白銀の少年の嘆くケアの約束を
「あがったぞー」
エディスの髪を中腰になりながらタオルでふきつつ出てくると、青年が立ち上がった。
「先に入らせてくれて、ありがとう」
「別にいい。温まったか?」
長髪の青年と同じことを聞くのに、エディスは仏頂面で答えた。
「シュウ、ココアでいいよなー」
玄関から右手にある小さなキッチンに入っていった長髪の青年が顔を出した。それを見、嬉しそうに青年が笑う。
「ああ。……ちゃんと甘くしといてくれよ」
「お前、絶対に糖尿病になるぞ」
呆れた様子で長髪の青年が言うのにも、全く気にしていないようだ。
「お前は?」
にこにこと笑ってきくのに、
「お、俺は甘いのはあんまり」
と目をそらして言うと、
「じゃあ、ミルクでいいか?」
長髪の青年に首を傾げられる。
それで、と答えるとすぐに二つカップを持って戻ってきた。どうやら入浴中に青年が片しておいてくれたのか、紙と金属だらけだった部屋が大分すっきりしていた。
クッションを二つ、白い壁の中に収納されているクローゼットの中から取り出してくると、その一つをエディスにすすめた。それに座ると、カップを手渡された。白い波がゆったりと揺れて見えるホットミルク。それを飲んでいたら、髪の毛を触られた。
「なに?」
と見ると、前を向けと言われ。仕方がないから唇をとがらせながらも向いていると櫛で梳られる。ミルクをちびちびと飲む。耳には青年がシャワーをあびる音だけが聞こえてくる。とても安らいだ、気持ちの良い空間だと、エディスは再度感じた。
ぷぅと息をまあるく吐き出した途端、背中をぞわっとした感触が駆け上った。
「な、なんだよっ!」
あまりにも楽しそうだったので、放っておいたら、なにか液体を髪に塗られる。ただの香油だ、と笑われる。止める気もなさそうなので、仕方なく前を向く。不思議な男だ。
「綺麗な髪だな」
「あ、ありがとう」
そんなことない、とは口から出なかった。とても、安らいだ気持ちになってしまっていたから。
顔に化粧水を塗られた時は、抵抗をした。が、結局は塗られてしまった。なぜか、その頃にはこの不思議な男に美しいと口に出されるのが嫌ではなくなっていた。この男自身がとても美しかったからだろうか。
エディスがふうふうと冷ましながらミルクを飲み、長髪の青年のケアが終わった頃に、やっと青年が上がってきた。
「おい、髪をよくふけ」
対象的に、ガシガシと乱暴にタオルで髪を拭きながら、青年はキッチンに入っていった。そして、緑色のカップに甘い香りのただようココアを入れて戻ってきた。




