ」
「あの……人みたいな生物のことか?」
「そうよ」
魔獣。獣というには人に近い格好をしていたが、人というには獣に近い精神をしていた。
「自分の気に喰わない奴を襲わせてんのか」
「そう。だから、この時期は毎年大変なのよー」
便利なようで、不便な味方。いつ暴走するかどうか分からないようなものを軍は味方にしない。ソイツの努力が報われるはずがなかった。
「中央に帰る時には気を付けなさいよね」
「生きて帰るよ」
自分のために、生きて帰る。そして、元帥になって軍を元に戻し、父様や次の王になる奴と一緒に、国民を守っていきたい。
「ここ入って」
リスティーの指差す方を見ると、珊瑚に囲まれた大きな洞穴があった。
「分かった」
まずは、そのためにもう一歩。一歩でもいいから、進む。進みたい。怖くても、足がすくんでしまっても、進みたくなくても、俺は進む。
きっと、この先に希望や未来があるのだから。そう思いながらエディスは洞穴の中に入っていった。




