白銀の少年の嘆く任務の願いを
「リスティーの親父さんを殺すのが目的か?」
リキッドと養成所内で別れ、暗い道を歩いてホテルまで帰ってきた。二人といた教室から出るまでの間にコートを着て、フードをかぶったから怪しむ人はいても、養成所に通う生徒だということは、多分バレなかっただろう。帰り道にすれ違った人にも、ホテルの従業員にも。
「そうだ、それが今回の任務内容だ」
コートを脱ぎ、ネクタイを緩める。
「おやっさん、悪い人じゃねえんだけどなあ」
「そうなのかもな」
反軍のできた理由を考えてみても、悪い人だとはあまり思えない。
「だけど、軍にとっては邪魔な人なんだ、きっと」
そう言ったエディスを見て、グレイアスは息を長く吐き出した。
「お前、殺してえの?」
「ああ」
髪を結っている紐を解き、制服の上着を脱ぐ。
「殺す理由ができて嬉しいか」
という質問にエディスは振り返り、
「ああ、嬉しいな」
と答えた。
「……軍は馬鹿なことをしているが、反軍は無駄な犠牲を出している。褒められたことやってねえのはどっちもなんだよ」
カーテンを少し開け、すでに陽が沈み、暗くなっている空を見つめる。
「私利私欲のために、何の罪もない一般人を殺すような奴を、そんな指示をする奴なんか信じらんねえよ」
その空にはもう、黄昏は見えない。
「好きな奴でも殺されたのか」
「そうだ」
黄昏のような、温かい人。あの時の俺は、あの人以外に光を知らなかった。彼だけが、俺の生きている理由だった。彼が俺に生きている実感をくれた。
「だったら、お前も私利私欲で殺すんじゃねえか」
「そうだ。魔物を殺すのも、そのためにやってる」
「は? 魔物は殺して当然だろ」
それにエディスは振り向き、
「魔物にだって意思はあんだよ」
と言った。
「ああ、そうだな。あれはお前らと一緒だもんな」
「一緒?」
魔人が零した言葉に、エディスは根を寄せた。
「そ、一緒だよ」
「どういうことだ、それ」
ふん、と魔人は鼻を鳴らし、エディスを馬鹿にしたような表情で見下ろす。
「知りたいことはちゃんと、自分で調べなきゃいけないんだぜ、人間」
そして、耳元に顔を近づけ、
「南には、お前の探してる物が見つかるかもしれねえぞ」
囁いた。




