誰にも言えない恋心
丸くて白い、表面のつるつるとしたティーカップが自分の前に置かれた。読んでいた本から顔を上げると、穏やかな笑みと目が合った。 「お疲れ様」
「トリエランディア大将!」
お疲れ様です! と立ち上がろうとしたら、片手でいいからいいからと留められる。
「これから、大変になるね」
「……はい」
トリエランディア大将が前の席に座り、テーブルの上で指を組んだ。
「君は、ローラの予言を全て信じて行動しているんだってね」
「はい」
「駄目だよ、全部信じては」
どうして。どうして、この人がこんなことを。ローラ元帥のパートナーがなぜこんなことを言ってくるんだろう。そうエディスは考え、すぐにあることに思い至った。
「ローラ元帥は俺を試しているんですか」
自分なりの答えを出すと、トリエランディア大将は目元を和ませる。
「あの人は人を試すのが好きな人でね」
困った人だったんだ、と微かに笑うトリエランディア大将に、エディスは目を伏せた。
「一つだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「いいよ。何かな?」
ぎ、と手の甲に爪を立てて、軽く引っ掻く。
「シルベリア・レストリエッジとシュウ・ブラッドは敵なのでしょうか」
ポチャンと角砂糖が一つ紅茶に落とされた。くるくると銀のスプーンで混ぜられて、消えていく。
「シルベリア君は必ずしも君の敵になるとは限らなかった。けれど、彼もシュウ・ブラッドも、もう君の味方になれることはない」
スプーンを置き、トリエランディア大将がエディスを見つめる。
「彼はきっと、君の好きな人を殺す。そして、嫉妬に駆られた人は仲間にしてはいけない。君の心を壊しに来るから」
エディスは息を呑んだ。
「君は金の眼をした魔物に恋をしてしまっているんだ」
後戻りはできないよ、と誰かが囁いた気がした。
「もしかしたらそうならないという可能性にかけてみてもいい。けれど、それで余所見をしていると他の仲間を失ってしまうかもしれない」
「けれど可能性があるのなら、俺は頑張りたいです」
そう、エディスは静かに告げた。
「では、頑張ってごらん」
一人分の紅茶はぬるくなって飲まれるのを待ち続ける。いつまでも、いつまでも。飲まれるか、捨てられるかするまで、いつまでもいつまでも、ずっと。ずっと、待っている。




